2023年5月30日火曜日

図形の構成要素に着目する

 子どもたちに,「音だけで形を当てよう」と投げかけます。直方体・六角柱・円柱・球の立体を提示し,この中のどれか1つを箱の中で転がすことを告げます。転がったときの音で,箱の中の立体を当てるゲームです。

1問目,立体を転がします。円柱・球と考える子どももいましたが,直方体・六角柱と考える子どももいました。

「ポンポンと音がしたからほそまる」

「どんという壁にぶつかる音がしたからほそまる」

「ぼんぼんという音だから,ながしかくだよ」

子どもたちの聞こえた音が,人様々でした。この時点では,子どもの考えはズレが起きたままでした。そこで,作戦変更。第2問を先に行うことにしました。

2問目の立体を転がします。これには「ながしかくだ」という声が多数聞こえてきました。理由を尋ねます。

「ドンが聞こえたから」

「ドンが4回聞こえたよ」

「角が4個あるから,どんが4回聞こえる」

「角は上と下にある」

「ろっかくだったら,角が6個だからドンは6回聞こえる」

「ろっかくは平らが6個あるから,6回ドンが聞こえる」

「ながしかくは,平らが4個。ドンが4回だから,ながしかく」

子どもたちは,音が聞こえた回数と角(頂点・辺)・面の数を対応させて考えることができました。

この後,もう一度箱の中の立体を転がします。「ドン」が4回聞こえます。従って,箱の中にあったのは直方体(ながしかく)であることが分かりました。

その後,1問目に戻ります。再度,立体を転がします。すると今度は「ほそまるだ」という声が一斉に聞こえてきます。

「すー,どんと聞こえた」

「すーは,ほそまるの丸いところが転がる音」

「丸いからすべる」

「ボールは軽いから軽い音になる」

「ドンは壁にぶつかる音」

子どもたちの予想通り,箱の中にあったのは円柱(ほそまる)です。

音をたよりに,立体の構成要素とその数に着目していく1年生の授業風景でした。


2023年5月25日木曜日

高いタワーを作ろう


 子どもたちが持ってきたお菓子の空き箱と,学校にある立体ブロックを使って「高いタワーを作ろう」と子どもたちに投げかけます。

5〜6人のチームで空き箱やブロックを使って,高いタワーを作っていきます。ブロックの中には半球体・球体も意図的に混ぜています。子どもたちが,これらをどのように使うのかを見ていました。

高いタワーが完成したあと,半球体を巡る子どもたちのやりとりを紹介しました。

「半分丸(半球)のブロックを使おうとしていたら,『それ使っちゃだめだよ』とK君が言っていました。この気持ちは分かりますか?」

それに対する子どもたちの反応です。

「だって丸いもん」

「上に箱を置くと,落ちるよ」

「一番上に置くならいいけど」

面が球体の立体をタワー作りの途中に入れることができない理由を,子どもたちなりの言葉で表現することができました。子どもたちが「ミニトマト」と表現していた球体も「置いたら転がる」という理由で,途中には使えないことが明らかとなりました。

次に,対応する2つの底面が平らな「三角柱」「四角柱」「円柱」を順次提示し,「これは使った?」と尋ねます。いずれも,たくさん使ったことが分かりました。そこで,「これはなんでたくさん使ったの?」と尋ねます。

「それを使うと,高くなる」

「崩れにくいからだよ」

「でも,丸のやつ(円柱)は横向きに置いたらだめだよ。転がっちゃうから」

両底面が平らになることを指摘してもらいたいと考えていましたが,難しいことが分かりました。そこで,「こんなブロックもあるんだけどさあ。丸いブロックで・・・」と言って円錐を提示します。これには一斉に声があがります。

「それはだめだよ」

「上がとんがっているから積めない」

「上に置いたら,落っこちる」

「上に置ける」と主張する強者もいましたが,実際に実験を行うとできませんでした。その後も「四角錐」「三角錐」を提示します。異質の錐体と比較することで,子どもたちは「上が平らじゃないとだめだよ」「平らなら高く積める」と,面の形に視点を当てた声を引き出すことができました。

1年生の数学的な見方を引き出すためには,引き出したい見方に該当する対象と,それとは異質な対象を提示することも必要なのかもしれませんね。

2023年5月23日火曜日

増加と合併

 「どんなお話ですか?」と子どもたちに投げかけます。この段階で,「合わせるたしざんかな」という声とともに,両手で合わせる動きも見えてきました。問題に前向きな姿が見えてきました。

右の金魚の画像を提示します。この段階で「合わせるたしざんじゃないぞ」と声があがります。前回の合併の問題での金魚の絵との違いに気付いたのです。よい気付きが生まれてきました。

次に小さい水槽に入っていた2匹の金魚が大きい水槽に入る画像を提示します。ここから様々な声が聞こえてきました。

「5匹になった」

「3+2だ」

「合わせて5匹だ」

「合わせて? 増やしたんじゃない?」

前回までに学習したのは,合併場面です。しかし,今回は増加場面です。答えだけ見ると,合併も増加も同じ答えになるように問題を設定しています。しかし,その増え方が前回とは違うのではないかという違和感を抱いた声があがってきました。しかし,この段階ではこの違和感はすぐには共有されません。「増やした」という言葉そのものの意味も十分に理解できないのがこの段階の1年生です。そこで,「増やした」という言葉を読解していきます。

ここで役だったのが,ジェスチャーでした。「合わせる」は万歳した両手が,真ん中でくっつく動きです。一方,「増やした」は左手は伸ばしたまま動かず,右手だけが左手に向かって動いていきます。片手だけが動くのです。このようにジェスチャー表現にすることで,「合わせる」「増やした」の言葉の違いを理解することができました。

