2019年2月27日水曜日

直方体の平行と垂直


4年生の直方体と立方体の学習で,面や辺の平行関係や垂直関係を学ぶ場面があります。

子どもたちに,次にように投げかけます。

「赤い辺に垂直な辺はどれでしょうか」

右図の青い辺が垂直であることは,子どもたちもすぐに納得です。ところが,「まだ垂直な辺はあるよ」と声があがります。それを聞いた子どもたちは,「もうないよ」と声をあげます。

垂直な辺がまだあると考える子どもは,右図の紫の辺が垂直だと主張します。この紫の辺が赤い辺に対して垂直か否かを巡って,子どもたちは論争を進めます。

「赤と青は垂直でしょ。紫も同じように垂直だよ」
「でも,紫は離れているよ」
「あのね,直方体を正面から見るよ。そうすると赤い辺と紫の辺が垂直に交わって見えるじゃん」
「確かに・・・」

真正面から見て,面が透き通ったと考えたら,赤と紫は垂直に重なって見えます。この意見で,垂直だと考えを変える子どもも生まれてきました。
ところが,今度は次の声があがってきます。

「やっぱり垂直じゃないよ。前の勉強で,離れた2つの辺が垂直か考えたでしょ。この場合は,辺を伸ばして垂直にくっつけば垂直と言えたでしょ。でも,赤と紫は伸ばしても絶対にくっつかないから垂直じゃないよ」

図を描きながら説明しました。4月に学習した「垂直と平行」の場面を想起した論理的な説明でした。これで全員が納得です。

次に,右図を提示し問題を投げかけます。

「赤の辺に平行な辺はどれですか」

青の辺は全員が平行だと納得です。意見が分かれたのは,紫の辺です。紫の辺は平行ではないと考える子どもがいました。彼らには,彼らなりの論理がありました。

「だって,赤と青は同じ面にある辺でしょ。でも,紫は赤の面とは違う面だから平行じゃないよ」

同じ面に辺があるか否かが判断基準だったのです。子どもらしい論理です。しかし,この論理に対して反論の声があがります。

「赤と紫の辺は,どこまで伸ばしてもまっすぐに伸びていくよ」
「どこまで伸ばしても交わらないから,平行だよ」
「赤と青は同じ面だから平行でしょ。青と紫も同じ面だから平行でしょ。だったら,赤と紫は平行だよ」
「赤と青が平行,青と紫が平行。それなら赤と紫も平行だよ」

最後の2つの説明は,納得を引き出す説明でした。

子どもたちは,感覚で面や辺の平行・垂直関係を判断しています。彼らの曖昧な感覚のズレを授業で取り上げることで,正しい図形の見方を整理することができる時間となりました。












2019年2月26日火曜日

「小1~3担任のための学級経営大辞典」発刊

明治図書より,4月のスタートダッシュに大切な学級開きや授業開きのポイントなど,1年間役立つ情報満載の本が発刊されました。こちらの本は,全国の各教科の専門家の先生方の共著で完成した本です。私がかかわっているのは,小1~3年生版です。

「小1担任のための学級経営大辞典」
「小2担任のための学級経営大辞典」
「小3担任のための学級経営大辞典」

学年別に刊行されていますので,ご自分の新学年の本をお求めください!

3年生「メートル法の導入」


3年生に「メートル法」の学習が移行措置で入ってきました。この学習は,これまでに学習した様々な単位の関係を把握しまとめていくことが目的です。
形式的な学習になりがちなこの場面を,次のような展開で進めてみました。

子どもたちに次のように投げかけます。

「一番小さい長さの単位はなにかな」

これは簡単です。「1㎜」と声があがります。この1㎜をノートの左端に書きます。続いて,次の問いかけを行います。

「次に大きい単位はなにかな」

これも簡単です。「1㎝」と声があがります。この1㎝は,ノートの先ほどの1㎜から1ますあけた右側の位置に書きます。

今度は,次の問いかけを行います。

「次の大きい単位はなにかな」

これも「1m」と声があがります。ここで,次の問いかけを行います。

「1mはどこに書きますか」

子どもの反応は3つに分かれました。

「さっきも1ますあけたから,今度も1ますあけて1mを書く」
右図の上のパターンです。

「1㎜も1㎝も単位の字が2文字ある。でも1mは単位の字は1文字。だから4ますあける」
右図の下のパターンです。単位を示す文字の数に着目したのです。この着目ポイントは全員が納得しました。しかし,なぜ4ますあけるのかがはっきりとしませんでした。

