「差が小さい方が勝ちゲーム」でできた計算カードの得オザを順に計算してきました。ここまでに子どもたちは,繰り下がりのない計算に取り組んできました。
この時間は,計算がまだ終わっていない計算カードに取り組んでいきます。当初,「一の位が繰り下がる」と子どもたちが考えた計算カードが,まだたくさん残っています。そこで,「一の位が繰り下がる計算からやってみよう」と投げかけます。
ところがこのカードを見た子どもたちから「あれ?十の位も繰り下がるのがあるんじゃない」と声があががります。子どもたちから指摘されたのは,「600−404」のカードです。その理由を次のように説明します。
「一の位の1から4は引けないでしょ。だから,十の位から借りたいけど,十の位が0だから借りられない」
「そうすると百の位から借りるから,2回繰り下がるん
じゃないかな?」
「十の位が0と0だと2回繰り下がるんだ」
「だったら,他にも十の位が同じ数字があるよ。411−318も1と1で同じだ」
「581−284も十の位が8と8で同じだ」
「前のたしざんのだまされたシリーズと同じだ。繰り下がり1回に見えて,本当は2回あるんだ」
たしざんの学習では,見た目は繰り上がりが1回なのに,実際に計算をすると繰り上がりが2回という計算がありました。その構造と,今回の繰り下がりの構造が似ているという考えです。数字の構造に目を付けた子どもたちの見方は鋭いですね。
子どもたちの指摘は,さらに続きます。
「百の位が同じカードもあるよ。490−481は百の位の数字が4と4で同じだ」
「571−568も百の位の数字が5と5で同じだよ。だまされたシリーズで繰り下がりは2回ありそうだ」
同じ位に同じ数字があれば,繰り下がりの回数が増えるのではないかと考えたのです。十の位の見方を百の位にも拡張するよい見方です。
さて,子どもたちの予想通りに指摘された計算カードはだまされたシリーズになるのでしょうか。先ずは,簡単に計算ができそうな百の位の数字が同じ「490−481」から取り組みます。
計算が始まってしばらくすると,次の声が聞こえてきます。
「あれ,繰り下がりがない」
「百の位は繰り下がらない」
「1回しか繰り下がりがない」
子どもの想定外の結果となりました。「568−571」にも取り組みますが,この計算も繰り下がりは一の位の1回でした。だまされたシリーズにだまされてしまったのは子どもたちでした。
では,十の位の数字が同じパターンの繰り下がりの回数も1回なのでしょうか。「600−404」に取り組みます。計算が始まってしばらくすると「ごちゃごちゃする」という悲鳴が聞こえてきます。
「一の位の0から4は引けないでしょ。十の位から借りたいけど,0で借りられない」
「だから,百の位の6から十の位の十を貸して,その十の位からまた一の位に貸す」
「繰り下がりが2回あるからごちゃごちゃする」
「もし,660−404の計算だとしたら,一の位が引けなくても,十の位の6から借りられる。でも,600の場合は借りられないからごちゃごちゃになる」
「600−404」と「660−404」を比較することで,前者の計算の大変さを分かりやすく説明していくことができました。
十の位が同じ数字のパターンは,だまされたシリーズと同じで繰り下がりが2回ありそうです。この日はここで時間切れとなりましたが,計算を構成する位相互の数字に目を付けることで,繰り下がりの回数を考えていこうとするよき見方が生まれた1時間となりました。