2020年6月30日火曜日

5Lちょっと・・・

前回お知らせした2年「水のかさ」の学習のその後です。


「水の多い方が勝ち勝負」では,子どもチームのコップが先に満タンになりました。そこで,次のように投げかけました。

「満タンのコップの水のかさを,アメリカの友だちにどう伝えたらいいかな?」

 写真提示も動画送付もできないという条件で考えてもらいました。子どもからは,「コップの高さを教えればいい」というアイディアが生まれてきました。コップの高さは13㎝です。さらに,次の声が生まれてきました。

「それだけじゃあ,だめだよ。コップの横の長さも教えないとだめだよ」

 ゲームに使用したのは円柱状コップです。底面部分の直径を教えないとだめだという指摘です。直径は10㎝でした。これで必要な長さはわかりました。ところが,子どもから再び声があがります。


「でもさあ,中が小さいかもしれないよ」(外側と内側に厚みがあるかもしれないという指摘)

「同じコップがアメリカにもあるかわかないでしょ。だから,それだけじゃあだめだよ」

「長さの時みたいに,世界で使える単位はないのかな?」

「そうだね。㎝とか㎜とかないのかな?」


 この場面でも子どもたちは,長さの学習とつなげて世界共通の水のかさの単位の必要性に気付くことができました。


 そこで,世界共通の水のかさの単位として「L」があることを教えます。その後,絵の具バケツや洗剤ケースなどの水の容量(かさ)を子どもたちに予想させました。


 バケツの予想では「4L」「1L」の他に「5Lちょっと」という声があがりました。この「ちょっと」に対して,声があがります。

「『ちょっと』って,人によって違うよ」

「水にも㎝の下が㎜だったように,Lより小さい単位があるんじゃないかな?」


 長さで学習した㎝の下の㎜のような小さい単位があれば,「ちょっと」という曖昧な表現は必要なくなります。この場面でも,水のかさと長さの学習をつなげる発想が子どもから生まれてきました。

子どもの発想力は柔軟ですね!

2020年6月29日月曜日

水の多い方が勝ち勝負をしよう(2年「水のかさ」)

 算数の時間,「水の多い方が勝ち勝負をしよう」と投げかけます。私と子ども代表でジャンケンをします。パーで勝つと3杯,チョキだと2杯,グーだと1杯の水を大きなカップに入れていきます。このジャンケンを繰り返し,最後に水のかさが多かった方が勝ちというゲームです。


 ルール説明後,ゲームを始めようとしたその時です。「コップの大きさが違ったらだめだよ」と声があがってきました。ジャンケンで大きなカップに入れる入れ物の大きさが,先生用と子ども用で大きさが違うのではないかという疑いの声です。この声をきっかけに,さらに子どもたちの声が続きます。

 

「長さでも同じ事があった。先生とH先生の長さのブロックの大きさが違った」

「同じブロックにしないと,正しく比べられなかった」

「水も入れるコップが大と小では大のコップの方が勝っちゃう。小は絶対に負けちゃう」

「だから,長さと同じで同じ大きさのコップにしないとずるになるよ」

「長さには単位があったから,水にも単位があるんじゃないかな?」

 

 長さの学習で,2人のテープの長さ比べを行いました。その際,子どもたちは長さを測定するブロックの大きさが異なる場面を体験しています。ブロックの大きさが異なると,正しく長さの比較ができないため,共通のブロックを使わなければいけないことを学習しました。

 子どもたちは,既習の長さの学習とつなげて水を入れるカップの大きさが共通でなければ正しく水のかさ比べができないことに気付いたのです。長さと水のかさの学習をリンクする視点が生まれてきたことにびっくりしました。


 実は,写真のように子ども用は左のカップ,先生用は右のカップを子どもに気付かれないよう使用する予定でいました。ところが,子どもたちはこの私の企みを早々と察知したのです。しかも,その根拠を長さの学習とつなげることができたのです。すばらしい子どもたちの発想力です。

 

この学習は水のかさも共通の道具で想定しなければ正しく比較ができないことを学ぶことをねらったものです。そのために仕掛けを企てたのですが,子どもの発想の方が1枚も2枚も上手でした。最終ゲーム結果は,子どもチームの2勝0敗となりました。

2020年6月17日水曜日

平仮名は何文字あるかな?