「1㎝は10㎜でしょ。これって1㎝は1㎜の10倍だから1ますあいている。今度は,1mは100㎝でしょ。これって1mは1㎝の100倍」
「そうか!だから2ますあけるんだ」
「1ますで10倍。2ますなら100倍」
「だったら2ますあけた方がいいね」

ますの数と倍数に関係性を持たせることに子どもたちは興味をもったのです。この指摘で,全員が2ますあけることを納得しました。すると,まだ提示されていない1㎞にも子どもの思考は発展していきます。

「だったら1㎞は1000m」
「だから1mの1000倍。ますは3つ分あくんだ」
「10倍,100倍,1000倍の0の数とますの数は同じだね」

これまでに学習した㎜,㎝,m,㎞の間の倍の関係を,ノートのます目を使うことで引き出すことができました。(25分ほどでここまで終わりました)



2019年2月21日木曜日

□を使った式のかけ算場面を図で表現すると・・・


3年生「を使った式」も,後半の学習です。子どもたちに次のように投げかけます。

「同じ値段の鉛筆を10本買いました。値段は800円になりました」

この問題に出会った子どもたちは,「鉛筆の値段がわからないね」「だから,鉛筆の値段が□円だね」と,問題場面の分析を進めていきます。さらに,「式にもできる」と声をあげます。そこで,この問題場面を式に表すことにしました。

子どもたちは,「×10=800」と式を作りました。また,□の大きさを求めるためには,「800÷10」の計算をすればいいと考えました。そんな子どもたちに,「本当に800÷10の式でいいのかな」と投げかけます。「絶対に合ってる」「図をかけば分かる」と,図の必要感につながる声が生まれてきました。そこで,問題場面に合う図をノートに作図させました。

子どもたちがノートに描いた図は,全部で2種類ありました。それぞれの図を板書させます。板書を見つめる子どもたちが,「なんか変だ」「単位が2つある」と声をあげてきます。子どもたちの話し合いは始まります。

「右図はおかしいよ。だって,10本と円と単位が混じっているよ。昨日までは,同じ単位しかなかった」
「昨日は,全部『人』しか単位はなかった」
「右の図はたしざんの図になっている。この問題はかけ算なんだから,たしざんの図ではおかしいよ」
「鉛筆は10本で800円でしょ。でも,この図だと,10本よりの800円が大きくなっているからだめだよ」

たしざんタイプのを使った式では,上の図で場面を表すことができました。そこでの学びを,この場面でも生かそうと考えたのでしょう。しかし,この場面はかけ算なので同じ手法が使えないことが見えてきました。

では,正しい図は右でしょうか。先ほどの,違う単位が混じっているの指摘を受けて,「だったらこの図(右)も,違う単位が混じっているよ」という声があがってきました。

「この図は混じっているけど大丈夫だよ」
「10本と800円は同じ幅になっている。さっきの図とは違うでしょ」
「1本で円でしょ。それが図の右端の四角だよ。それが,1・2・3・・・とつながっているからいいんだよ」
「1本で円。10本で800円という問題だから,両方とも合っている(対応している)から,この図でいんだよ」

異なる単位が隣同士になることはあり得ません。子どもたちは,自分なりの言葉でその違和感を説明してきました。
たしざんとかけ算の図を比較することで,それぞれの特徴も見えてきた1時間でした。










2019年2月20日水曜日

直方体の展開図も11個?

