2018年2月12日月曜日

折れ線グラフのよさを実感する

大阪の4年生の子どもたちに,データの活用の授業を行いました。

子どもたちに,「算数シークレットは見えるかな」と投げかけます。隠れている部分を見つける学習です。

先ずは,富士山型の山の稜線の一部が隠れた山を提示します。子どもたちは,隠れた部分の稜線がイメージできました。そこで,なぜ稜線のイメージができたのかを尋ねます。
「だって,隠れたところの反対側と同じようになるからだよ」
「隠れた場所のはじめと終わりの山の続きを考えればわかるよ」
「折れ線グラフみたいになっているからだよ」
 子どもたちは,隠れた部分の前後の情報をもとに,山の稜線を推測したのです。この見方が,後半の授業の布石となりました。

次に提示したのは,大阪市の1900年~2016年までの年平均気温の2年おきのデータを表にまとめたものです。そのデータの中の1960年~1980年の部分がシークレットになっています。そのシークレットの部分のデータを考えさせました。子どもたちから,次の声があがります。
「難しい」
「数字が多すぎる」
「上がったり下がったりしている」
データの量が多すぎて,シークレットの気温の推測の限界に気付いたのです。この気持ちを引き出すために,意図的に莫大なデータを提示したのです。よくわからいことを子どもたちは,実感しました。

続いて,東京の1900年~2016年までの年平均気温の2年おきのデータを提示します。ただし,今度は折れ線グラフにしたものです。先ほどと同様に1960年~1980年がシークレットになっています。ところが今度は,「簡単だ」という声が子どもたちからあがります。子どもたちは,ジェスチャーでシークレット部分の折れ線グラフの動きを表現します。大阪の気温を推測することは難しかったのに,東京はなぜ推測できたのかを尋ねます。
「だってジグザグが続くからだよ」
「だんだん上がっているから,同じようにすればいい」
「シークレットの前と後と同じようにすればいい」
 この見方は,山のシークレットを考えた場面と同じものです。

最後に福岡の気温データを折れ線グラフで提示します。今度は,2016年~2050年の部分も加えた2か所がシークレットになっています。子どもたちは,2016年以降もわかると声をあげます。2016年までの折れ線の動きを延長すればわかると考えたのです。
折れ線グラフを使えば,シークレットになった部分だけではなく,未来の気温も推測できることが見えてきた1時間でした。表と折れ線グラフを対比して提示したこと,さらに,データの量を意図的に大量にしたことが,子どもたちの気付きを引き出したといえます。

2018年2月5日月曜日

アートギャラリーの定理

子どもたちに次の問題を提示しました。
「□角形の美術館があります。頂点にカメラを設置します。最低何台のカメラがあれば,完璧に監視できるでしょう」
 三角形は,カメラを1台で完璧に監視できます。作図して台数を確かめます。この結果を見た子どもから,「四角形も1台じゃないかな」「えっ,ブーメラン型は2台じゃない」と声があがります。子どもたちが,場面を拡張して考えた瞬間です。
 四角形は,ブーメラン型でも凹の頂点にカメラを設置すると1台で監視できます。五角形も1台で監視できます。ところが,五角形の実験が終わった時点で,「六角形だと2台かも」「えっ、六角形も1台じゃない」と声があがります。子どもの予想にズレが生まれたのです。実験でカメラの台数を確認します。結果は2台でした。
 すると今度は,「わかった! 1,1,1,2,2,2になってるんだ」と声があがります。きまりに気づいた声です。この声をきっかけに,子どもたちは「3つで1パックになっている」「三角形〜五角形は1台,六角形〜八角形で2台,九角形〜十一角形は3台だ」と考えていきます。カメラの台数が3つの図形毎に1台増加すると考えたのです。一方,「そうじゃなくて,1,1,1,2,2,2,2かもしれないよ」という声もあがりました。カメラの台数と図形の関係が3つ,4つと1つずつ増加するという視点でです。このパターンでの変化も,子どもたちはこれまでに経験しています。どちらも良い視点できまりを見つけてきました。
 子どもたちが考えたきまりを検証するには,本来ならまだ実験をしていない七〜九角形を調べる必要があります。ところが子どもたちは,「九角形を調べればいいじゃん」と考えました。九角形が2台か3台かが分かれば,自分たちが予想したきまりの真偽が効率的に確かめられると考えたのです。この考え方も驚きでした。
 ノートに九角形を作図してカメラの台数を実験します。「あれ,2台にしかならない」の声がたくさん生まれます。カメラの台数は後者のきまりと思いかけたとき,「3台ができた」という声が生まれます。その図形を全員で確認します。すると3台なければ監視できない九角形であることが確認できました。この結果から,カメラの台数は3つの図形で1パックのセットになることが見えてきました。

 今回,子どもたちが取りくんだのはアートギャラリーの定理と呼ばれる問題です。大学数学で取り組まれている問題を学生版にアレンジしたものです。

2018年2月1日木曜日

トイレットペーパーの芯のくるくる

子どもたちに,次の問題を投げかけました。
「トイレットペーパーの芯の模様(くるくる)の長さは何㎝でしょう」
 子どもたちは,
「半径か直径を教えてほしい」
「模様がくるくる何周しているのか教えてほしい」
と考えました。
 そこで,直径は10㎝,模様は3周していることを教えました。この2つの情報で模様の長さを求められるのか実験しました。
 子どもたちは,なんとか計算で模様の長さを求めようと考えました。しかし,2つの情報だけではうまくいかないことに気づきます。

 次に生まれてきたのは,
「芯の高さを教えてほしい」
という声でした。高さが分かれば,円柱状の芯の展開図が描けます。計算の限界への気付から,展開図を作図することで模様の長さを求めようと考えたのです。芯の高さは,19.8㎝。再びノートに実験します。

 さて,子どもたちが作図した展開図は平行四辺形と長方形に分かれました。円柱の側面をどこで切るかで形が異なります。ところが,平行四辺形は斜辺の長さは模様部分と一致しています。模様の長さが分かっていないのに斜辺部分を作図することはできません。
 実際に作図できるのは,円柱を長方形状に開いたパターンになります。この中のくるくるの線のイメージは,子どもによって異なりました。くるくるしているから,曲線をイメージする子ども。展開図状態にしたら直線になるとイメージする子ども。くるくるの線は3本斜めに引かれます。実際のくるくるの線は直線になります。
 ここまでイメージができれば,あとは作図でくるくるの長さが求められます。実際の大きさで作図する子ども,縮図を使って作図をする子どもがいました。どの方法でもくるくるの長さは96㎝になることが分かりました。


 最後に,くるくるの線に沿って組み立てた図形を分解しました。とてつもなく斜辺の長い平行四辺形が誕生しました。想像以上の長さに,子どもたちも驚いていました。

マスラボ全日程決定!


 4月から私と樋口先生(京都教育大学附属桃山小)・西村先生(京都市立醍醐西小)の3人で開催する算数連続講座・マスラボの全5回の日程が決定しましたのでお知らせします。


1回目 4月21日(土)
2回目 6月30日(土)
3回目 8月26日(日)
4回目 10月27日(土)
5回目 1月26日(土)


会場は,京都市の京都テルサの予定です。5回,それぞれにテーマ別の開催になります。授業ビデオを見ながらの授業検討もあります。演習もあります。算数の授業力をアップされることを目指されている先生の参加をお待ちしています。

すべての会に参加される場合は年間パスポートを購入されると割引価格になります。もちろん,ご都合のつく会だけに参加されても大丈夫です。申込み・会の詳細は以下のアドレスからお願いします。

http://www.kokuchpro.com/event/mathlabo1/