2020年9月30日水曜日

式の数は半分?

算数の時間,子どもたちに次のように投げかけます。

「同じ図から式がいくつもできるのは。たまたまですか?」


 前の時間,1つの図から式が複数見つかることに子どもたちは気付いていきました。その続きを問うことから授業はスタートしました。


多くの子どもは,式は複数見つかると予想します。一方,断言できるのかが自信がない子どももいます。


 そこで,○が8個の場合の式の数を調べます。調べていくと,


式は右のように4種類あることがわかりました。


 するとここで,「おもしろいことがある」と声があがります。おもしろいことなんて,この場面にあるのでしょうか?


「式の数が○の数の半分になっている」


 ○は8個,式は4種類でした。確かに半分の関係になっています。数値を比較するよき視点が生まれてきました。


 さて,このおもしろいことはいつでも当てはまるのでしょうか? この時点では,多くの子どもたちはこのおもしろさについては半信半疑でした。



 そこで,○が12個の場合の式の数を調べます。その結果は,左のように式は6種類見つかりました。○の数と式の種類数は,ここでも半分の関係になっています。子どもたちは,「すげー」と感動しています。一方,まだ半信半疑の子どもも少数ですが存在します。「半分にならないのもあるよ」という声も聞こえてきます。

 

 そこで,○が6個の場合を調べます。すると,この場合は式は4種類。半分の3にはなりませんでした。先ほどまでのきまりは,一般化できないことが見えてきました。


 その後,○の数を変えて実験を行います。最後に子どもたちは,


○の数の変化に応じて式の種類が3種類が2つ,4種類は3つ,6種類は4つ・・・と変化していくのではないか新しいきまりを考えていきました。時間切れのため,式の種類数が4つに本当になるのかを調べることはできませんでしたが,子どもたちが追究意欲をもって授業を終えることができました。


 どんな場面でもきまりを見つけ出そうとする貪欲なまでの子どもたちの追究姿勢,素晴らしいですね!

2020年9月29日火曜日

式が2つ見える!

 

かけ算の学習2時間目です。

子どもたちに「かけ算の式を絵でかけるかな?」と投げかけます。


1問目は3×2の式を絵で表現します。この場面を,子どもたちは


右のように表しました。「○を区切る線があると,式が分かりやすくなる」ことに気付きました。 

 


 2問目の式は,5×2。3問目の式は2×5です。いずれも,左のような図で式を表すことができます。


 これら2つの式を図で表した後,子どもの中から「おもしろいことがある」と声があがりました。子どもが見つけたおもしろいこととは何でしょうか?


「横で見ると5×2に見えて,縦で見ると2×5に見える」

 


縦2列,横5列の○だと考え,そこに区切り線を入れなければ,○の図から2種類の式が見えてくるという指摘です。

この説明を聞いた子どもから,「本当だ」「おもしろい」と声があがります。このおもしろさの発見から,「○の図は切り方で式が変わる」ということが見えてきます。


ところが,この発見に対して「それは,たまたまかもしれない」という声が聞こえてきます。


まだ,実験したのは1事例です。1事例だけの結果から,結論を導き出すのは早急過ぎるという見方です。このような見方ができることは,理数教育では大切な視点です。


すると,今度は次の声が聞こえてきます。


「あれ,①も同じになっているよ」

 別の場面に対象を拡大して考えたのです。①の問題も,右図のように区切り線の入れ方を変えると,3×2と2×3の2つの式が見えてきます。先ほどの発見が,別の図でも確かめられました。

 


 子どもの追究はここでは終わりません。「別の図で確かめました」という声が聞こえてきます。右のような縦3列・横4列の図で実験をしている子どもがいました。この図から,どんな式が見えるかを全員で考えます。


 4×3,3×4,6×2,2×6,1×12と5つの式がこの時間に見つかりました。「もっと式がある」という声も聞こえてきましたが,残念ながら時間切れとなりました。


 同じ図から複数の式が見えるおもしろさを実感した1時間となりました。


※本実践の前半部分は,東洋館出版社「板書シリーズ算数小学校2年下巻」山本良和先生の実践を追試しています。

2020年9月28日月曜日

愉しい算数つくる研修会のご案内

主体的・対話的で深い学びの算数授業を具現したい! 子どもがわくわくするような算数授業を創りたいと考えている先生方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな先生方へ向けた対面型の研修会を実施します。研修会のテーマは,