 4年生「立方体と直方体」の学習では,それぞれの展開図を作成します。子どもたちは,前の時間までに立方体の展開図は11個あることを発見しました。実際に作図を行い,11個で間違いないことを確認しました。

次に,「直方体の展開図は何個あるかな」と子どもたちに投げかけます。子どもたちは次のように考えます。

「11個だよ」
「立方体が11個だったから,同じでしょ」
「直方体は立方体を少しつぶしただけだから,同じ数になるよ」
「でもさあ,立方体の面は全部正方形で同じ形でしょ。でも,直方体の面はいろいろな形があるから,11個よりはもう少し多いんじゃないかな」

多くの子どもの予想は11個です。一部の子どもは,11個より少し多い予想でした。

そこで,本当に11個なのかを展開図をノートに作図することで確かめます。前時までの立方体の展開図を参考にする子どもの姿も見られました。

さて,展開図を作図するなかから「太いのと細いのがある」「だから2倍だ」「だから11個より多いはず」と隣同士で話し合う声が聞こえてきました。そこで,その子どもたちの図を板書します。右の図です。そして,次のように投げかけます。

「この図を描いた2人が,直方体の展開図は11個よりも多いはずだと言っています。その気持ちはわかるかな」

子どもたちは,板書された展開図を見つめます。やがて,子どもの話し合いが始まります。

「どちらもTの字型だ」
「Tの字型が2種類ある」
「(立方体の展開図を板書しながら)立方体にもTの字の展開図はあった。でも,それはこの形しかなかった。でも,直方体ではTの字が2種類あるからもっと多くなる」
「1つの形で2種類あれば,11×2で22種類になるよ」
「でも,他のパターンでは1種類だけかもしれないから,22種類とは限らないよ」

子どもたちは,2人の太タイプ・細タイプのTの字型展開図をもとに,直方体の展開図は11種類よりはかなり多くなりそうだと考え始めました。

この後,さらに展開作りを進めていきます。やがて,「こんなTの字のありました」と右図のような展開図を見つけた子どもも現れました。この時点で,Tの字型は3種類になりました。他の展開図も同じように見つかれば,11×3で33種類あることになりそうです。

直方体も立方体も同じ展開図の種類数だと多くの子どもは考えていました。ところが,実験を進める過程で新たな視点を発見することで,直方体の展開図がかなり多くなることを発見した1時間でした。




2019年2月19日火曜日

ひきざんの□を使う式は難しい?

 3年生「を使った式」のその後です。子どもたちに,次のように投げかけます。

「式を見て,どんなお話ができるか見えるかな?」

子どもに提示した式は,「−51=34」です。子どもたちは,次のようなお話を作りました。

「バスに何人か乗っていました。次のバス停で51人降りました。バスに残った人は34人でした」

このお話は,「−51=34」になります。その後,□の数を求めました。子どもたちは,テープ図を使いながら,「51+34=85」で□が84人であることを求めていきました。

次に提示したのは,「59−=35」の式です。この式に合うお話を考えさせました。

「バスに59人乗っていました。次のバス停で何人か降りました。バスに残っているのは35人でした」

先ほどの問題ができれば,これは簡単です。そこで,が何人になるか求めさせました。すると,子どもの反応は2つに分かれました。

① 59+35=94
② 59−35=24

①の式を考えた子どもには,彼らなりの論理があります。

「だって,さっきの問題もはたしざんで求めたでしょ。だから,この問題もたしざんで計算した」
「ひきざんの反対はたしざんだから」

最初の問題は,のあるひきざんでした。その問題では,を求めるためにたしざんを使ったのです。今回も,のあるひきざんです。そのため,それと同じ考え方が適用できると考えたのです。
①のたしざんを考え子どもたちは,②の式の意味がすぐには理解できませんでした。最終的に,彼らが納得したのはテープ図を使った説明でした。

「さっきの問題はテープ図全体がわからないから□にした。全体の中の51人と34人のところは分かっているから,この2つをたした。でも,この問題は全体は59人とわかっている。この全体の中の35人のところも分かっている。わからないのは左の□のところ。だから,59から35をひく」

同じテープ図表現でも,最初の問題と今の問題ではの位置が異なっているのです。①と考えた子どもは,問題場面を最初と同じだと勘違いしたのです。の部分が図のどこに位置付くのかが,2つのテープ図を比較することで明確になったのです。

目の前の図と式と問題文だけでなく,それ以前に学習した図と式と問題文とも比較することで,理解が一気に進むことが実感できた1時間でした。


2019年2月17日日曜日

子どもの発想は過去とつながる

 3年生の子どもたちと,かけ算の筆算の学習を進めていました。

「百の位のかけ算もできるかな」

子どもたちは「簡単だよ」「できるかな」と,様々な声をあげながら百の位の筆算に挑戦をしていきます。
右のように筆算が板書されました。これを見た子どもたちから,「おもしろいことがある」「階段がある」と声があがります。この声をクラス全体で共有していきます。