子どもたちに,次のように投げかけます。
「平仮名は全部で何文字ありますか?」

右の平仮名を提示し,何文字あるのか予想をさせます。子どもの予想は様々でした。
150文字,300文字,450文字・・・

子どもからは「同じ紙がほしい」と声があがります。
そこで,右のプリントと同じものを子どもたちに配布します。子どもたちは,プリントの文字を囲んだり印を付けたりしながら文字数を調べ始めます。

 しばらくすると,「多すぎる」「できない」という悲鳴?が聞こえてきます。一方,10ずつ囲めば簡単だよ」「100ずつの方が簡単だよ」という声も聞こえてきます。そこで,どうすれば簡単に文字数を調べられるかを考えました。

10のまとまりで数えれば簡単だよ」

「それよりも100のまとまりの方が簡単だよ」

1001010個あるから大変だよ」

「あいうえお・・・の平仮名は4列で100だよ」

「あいうえお・・・の横は25文字だから,2列で50

「だから4列で100の固まりになる」

 

 平仮名横1列は25文字あります。そのため,

10ずつ囲んでいこうとすると,横1列には10の固まりが2.5個分となってしまい,3つ目の10の固まりはその1列の中では完成しません。これでは中途半端に見えてしまいます。

ところが,平仮名は2列分で50文字になります。4列分では100文字です。このように捉えることができれば,中途半端に見えた25が素敵な数字に見えてくるのです。


 平仮名4列分で100文字であることが分かれば,平仮名プリントを4列ずつ囲めば100の固まりがいくつ分あるかがすぐに分かります。このプリントには,100の固まりが10個分あるのです。従って,全部で1000文字あることが分かります。


 100の固まりで数えるよさや1000は100の固まりが10個分で構成されている数の意味を,平仮名の文字数を数えることで発見することができた1時間でした。









2020年6月11日木曜日

516は五百一十六?(2年「1000までの数」)

数字を漢字に直す学習シリーズを,隣のクラスでも行いました。子どもが変わると,子どもたちの問いも変わります。
子どもたちに,次のように投げかけます。
「516を漢字で書きましょう」

子どもの反応は2つに分かれました。「五百一十六」と「五百十六」です。前者の表記について,「一はいらない」という声があがります。しかし,「五百一十六」と表記した子どもには彼らなりの論理があるはずです。そこで,「五百一十六」と書いた気持ちを読解させました。
「516は百が5個,十が1個,1が6個だから,十の前に一をつけた」

この論理は,子どもたちも納得です。十が1個分を表すから,「五百一十六」なのです。そうであれば,この表記でもよさそうです。しかし,子どもたちは「十の位の一はいらない」と声をあげます。十の位の一がいるのかいならいのかが,子どもたちの問いとなりました。

「数字を見ないで,五百一十六だけを見たら,5106だと間違えてしまうかもしれない」
「16は十六としか書かない」
「516の読み方をひらがなに直すと,ごひゃくじゅうろくになる。『ご』=『五』,『ひゃく』=『百』,『じゅう』=『十』,『ろく』=『六』だから,合わせて五百十六になる」

516の読み方を平仮名に置き換えて,さらに細かく分解して漢字に直す説明に,子どもたちも納得でした。子どもらしい,素晴らしい論理です。
さらに,次の説明が続きます。

「数字は,一,二,三,四,五,六,七,八,九と読んで,九の次は十。九の次は一十とは言わないでしょ。だから五百十六でいいんだよ」

既習の数字の読み方をもとに,「五百一十六」の表記の不自然さんを指摘してきたのです。既習学習から論理を組み立てる発想も素晴らしいですね。

子どもから生まれたズレを,子どもに乗り越えさせることで,教師の想定を超えた子どもらしい発想が生まれてきます。

379を漢字で書くと(2年「1000までの数」)

2年生「1000までの数」の一コマです。子どもたちに,次のように投げかけます。
「漢字で書けるかな?」
ホワイトボードに「379」と板書します。この数字の読み方を,漢字に直します。
子どもの反応は2つに分かれました。1つ目は,「三七九」です。「これでいいじゃん」という子どもと,「それはおかしい」という子どもの声があがります。
そこで,「三七九と書いたお友だちの気持ちは分かるかな?」と「三七九」と表記した子どもの気持ちの読解を行います。
「三百七十九の百と十を省略した」
「379の3を漢字に直すと三,7は七,9は九だから」
「三七九」の論理を的確に読解することができました。
だったら,「379」は「三七九」と漢字に直せばよいのでしょうか。「三七九じゃなくて,三百七十九だよ」と反論の声があがりますが,「三七九でいいんだよ」という声もあがります。これが,子どもたちの問いとなりました。
子どもたちが,自分の論理を主張していきます。

「三七九と書いてしまうと,この3つの数全部が一の位の数だと間違えてしまうから,三百七十九と書かないとだめだよ」
「三百七十九は『さんびゃくななじゅうきゅう』としか絶対に読まない。でも,三七九は『さんななきゅう』と読んでしまうかもしれない」
「数字の379は,3は百の位,7は十の位,9は一の位と分かっている。でも,三七九だけ見たら三が百の位かどうかは分からないから三百七十九と書いた方がいい」