「愉しい算数授業のつくる研修会」

です。ソーシャルディスタンスを十分に確保できる会場で開催します。

期日:2020年11月14日(土)12時30分~16時

会場:大阪府池田市立池田小学校

この研修会では,私の講座の他に,池田市立池田小学校の森谷先生の授業ビデオ公開も行います。ビデオ授業参観後は,授業協議会も開催します。愉しい算数授業をつくるためには,授業を見る視点を鍛えることも大切です。また,若手の先生による実践発表や先生方の質問に答えるコーナーもあります。

詳細は,以下の大会チラシをご覧ください。申し込みは以下のアドレスからお願いいたします。

morimoriaki504-tanosiisansuu@yahoo.co.jp






何個あるでしょう? かけ算の導入

 

























 2年「かけ算」の導入場面です。子どもたちに,次のように投げかけます。

「何個あるでしょう」

1問目は,お皿にハンバーガーが5個の載った画像を数枚見せます。子どもの予想は
30個,25個,45個,35個に分かれます。同じ画像を見ていたはずなのに,バラバラの数になります。そこで,バラバラの数になった理由を尋ねます。

1つのお皿にハンバーガーが5個載っていた。そのハンバーガーセットが何個かわからない」

 同じ数のハンバーガーが全てのお皿に載っていたことは認識できました。しかし,お皿の数にズレが生まれたことが予想のズレの原因でした。そこで,お皿の数を確認します。お皿は6枚でした。「式に書ける」という子どもがいたので,見えた場面を式に表します。

5+5+5+5+5+5=30個」


 次に見せたは,イチゴの画像です。1枚のお皿にイチゴが6個載っています。そのお皿が4枚ある画像です。これも式に表現します。「6+6+6+6=24個」と書けます。



 3つ目の問題は,左の飴の画像です。お皿が7枚連続します。その中の6枚のお皿には飴が5個ずつ載っています。しか
し,1皿だけ飴の数が4個の皿を混ぜます。同数累加ができない場面を意図的に混ぜたのです。

 この画像を見た子どもから,次の声があがります。

「さっきまでの問題は,ずっと同じ数で簡単だった。でも,今度の問題は違う数が混じっているから難しい」


 1・2問目と3問目の問題の違いを的確に指摘することができました。問題のパターンは違いますが,この問題場面も式表現することはできます。

「5+5+5+5+4+5+5=34個」

 


4問目は,1枚のお皿に栗が3個ずつ載った絵です。そのお皿の数は18枚あります。「うわー」という声が子どもからあがります。栗の多さに驚いた声です。

 この問題も,式に書くことはできます。そこで,式のノートに書かせていきます。すると,ノートに式を書く中で次の声が聞こえてきます。

「3がいっぱい」

「式が長い」

「頭がぐちゃぐちゃ」・・・

悲鳴に近い声が聞こえてきました。

栗の数を式にすると,「3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3+3=54個」となります。式が書けたところで,先ほどの悲鳴の原因を尋ねます。


「3を18個も書くのが面倒」

「式の見直しをするのが大変」


 同数累加の式が長くなると,書くこと自体に大変さがあることを子どもたちは実感することができました。子どもたちが,同数累加の式表記に大変さを感じた場面で,かけ算表記を教えます。この問題場面をかけ算表記にすると,「3×18」と一気に短くなります。

 このかけ算表記を使えば,12問目の式もかけ算に直すことができます。一方,3問目の問題は,同数累加の式だけで表すことはできません。従って,子どもたちも「3問目は違う数が混じっているからかけ算にはできない」と考えました。


 最後に,「これはかけ算にできるかな?」と言って,


右のパンの絵を見せます。

 「できない」「同じ数じゃないよ」と当初は声があがります。ところが,「できるよ」という声が聞こえてきます。


1個のパンを2個のお皿にお引っ越しすればかけ算にできる」


 画像をそのまま見たらかけ算場面には見せません。ところが,1個と2個パンを合わせることで,かけ算場面へと変換することができるのです。引っ越しでかけ算を創り出そうとする子どもたちの主体的で柔軟な発想はすばらしいですね

2020年9月27日日曜日

算数プレミアム講座続編 検討中!

