2017年8月13日日曜日

対話的学びは形式では進まない

第29回全国算数授業研究大会が終わりました。この会では,参会の先生方のお悩み相談コーナーを設置しました。その中で,対話的な学びについてのお悩みが出されました。
対話的な学びは,次期学習指導要領改定のキーワードの1つです。出されたお悩みは,参会の多くの先生方に共通していました。それは,次のものでした。
「対話的な学びを進めるために,ペア説明や4人でのグループでの話し合いを取り入れるように言われています。でも,これで本当にいいのか疑問に思っています」

対話的な学びが,形式的に推し進められようとしているのです。対話的な学びは,本来は子どもが話したい・友だちの考えを聞いてみたいという思いのあるときに行われるべきものです。ところがお悩みで出された声は,形式的に対話場面を取り入れようとしていることが分かります。そこには,子どもの思いは存在しません。これは指導要領がめざす姿ではありません。対話的学びの前提には,子どもが主体的な学びに向かっていることが前提です。問いを授業で持たせることが,指導要領でも強調されています。対話的学びは,主体的な学びとセットなのです。決して形式的に対話的学びを進めることを求めているのではありません。

形式的に授業改善を進めることは簡単です。一見,教師には改善が進んだように思える満足感があるのかもしれません。しかし,それでは本当の授業改善にはなりません。指導要領の本質を見極めた授業改善が大切です。

来春,次期学習指導要領改訂の本当の意味と,それと連動した算数の授業改善のあり方についての本を刊行予定です。こちらもお楽しみに!

2017年8月6日日曜日

データを活用したくなる授業

新潟の6年生の子どもたちに,データの活用の授業を行いました。2020年版指導要領では,データの活用が新たな領域として生まれてきました。データの活用の授業で大切なことは,データを活用させることではなく,子ども自身がデータに働きかけ,データを活用したくなる授業を構成することです。

6年生の子どもたちと私で「100に近い方が勝ちゲームをしよう」と投げかけました。封筒に入っている数字カードを取り出して,100に近い方が勝ちというゲームです。
子どもチームは,封筒の中の数字カードの平均値が102の封筒を選択しました。私は95の封筒から数字カードを取り出します。
ゲームを何回を継続しますが,いずれも私が勝ってしまいます。5回戦中子どもは全敗です。この結果を見たある女の子が,両手で子どもチームの数字カードの分布状況をジェスチャーで表現する姿が見えてきました。そこで,この女の子の思いを共有化します。
「100から離れている」
ある子どもが,このようにつぶやく声が聞こえてきました。子どもチームの数字カードは100から離れているカードばかりでした。その様子を,この言葉で表したのです。さらにこの言葉を,両手を大きく広げて表現する姿が生まれてきました。一方,私のデータは100に近いカードばかりでした。このデータを,両手を近づけて表現する姿も生まれてきました。
その後,これらの両手の表現を数字カードを移動させて表しました。このカードの分布こそ柱状グラフそのものです。

子どもがデータをグラフ化したくなる仕掛けをいかに構成していくのかを,子どもたちの素直な表現をもとに授業した1時間でした。