2018年10月30日火曜日

京都学力向上システム開発校研究発表会のご案内


京都府教育委員会指定「学力向上システム開発校」に指定されている京都府向日市立第2向陽小学校で研究発表会が開催されます。

この学校は,私が3年前から指導に入っている学校です。この学校の先生方の授業改善に掛ける意気込みは全国トップクラスです。3年連続で,私も授業公開を行っていますが,子どもたちも年々レベルアップしています。今回は,4年生・5年生の公開授業とシンポジュウ−ムが開催されます。シンポでは私も登壇します。


1.日時
平成3011月9日()  午後1時45分から同455分まで

2.会場
向日市立第2向陽小学校京都府向日市物集女町南条 70 番地  
TEL 075-932-1002  FAX 075-932-0896

3.研究主題
『数学的な見方・考え方を養う』
 ~児童の「問い」が連続するみんなで学び合う学習サイクルを構築しながら~

参加申し込みは,以下のアドレスからお願いします。


www.kyoto-be.ne.jp/2kouyou-es/cms/index.php?page_id=0

2018年10月23日火曜日

子どもの素直な思いとかけ算の筆算をつなげる

 3年生に「かけ算の筆算」単元があります。かけ算九九を超えて,二位数×一位数のかけ算の筆算形式を学ぶ場面です。
この単元の目標の一つは,かけ算の筆算形式を学ぶことです。しかし,この形式を一方的に教えるだけでは,子どもが主体的に学ぶ場面はほとんどありません。

教科書などでは,この単元の導入課題として,30×2や40×3のように何十×一位数の問題場面を提示します。その後のかけ算の筆算につなげるためです。しかし,この展開順は子どもにとっては必要感はありません。必要感があるのは,教える教師だけです。

最初の問題場面は,34×2のような一般的な二位数×一位数の問題場面の方が自然です。この問題場面に向き合ったとき,子どもたちは次のように考えます。
「34を30と4に分ける」
「サクランボ計算だね」
「30×2と4×2を計算すればいいね」
 この中で,「どうやって30×2を計算すればいいの」という問いが明確になってきます。このように,子ども自身に何十のかけ算を考えたいという問いを持たせることが大切です。

さて,子どもたちは34×2のような二位数のかけ算を十の位と一の位に分けて計算する方法を考えます。右のような方法です。子どもたちは,このような方法に「位分け分け」とネーミングしました。

子どもたちは,「位分け分け」の方法ならどんなかけ算も計算できると考えています。そこで,様々なパターンの十の位×一の位のかけ算に挑戦させます。十の位は「位分け分け」は簡単に計算ができます。ここで気をよくした子どもたちは,「だったら百の位も計算ができる」と考え始めます。そこで,百の位のかけ算も「位分け分け」で計算します。これも,同様の方法で答えを求めることができます。ところが,子どもからは「計算が長くなって大変」「何回も計算するので時間がかかる」と声があがります。子どもたちが,位分け分けの限界に気付き始めたのです。

子どもたちが,これまでに取り組んできた位分け分けの方法は,かけ算の筆算の部分積と同じ計算です。子どもたちが,百の位の計算に限界を感じ始めたときに,かけ算の筆算と出会わせました。筆算も位分け分けも手順は全く同じです。ただし,最初は右のような筆算を提示します。位分け分けそのものが見える形の筆算です。このタイプの筆算は,諸外国ではかなりメジャーな計算形式です。この後,日本の教科書にある筆算形式も提示します。
十の位のかけ算では,右のタイプも日本式の筆算も,どちらも分かりやすいと子どもたちは考えます。そこで,十の位の筆算を両方の形式で取り組ませます。どのタイプの計算でも,子どもたちは両者の優劣はつけがたい考えます。

子どもたちは,「だったら百の位も簡単に筆算でできそうだ」と考えます。子どもが,対象場面を拡張したのです。両者の方法で計算します。すると,今度は「位分け分け式は難しい」と声があがります。部分積のかけ算部分が下に長く伸びるからです。部分積の数も,最後のたしざんの回数も増えます。この部分に子どもたちは,面倒さを感じたのです。

教科書に掲載されている筆算を形式的に教え込むことは,この時期の子どもには簡単です。しかしそれでは,筆算形式の意味やそのよさを子どもが本当に実感することはできません。意味やよさを考えながら学習を展開したからこそ,子どもたちは「百の位でもできるかな」と自ら場面を拡張して考えたのです。

形式的な学習場面が算数にはあります。しかし,その場面への出会わせ方を工夫するだけで子どもが主体的に動き出す授業を創り上げることができます。






2018年10月20日土曜日

5はどっち

前回,お伝えした概数の翌日の授業です。

子どもたちに,「上から1けたの概数にしよう」と課題を投げかけます。授業のスタートは,単なる復習の計算だと子どもたちは考えています。

①245
②467
③789
④907

いずれも,50を境目に子どもたちは四捨五入して概数に直していきます。前時で子どもたちは,百の位の数字であれば49よりも下は百の位はそのまま,51よりも大きければ百の位は切り上げることを見つけました。また,50は中間値だからそのままだと考えていました。