 昨日,第1回算数プレミアム講座が開催されました。関西学院大の木下先生をメイン講師に講座を開催されました。参加いただいた先生方,ありがとうございました。

オンライン講座ではありますが,できる限り対面の雰囲気を出そうと工夫をしながら進めています。まだまだ不十分な面もありますが,少しずつ改善していきたいと考えていますので,2回目以降もご期待ください。

さて,算数プレミアム講座は定員を限定しています。そのため,2倍以上のお申し込みをいただいていたため,かなりの先生方にお断りをしていたことが事務局からの連絡で分かりました。

そこで,算数プレミアム講座の第2クールを開催する方向で検討しています。さらに,超プレミアム講座も開催できないか検討しています。決まり次第,本ブログや学校図書のHPで告知していきます。小まめにチェックしていただけたらと考えています!


2020年9月18日金曜日

テープ図はできない!

 2年生の子どもたちに,次の問題を提示します。

「リンゴ狩りに行きました。お父さんは52個とり,花子さんより7個多く取りました。花子さんは,リンゴを何個取りましたか」

 問題文を板書している途中から,「テープ図にできるね」「簡単だね」という声が聞こえてきました。前日も文章問題をテープ図に表す学習を行っています。子どもたちも,その延長線上の学習だと考えています。

 そこで,問題文に合うテープ図作りに取り組ませることにしました。子どもたちがノートに向かってテープ図を描き始めます。ところが,しばらくすると「あれ?」「おかしい」「できない」「難しい」という声が聞こえてきます。簡単にできると考えていたテープ図ですが,いざ,作成をはじめてみるとうまくできないことが見えてきました。

 苦労をしながら,なんとか作りだしたテープ図


は右の通りです。しかし,十分に納得できない表情の子どももいます。


 そこで,次のように子どもたちに投げかけます。

「昨日の色紙の問題は,誰の色紙の問題でしたか?」

 前日の問題は,つぎのものでした。

「お兄さんから色紙を12枚もらったら,色紙は全部で27枚


になりました。色紙ははじめに何枚ありましたか」

 従って,子どもからは「自分」「わたし」と声があがります。

 さらに,次の問いかけを行います。

「昨日の2番目の問題は,誰が空き缶を拾った問題でしたか?」

 この問題はつぎのものでした。

「空き缶を昨日34個拾いました。今日,何個か拾ったら


全部で43個になりました。今日,何個拾いましたか」

この問題も,「自分」「わたし」と声があがります。


 するとここで,子どもたちから声があがります。

「全部1人だ」

「でも,今日の問題は2人だ」

「お父さんと花子さんの2人だから難しいんだ」

 テープ図を作ることに難しさを感じた原因が,テープ図に表す人数にあることへの気付きが生まれてきました。この声をきっかけに,それまでのテープ図の描き方を見直す声があがってきます。

「だったら,2人を別々にしたらいいよ」

「そうしたらわかりやすくなるかも」

 テープ図を2段にする方法は,私から提示します。


「これなら簡単」「わかりやすい」と声が聞こえてきました。2本のテープ図を子どもが使いたくなる場面設定を行うことで,その必要性を実感することができた授業となりました。



2020年9月17日木曜日

テープ図のきまり!

算数の授業では,問題場面をテープ図に表す学習を進めています。先日,次の問題を提示しました。

「お兄さんから色紙を12枚もらったら,色紙は全部で27枚になりました。はじめに色紙は何枚ありましたか」

 この問題文に合うテープ図は右のようになります。


このテープ図から,□を求める式は「27-12」になることが分かります。

 ここまで授業が進んだところで,「おもしろことがある」と声があがってきました。2年生の子どもたちは「おもしろいこと」を見つけることが大好きです。

 さて,「おもしろいこと」とは一体なんでしょうか?