「筆算の123,2460,16900の左が階段になっている」
「えっ,そこ?」
「右が階段でしょ」
「下に行くと,0が1つずつ増えていく」
「0が増える理由が分かった。123は123×1の答え。2段目の2460は123×20の答え。×20だから0が1つ増える。3段目の36900は123×300の答え。×300だから0が2つ増える」

子どもたちは,各位の計算部分の0が次第に増えていくことを発見しました。さらに,その理由を発見していくこともできました。
子どもの追求はさらに続きます。

「だったら,もう1つ下の位になると0はまた1つ増える」
「筆算が下に行けば行くほど,0がどんどん増えていく」

ここで,K子がノートをめくる姿が目に入ります。K子は過去の学習のある部分を探していたのです。K子が説明します。

「それって,№72に勉強でやったことと同じだと思う。№72では1876×7の計算をしたでしょ。そのとき,0が下に行くほど1つずつ増える計算をしたでしょ。その勉強と今の勉強は同じだよ」

K子が見つけた№72の学習場面は,かける数が1位数までの学習でした。その学習と,今回のかける数が2位数以上の学習には共通点があることを発見したのです。K子は№72の学習でも,0が階段状に増えていくきまりを発見していました。その発見を私から褒められたことを覚えていたのです。その記憶が,この場面で一気に蘇り,目の前の学習とつなげて考えることができたのです。

算数の学習は,既習の積み上げ展開していきます。各学習場面で,核となる見方・考え方を教師が価値づけたり賞賛したりしておくことが,その後の学習にリンクしていくことが見えた瞬間でもありました。

2019年2月16日土曜日

3年「□を使った式」の導入

3年生の子どもたちに次のように投げかけます。

「チョコレートは横に何個並んでいるでしょう」

封筒の中からチョコレートの図を右のように一部だけ提示します。子どもたちは,縦にチョコレートが何個並んでいるのかを数えています。

「縦に7個並んでいる」

子どもたちは声をあげます。それと同時に,「全部の数を知りたい」という声が聞こえてきます。そこで,この声の意味を共有していきます。

「全部の数が分からないと,横は分からない」
「全部が分かれば,縦が7個だから何列かかけ算でわかる」

子どもたちは,全部の数が分かれば計算で横のチョコレートの数が分かると考え始めました。そこで,どんな式が頭に浮かんだのかを尋ねます。

「全部÷7」
「□÷7=横の数」
「別の式もあるよ。□×7=全部」

3年生「□を使った式」のポイントは,子どもが□を使って考えたくなる瞬間をどう引き出していくかです。子どもたちは,この場面で□を使って式化を考え始めました。
ところで,「□÷7=横の数」と「□×7=全部」の式は,□を両者使っているものの意味が異なっています。また,□を使う式自体の意味が十分に納得できない子どももいました。
そこで,次のように投げかけます。

「□×7=全部の意味はわかるかな?」

式の意味の共有化を図ったのです。子どもたちが説明します。

「チョコレートの横の数が分からないでしょ。だから,分からない横の数を□にした」
「例えば,□が10だとするでしょ。そうすると,10×7=70という式の意味になるんだよ」
「そういうことか!」

□は未知数です。しかし,これが子どもには難しいのです。そこで,□に10を試しに入れて説明をしたのです。1つの具体的数値が入ることで,子どもたちには□×7=全部の意味が見えてきました。未知数を□にして式を作ることは,3年生の子どもには大人が思っている以上に難しいのです。

次に「□÷7=横の数」の意味を共有します。

その後,子どもたちは「□×7=全部」の式に対して,次のように声をあげてきます。

「全部の数であまりがでると困る」
「7の段の九九の数じゃないとだめだよ」
「例えば49個ならできるよ」

ここでも子どもから具体例が出てきました。曖昧な場面を明確化していくために,具体例をあげて説明できる力は,算数では非常に高度な思考方法です。すばらしい子どもたちです。
そこで,全部の数が49個なら横の数が何個になるのかを考えることにしました。