そんな子どもたちに,5問目を提示します。

⑤75

子どもたちの考えは,約70,約80,どちらでもないに分裂します。前時の学習の履歴から考えれば,70でも80でもないと結論づけてもよさそうです。しかし,子どもたちは次のように説明してきました。

「80だよ。だって,0~9の数を並べて,0と9,2と8,3と7・・・と両端からペアを作ると4と5のペアになって,5は上の方に入るから」
「0,1,2,3,4で5個,5,6,7,8,9で5個。5を9の方に入れないと,5個と5個の引き分けにならない」

75を概数にするとどうなるか,子どもに任せることで,子どもたちは自ら0,1,2・・・という数値を黒板に書いて説明してきたのです。教師が,これらの数値を使うように促したわけではありません。概数の学習でも,子ども自らが数値に働きかける教

2018年10月18日木曜日

リンゴは何個?

4年生の子どもたちに,「リンゴは何個あるでしょう」と投げかけます。まずは,右のリンゴの絵を一瞬だけ提示します。4年生の子どもなら,この数は瞬時に5個だと判断できます。子どもたちは,「1年生じゃないんだよ」「簡単すぎだよ」と声をあげます。

次に,左の絵を10秒ほど見せます。一気に数が増えました。子どもたちは,「えー」と驚きの声をあげます。「多すぎだよ」という声もあがります。
この時点での予想の数を,子どもに尋ねます。子どもたちは,「100」「300」「200」と切りのいい数を発表していきます。多くの子どもは,切りのいい数を発表します。ここでのポイントは,すぐに子どもに予想の数を尋ねることです。じっくりと時間を与えすぎると,正確な数で総数を発表しようとしてしまうからです。

切りのいい数が多く発表されました。その理由を尋ねます。
「だって,いくつかはっきりわからないから,だいたいを言った」
「だいたいなら,ちょうどでないから言える」
「だいたいは約だから,約300とかで言った」
「はっきりできないけど,だいたいなら言える」
「178なら約200と言えばいい」
「178は,200との差が22だけど,100との差が78もあるから,約200」
「150が境目で,151から上だったら約200で,149より下だったら約100」

子どもたちは,自分たちで例題となる数を設定し,約何百の範囲がいくつからいくつまでなのかを説明してきました。
その後,提示したリンゴの絵を配布します。実際のリンゴの数は272個でした。先ほどまでの子どもの話をもとに,説明が続きます。

「これはだいたい300だね」
「だって,300からの差は28で,200との差は72もある」

この時間は「概数」の導入場面です。子どもから「だいたい」「約」を使いたくなる状況を設定することで,この見方を引き出すことができました。

2018年10月4日木曜日

1㎡の導入は逆パターンで

4年生「面積」単元の後半に,1㎡の学習があります。面積の単位が,㎠から拡張していく場面です。教科書などには,1㎡を教えた後で,1㎡の正方形に何人の子どもが入ることができるのかを実験するページがあります。

今回は,この教科書の素材を少しだけアレンジして,次のように投げかけました。
「10000㎠の図形には何人の人が立つことができますか」

1㎡は教えていません。従って,ほとんど子どもたちは10000㎠が1㎡という認識はありません。ましてや,この数字が具体的にどれ位の大きさなのかの見当もついてはいません。ものすごく大きな面積をイメージしている子どももいます。逆に,とても小さな面積をイメージする子どももいます。

子どもたちに,次のように投げかけます。
「前の勉強で,6㎠の形は無限にあることが分かったね。10000㎠の形もきっとたくさんあるね。どんな形がイメージできるかな。ノートに図を描いてみよう」

子どもたちは様々な図形を作図しました。前時で6㎠の面積の図形が様々作図できることを学習しています。その経験が,ここでも生きてきました。1辺が100㎝の正方形だけではなく,様々な数値の組み合わせの図形が描かれました。その中のいくつかを板書させます。

この時点では,子どもたちは「どれも10000㎠なんだから,立つ人数は全部同じだよ」と考えています。そこで,8人1組の班で実際に立てる人数を実験することにしました。どの図形を使うかは,班で相談して決めさせます。1辺が100㎝の正方形を選択した班が多くありました。一方,縦25㎝・横400㎝の長方形を選択した班もありました。

絶縁テープを使って,床に選択した図形を作図します。その後,図形の中に何人が立てるのかを実験します。

正方形は17人が最大でした。一方,縦25㎝・横400㎝の長方形には最大26人の子どもが立てました。多くの子どもが,面積が同じなら立つことができる人数も同じだと考えていましたが,その予想を覆す結果となりました。

この後,10000㎠のことを1㎡と呼ぶことを教えます。同じ1㎡でも,このようなアプローチで授業を展開すると,同じデータの中に異なる結果が見えてきます。子どもの固定観念を崩すことにもつながる1時間でした。