「テープ図の下の全部が□なら,式はたしざんで,上の片方が□なら式はひきざん


 この日に学習した問題は,テープ図の上の部分の片方に(未知数)が位置付いています。このパターンのテープ図から導き出される式は,ひきざんでした。

 一方,前日までに学習したテープ図問題は,右のよう


なタイプでした。テープ図の下の全体量の部分が□になっています。この□を求める式は,たしざんになります。

 これらのテープ図を比較することで,の位置によってテープ図から導き出される式が,たしざんなのかひきざんのかが特定できるという発見です。私も,こんな見方が子どもから生まれてくるとは思いませんでした。子どもの視点は素晴らしいですね。

この発見を聞いた子どもからは,次の声が聞こえてきました。

「本当だ! 他の問題もそうなっている」

「でも,たまたまかもしれないよ・・・」

 

 後者の指摘も大切な声です。ここまでに子どもたちが出会ったテープ図の問題は3問です。子どもから生まれた発見が一般化できると考えるのは早すぎという指摘も一理あります。

 その後,他の問題で子どもの発見を検証していきました。結果は,子どもたちの発見が正しかったことが見えてきました。


 自主学習で,この発見の確からしさを過程でも自主的に検証する子どもが



何人もいました。子どもの学びはつながっていきます。


2020年9月12日土曜日

式のしりとり

子どもたちに,次にように投げかけます。


「2つの数字を選んで,十の位同士のひき算を作ります。大きい数から小さい数を引きます」


 5と3を選んだ場合は,「53-35」の式ができます。この答えは,「18」です。そこで今度は,この答えの1と8を使って式を作ります。「81-18=63」となります。さらに,この「63」を使って「63-36=27」と式を作ることを繰り返していきます。

 ルールを理解した子どもからは,「しりとりの式だ」と素敵な言葉が聞こえてきました。子どもらしいたとえです。


 この計算を続けていくと,右下のように途中で「54-45=9」となります。答えが9になった時点で,「これで終わりだ」と考える子どもが多数いました。

 一方,「十の位を透明な0と考えたら,次の式が90-9と作れる」という声もあがります。「透明な0と考える」という見方は素敵ですね。


 答えの9を,透明な0があると考え「09」とすると,さらに式を続けていくことができます。次の式は,「90-9」になります。


今度は「90-9=81」の答えが出た子どもから,「おもしろいことがある」と声があがります。おもしろいことなんてあるのでしょうか?


81の次の式は81-18だから戻っている」


「ずっと計算が続く」


このルールで計算を行うと,確かに同じ計算が繰り返されていきます。この式の繰り返しに子どもたちは,おもしろさを感じたのです。


しかし,これは3と5の数字のときだけの偶然かもしれません。子どもたちも,この時点では式が繰り返されることに対しては半信半疑です。

そこで,他の数字で実験を行うことにしました。


 その結果,右のように8と9,4と1でも子ど


もたちが見つけたきまりが当てはまることが確かめられました。
するとさらに,次の声も聞こえてきます。

「最初の式は抜いて,式が繰り返している」


「繰り返される式は5つある」

 3種類の組み合わせを比較することで見えてきた,新たな発見です。


 計算練習をしながら,次々と新しい発見が生まれた1時間となりました。

 この実践は,田中博史先生の「カプレカ数」の実践を参考にしています。

2020年9月10日木曜日

式の数の秘密

子どもたちに次のように投げかけます。

の中に0〜9の数を入れて式を完成させよう」


 右の式のの中に,数字を入れて式を完成させます。問題を見た当初は,これまでに取り組んできた虫食い問題の延長戦上だと子どもたちは考えていました。従って,「簡単にできる」と多くの子どもが考えています。


 しばらくすると,「できました」と声があがります。一方,簡単だと考えていたのにもかかわらず「できない」と悩んでいる子どももいます。



 「できました」と声をあげた子どもたちは,左の式を発表します。ところが,この式では0を2回使っています。これまでの虫食い問題では,同じ数字は1回しか使えないというルールでした。このルールのままでは,この計算は成立しません。

 そこで,今回は同じ数字を2回使ってもいいことにします。

 