「式は□×7=49になります」
「□を求めるために,49÷7=7だから,横は7列です」

横の列を直接求めるには,「49÷7=横の数」で考えます。しかし,問題場面をそのまま式で表現すると,「□×7=49」と考えます。

情報を一部隠して提示することで,□を使って式化したくなる気持ちを引き出すことができた1時間でした。

2019年2月5日火曜日

2mの1/4と1/4m

 本校の研究発表会が終わりました。参加された先生方,ありがとうございました。

私は3年生「分数」の授業公開を行いました。教師が提示する問題と同じカードを見つけるゲーム場面を設定しました。

この時間の主発問は「1/4mカードはどれですか」でした。しかし,この発問を投げかける前から,子どもたちからこの数値が生まれてきました。問題場面に主体的にかかわっている証拠です。

子どもたちが1/4mと判断したカードは2つありました。1つ目は,1mを4等分した1つ分に色が塗られたカードです。これは,全員が「1mを4つに分けた内の1つ分」という理由で納得しました。

一方,判断が分かれたのが2mを4等分した1つ分に色が塗られたカードです。多くの子どもたちは,このカードも1/4mと考えました。
「だって,2mを4つに分けた1つ分でしょ。だから1/4m」

これが子どもたちの論理でした。量分数の基準は1を単位とします。ところが子どもたちには,その1ではなく長さの単位であるmだけに意識が向いていたのです。

ところで,正解である1/4mのカードと問題をつなげて考える子どもが現れます。
「1/4mは1mがもとだから,2mのカードは違うと思う」
「1mの1/4は25㎝でしょ。2mの1/4は50㎝でしょ。長さが違うよ」

分数で表記されたmを㎝に置き換えることで,2mのカードが正しくないことを説明したのです。この論理は説得力がありました。長さの視点で比べたら,2つのカードの長さは異なるのです。ところが,「でも」という声があがります。

「でも,2mを4つに分けた1つ分だから1/4mだよ」

2mの1/4であることは間違いありません。その事実と1/4mの違い,25㎝と50㎝の違いがうまくリンクしないのです。感覚的に1/4mと言ってしまいたくなるのです。この感覚を崩すのは至難の業でした。

「2mのカードは,1mだけ見たら1/2mだから,これは1/2mだよ」

この発言をきっかけに,少しずつ子どもたちは2mのカードのおかしさに気づいてきましたが,時間内で全員が納得することはできませんでした。子どもの感覚を教師の論理ではなく,子どもの内なる気付きを基に変革していく難しさを実感しました。一方,子どもたちの論理を主張しつづける姿にも感動しました。

翌日です。この問題の続きを行いました。子どもたちの思いを発表させます。

「2mのカードは違う。1mのカードは,1mを4つに分けた1つ分です。でも2mの方は,2m全体を4つに分けた1つ分だから違います」

この発言には,この問題を解決する大きなヒントが隠れています。「全体を」という視点です。この視点を,時間をかけて共有していきました。すると,今度は子どもたちの視点が点から面へと拡がっていきました。

「4日前に勉強したノートを見て下さい。リンゴ1/4個は,もとがリンゴ1個だったでしょ。次の問題は,『リンゴの1/2』これは,リンゴ全体の1/2だから4個だった。これと同じだよ」
「ピザ2/3枚,水2/5Lは,どれももとが1枚,1Lで1なんとかだった。だからもとは1なんだよ。2がもとだとだめなんだよ」

子どもたちは,研究会前の授業と研究会で扱った分数の共通点に気がついたのです。単位がつく分数は,どれももとは1単位(L・枚・m)なのです。これでほとんどの子どもたちが納得しました。

4日前の問題では,バナナの問題を扱いました。「バナナ1/2本」です。この問題を想起することで,一気に子どもの考えが変わりました。
「バナナ1/2本は,左のバナナだけ半分にした。右のバナナは無視した」
「だったら,2mも同じだ。(2mテープの)左の1mだけ見るんだ。そして,右の1mは無視するんだ。そうすると,左は1/2m。右は無視するから1/2mだよ」

これで「そうか」「わかった」「なるほど」という納得の声が聞こえてきました。

最後は,4日目のバナナの1/2本とつながることで,子どもの納得の声が生まれてきました。2時間掛かりましたが,子どもたちが過去の学習とリンクする瞬間を引き出すことで,本当に子どもが納得する量分数と分割分数の違いを見つける授業が構成できました。