 この説明で,多くの子どもが納得をしました。「三七九」でも間違いとは言えないが,「さんななきゅう」と読まれる可能性があるという指摘は,素晴らしい論理です。
 さらに次の説明が続きます。
「『七五三』は『しちごさん』と読むけど,『ななひゃくごじゅうさん』とは読まないから,百や十の漢字を入れた方がいいよ」

 子どもたちにとって最近の出来事である「七五三」を例にした説明が生まれてきました。私の想像を超える例示です。これには子どもたちも納得でした。絶対に読み間違いのない表記は「三百七十九」となることを,子どもたちが積み上げた論理でクラス全体が納得していくことができました。

 算数授業の目的は,正しい知識を一方的に教えることではありません。子どもの既習学習や経験値から導き出される論理を的確に積み上げて,新しいものを見つけ出すことです。子どもたちは,379の漢字表記の仕方を巡ってこの学びを具現していくことができたのです。

教科書のトリセツ 発刊!



コロナで休校していた学校も再開しました。現在は,授業の遅れを取り戻すために頑張っている先生が多いのではないでしょうか。

さて,授業を進める際に必要なのが算数教科書です。しかし,「教科書通りに授業を進めても,子どもが盛り上がらない」という声もお聞きします。そんな声に応えるために作られた本が発刊されました。その名も,
「本当は使える算数教科書〜教科書のトリセツ〜」(学校図書)
です。

算数教科書をベースとしながら,教科書の見せ方を少しだけ変えたり,教科書の素材はそのまま使いつつ発問を変えたりすることで,子どもが大いに盛り上がる展開が具現できます。そんな教科書アレンジの方法を記したのが本書です。

教科書アレンジの理論編と,それをベースにしてた体的実践例が1年生〜6年生まで掲載されています。是非,お求め下さい!


2020年6月4日木曜日

算数夏祭りはオンライン開催決定!

8月8日(土)に新潟で開催予定でした「新潟・算数夏祭り」は,今回はオンライン開催(有料制)で行うことになりました。「先生方の学びを止めたくない」という新潟の熱き志の若い先生方の熱意で,オンライン開催が決定しました。新潟の若い先生方のやる気は,すばらしいですね!

オンライン開催であれば,どこからでも参加できますね。海外でも,喫茶店(?)からでも可能です。また,好きな時間から参加し,好きな時間に退席していただいても構いません。主催者側としては,ずーっと参加していただきたいですけどね・・・。

詳細が決まりましたら,お知らせいたします。

参加にはパソコンかスマートフォンの準備,そしてオンライン講座用のアプリ(Zoomなどですが,今回使用のアプリはまだ未定)のダウンロードが必要になります。

佐渡・算数オリンピック延期のお知らせ

8月に開催予定のお知らせをしていました「佐渡・算数オリンピック」は,新型コロナ感染予防の観点により,来年に延期させていただくこととなりました。楽しみにされていた先生方,申し訳ありません。

東京オリンピック同様,中止ではなく来年に延期です。来年は,今年予定されていた以上にパワーアップした企画をお届けしたいと考えています。それまでお待ち下さい!

2020年6月2日火曜日

遠隔授業で忘れてはいけないこと

6月になり,各地の学校が再開しています。しかし,再びコロナ感染拡大により休校に追い込まれる可能性もあります。各自治体では,国の支援もあり急速にICT環境が整いつつあります。それに伴い,多くの学校や自治体で遠隔授業も始められています。

遠隔授業作りへの取り組み自体は,価値があることです。しかし,そこで公開されている遠隔授業の品質は,残念ながら高いとは言い難い面があります。理由の1つが,遠隔授業を実施すること自体が目的化していることです。

忘れてはいけないことは,この4月から新学習指導要領が本格実施されたことです。そこでは,「主体的・対話的で深い学び」による授業の改善が大きな目標の1つとされています。私は,遠隔授業であっても「主体的・対話的で深い学び」による授業展開を進める必要があると考えています。

カメラの前で,先生が単に学習内容を伝えるだけでは「主体的・対話的で深い学び」にはつながりません。また,おもしろおかしく学習内容を伝えようとする試みも見られます。しかし,それも「主体的・対話的で深い学び」につながる授業とはいえません。「主体的・対話的で深い学び」による授業改善の視点は,遠隔授業での動画にも必要です。

先日,大阪府のある市の教育センターで指導主事さんを対象にした遠隔授業作りのノウハウ講座を開催しました。私が担当しているスタディーサプリの動画作りでの経験もとに,どのように動画作成を進めれば「主体的・対話的で深い学び」による授業作りができるのかを実際の動画も見ていただきながら行いました。どの指導主事さんも目から鱗状態でした。

動画撮影当初は慣れないこともあり,一方的伝達授業になることもあるかもしれません。しかし,今後は「主体的・対話的で深い学び」による授業動画作りをめざしていただけたらと考えています。教室の授業でも,遠隔授業でも学習指導要領の趣旨を生かしていくことが大切です。