 次に1を2に変更しての数を考えます。「これも簡単」と声をあげながら子どもたちは計算を始めます。

 しばらくすると,「式は2つある」と声があがります。本当に式が2つあるのか確かめます。その結果,右の2つの式があることが確認できました。

 するとここで「おもしろいことがある」と声


があがります。おもしろいことなどあるのでしょうか・・・。


「最初の式は1があって,式が1つ」

「次の式には2があって,式が2つ」

「問題の数字とできる式の数が同じ」

「だったら,式に3があれば,式が3つできる」

「式に4があれば,式が4つできる」


 問題の数字と式の種類数に関係があるという発見が生まれてきました。

 さて,このきまりは本当でしょうか,それとも偶然でしょうか。半信半疑の子どももいます。そこで,3を入れて関係のきまりを確かめます。



 結果は,左のように3つの式ができました。きまりは正しいといえそうです。その後,数字を自由に決めてきまりを確かめます。

「本当に9は9こあった」

「4は4こあった。すげー」

 このように計算を進める中で,きまりの確からしさを実感した喜びの声があがってきました。


 子どもの手できまりの正しさを確認できることは,算数の学びの愉しさにつながっていきます。

2020年9月9日水曜日

2番目に答えが大きい式は?

前回の子どもたちからの「でもさあ,答えが2番目に


大きい式の問題だったら難しくなりそう」の疑問の声を受けて,次時の算数の授業がスタートしました。


 1□□□□の中に2,3,4,5の数字を1つずつ入れます。答えが最大になる式は,「154−23=131」でした。

 

 今日は,答えが2番目に大きくなる式を探します。

 子どもたちがノートに計算を進めていきます。しばらくすると,「できました」「122だ」「式が2つある」などの声が聞こえてきました。子どもたちが2番目に大きい答えの式と考えたのは,バラバラでした。答えは,「122」「113」「111」「87」「129」の5種類ありました。


最も多くの子どもが考えたのが,答えが「122」の式でした。


その式は右の2通りありました。

そこで,この式を考えた子どもたちの気持ちを読解させます。

「昨日は,ひく数の23を1番小さい数にしたでしょ。2と3を入れ替えたら32でしょ。これが2番目に小さい数になる」(左式)

「2番目に小さい数をひけば,答えが2番目に大きくなる」


 子どもたちは,この説明に納得しています。子どもたちの視点は,ひく数のみに限定されています。使っている数字カードや引かれ数にまで視点の範囲を広げて見ることは,2年生にはなかなか難しいようです。


 そこで,次のように子どもに確認します。

「一番小さい数が23。2番目に小さい数が32でいいんだね」

 この投げかけで,子どもたちから気付きの声があがります。

「違う,もっと小さい数がある」

2425はもっと小さい」



 この声をきっかけに,「122よりも大きい答えの式がありそうだ」と子どもたちの意識が変わります。そこで生まれてきたのが,左の式です。


 ところが,「どうやって,そんな式を思いつくの?」と疑問の声があがります。今度は,この疑問を解消していきます。

「引かれる数の154の次に小さい数は153。残る数字は2と4。これで引く数を作ると,2442。ひく数が小さい方が答えが大きくなる」

「だから,24を引いた方が答えが大きくなる」

 

 子どもたちは当初は感覚的に数字の操作を行い式を作っていました。ところが,友だちの疑問と向き合う中から,数に対する感覚的な見方が論理的な見方へとレベルアップしていきました。

答えが○○になる式を作ろう!

算数の時間,次のように子どもたちに投げかけます。

「2・3・4・5の数字を1回ずつ使って,答えが一番大きくなる式を作ろう」


右のの中に,4つの数字を当てはめて式を作ります。

(この問題は「アイテム」から引用したものです)

問題を見た子どもたちからは,「簡単」「式は1つしかない」「繰り下がりはないね」などの声が聞こえてきました。 

 

計算を終えた子どもから,「わかった,答えは131だ」という声がたくさん聞こえてきます。子どもたちが見つけた,答えが一番大きくなる式は,「154-23=131」でした。これ以上の答えになる式は見つかりませんでした。「154-23=131」が答え最大の式で間違いなさそうです。


では,子どもたちはどのようにしてこの式を見つけたのでしょうか?


「答えを大きくしたいから,ひかれる数をできるだけ大きな数にする。それは154

「反対に,ひく数は一番小さい数にする。それは23


ひかれる数とひく数の大きさの関係を指摘する声です。しかし,この声に意味を理解することは,2年生の子どもには簡単ではありません。そのとき生まれてきたのが,S子の次の説明です。


「例えば,0.1.1の3つの数字の式なら,10-1=9が答えが一番大きいでしょ。引かれる数を一番大きくして,ひく数を一番小さくすれば答えは一番大きくなる」


 「0.1.1」のシンプルな数字を例にした説明で,答えが最大になる式の秘密の理解が一気に進みました。こんな例題が2年生から生まれるのは素晴らしいですね。

 

 秘密が見えると,子どもからは「分かった,今度は答えが一番小さい計算だ」と声があがります。この発想が生まれてくるのも素敵です。子どもたちが学びを深めていった瞬間だとも言えます。


 早速,子どもたちがノートに式を探していきます。子どもたちが見つけた式は,「123-54=69」です。これが答え最小の式で間違いなさそうです。

 

 子どもたちは,この式を見つける秘密を語り出します。

「さっきの反対だよ。ひかれる数を今度は,一番小さくする」

「ひく数は,一番大きくする」

「さっきの5423を反対にすればいいんだよ」



 この問題でも,子どもたちは答えを見つけるために秘密を見つけることができました。すると今度は,こんな声が聞こえてきます。


「でもさあ,答えが2番目に大きい式の問題だったら難しくなりそう」

「そうかなあ? 2番目だってきまりを使って簡単じゃないかな?」


 これまでは1番目シリーズの式探しをしてきました。その結果を踏まえて,上記の声が生まれてきたのです。問題場面を拡張していく声が,子どもから生まれてくることも子ども自身が学びを深めていく姿だといえます。こんな視点が子どもから生まれてくるのも,本当に素敵ですね。

2020年9月2日水曜日

繰り下がりは1回? 2回?

2年生の大きな数のひきざんの一コマです。


「難しい度アップアップ問題」と命名されたひかれる数の十の位が0のひきざんに取り組みました。右のような「106-59」の計算をノートに行います。


答えが47と求められたあとのことです。子どもから次の声があがってきます。


「繰り下がりは2回だったね」

「えっ? 1回でしょ」

「違うよ。2回だよ」

 

 大人が考えると,繰り下がりは2回に見えます。ところが半数ほどの子どもたちは,繰り下がりは1回だと考えました。子どもたちの論理を予想できるでしょうか。

 

「繰り下がりは1回。だって,百の位から十の位と一の位に10をプレゼントしたんだから,1回」

「そうじゃないよ。借りているのは1010の2個だから2回」

「そうだよ。百の位から十の位に100をプレゼントしたでしょ。これは1010個。次に,その中の1個の10を一の位にプレゼントしたでしょ。百の位から十の位で1回,十の位から一の位で1回だから2回だよ」

「やっぱり1回だよ。だって,借りてきた元は百の位でしょ。元は百の位の1個なんだから1回だよ」

 

 これまで子どもたちが学習してきた繰り下がり2回の計算は,


右のようなタイプです。これは一の位が引けないので十の位から10を借ります。十の位も引けないので百の位からも10を借ります。借りる元が十の位と百の位と2カ所あります。


ところが今回の問題は,元々の借りる先は百の位の1カ所です。そこから十の位に一旦繰り下げ,そこからさらに一の位に又貸しをする形になります。これが繰り下がり1回と考える子どもたちの論理です。借金で例えると,借りた先は百の位だけで,十の位は単に橋渡しをしただけの存在ということになります。

 


 10を借りてきた元々の場所の数で考えたら1カ所,これが1回と考える論理の根拠です。一方,繰り下がりの手続きの回数で見たら,2回の手続きを行っています。これが2回と考える論理の根拠です。

両者の言葉の違いから,論理の違いが明確になった授業となりました。