また,絵にした場合の表現も「合わせた」は矢印が2つで「増やした」は矢印が1つになる違いにも気が付くことができました。

今回の「増やした」お話を,を使って絵にも表現してみました。ここでも,矢印の数と向きが「増加」の場合とは異なることが明らかとなりました。

「合併」と「増加」の違いを,体を使ったジェスチャー表現を活用することで明確にしていくことができました。


2023年5月19日金曜日

練習問題に仕掛け

 合併場面のたし算の学習を進めています。前半は問題場面を簡略な図や式に表現しました。後半は,たし算の練習問題に取り組みました。

次の問題を順に提示します。

③ 2+2=4

④ 1+4=5

⑤ 3+3=6

⑥ 5+2=7

実は,④や⑤の後で子どもが動き出すことを期待していましたが,ここではまだそれはありませんでした。しかし,⑥の答えが見えた後で,「次は8」と声があがりました。しかし,その声は一部です。

そこで,「次は8」と考えた気持ちを読解していきます。

「4,5,6,7だから次は8」

「4,5,6,7,8になるから」

「時計(文字盤)も同じになっている。4,5,6,7で次は8になってる」

数列の順を根拠に,7の次は8になることを主張することができました。たし算の学習をしているので,「1ずつ増える」という声も生まれることを期待しましたが,ここでは生まれませんでした・・・。数列を根拠とする考えは,子どもにとっては当たり前過ぎるのかもしれません。当たり前過ぎることを別の言葉で表現するのは,1年生には難しいのかもしれませんね。ここはこれから鍛えていきます。

読解後,⑦の問題を板書します。「1+」で板書を止めます。子どもからは「7が出て欲しい」と声があがります。「7なら答えが8になる」とその理由が説明されます。一部の情報から,その先を予想することもよき見方です。

⑦ 1+7=8

「やっぱり」「やったー」と喜びの声があがります。ここまでくると,子どもは一気に動き出します。

「次は9だ」

「その次は10だ」

先の問題を予想する声が続きます。⑧⑨の問題も「たされる数」だけの板書で,出てほしい「たす数」を語る声があがってきました。1年生の子どもは,分刻みで学習したことを着実に活用していくことができますね。素直さと柔軟性がすごいですねえ。

練習問題の答えの構成を意図的に仕掛けを行いました。このような仕掛けを通して,価値ある見方・考え方を少しずつ鍛えています。



2023年5月18日木曜日

お話を図に描く

 「絵に合うお話を作ろう」

このように子どもたちに投げかけます。

最初に見せたのは,右のカニの画像が変化していくものでした。ここから子どもたちは,次のようなお話を作りました。

「赤いカニが4匹,青いカニが3匹います。合わせて何匹ですか」

カニの画像を提示する前に,子どもからは「たし算のお話かなあ?」と声があがりました。前回の学習を生かしたよい声です。そこで,カニのお話がたし算にできるのかを尋ねます。

「合わせるからたし算だよ」

「4匹と3匹を合わせるから」といいながら,両手を合わせるジェスチャーをする姿も見えました。これも前回の学習で見られた姿でした。それを着実に活用していることが分かります。

カニのお話が「4+3=7」と表現できることを確認します。式をノートに書かせた後,次のように話をします。

「お話を忘れないように,絵もノートに描きましょう」

すると,これに対して「えー!」という声があがります。そこで「なんで『えー』なの?気持ちは分かる?」と尋ねます。

「カニは難しい」

「大変」

「だったら,にしたらいいよ」

「赤いと青いを描いたら,すぐできるよ」

図を簡略化するよいアイディアが生まれてきました。これなら,簡単にカニのお話を絵(図)としてノートに描けます。問題場面を簡略化するアイディアは,算数では大切な見方です。このアイディアを引き出すために,意図的に描き写すことが難しいカニを教材として選択してみました。見事,この意図は的中しました。

さて,ノートにカニをにして描かせました。ところが,その表現方法は同じではありませんでした。

絵で見た通りに,赤いカニを2段で描く子どもが多くいました。一方,4匹のカニを横1列に描く子どももいました。そこで,「横にカニのを描いた気持ちは分かる?」と尋ねます。

「横だと数えやすい」

「ノートの下を使わないからいい」

数えやすさだけではなく,ノートの節約ができるという視点が生まれたのは驚きでした。

その後,足が10本あるイカの問題も提示します。ここでも子どもたちは,イカの絵をに置き換えて表現することができていました。


2023年5月16日火曜日

どんなお話ですか?

子どもたちに「どんなお話ですか」と尋ね,金魚が左右の小さな水槽にいる画像を提示します。先ずは,この画像をお話にします。
「金魚が左に3匹います。右に2匹います」
このようなお話ができました。
次に,この金魚が大きな水槽に入る画像を提示します。この画像も,お話にします。
「水槽が小さすぎて。大きい水槽に入れます。3匹と2匹を合わせて5匹なりました」
概ね,このようなお話が子どもから生まれてきました。前記のお話には「合わせて」という言葉が入っています。この言葉を使ってお話を作っている子どもは僅かでした。
そこで,「合わせてってなに?」と子どもに尋ねます。すると,ある子どもが両手を挙げ,その左右の手を真ん中で合わせるジェスチャーをしていました。その動きを,全員に見てもらうことにしました。この動きの意味を読解していきます。
「左手に3があって,右手に2がある。それが真ん中で合わさるということ」
「真ん中で5匹になる」
「全部で5匹になる」
「合体するってこと」
「合わせる」という言葉の意味を,ジェスチャーを使うことで共有化していきました。このような動きがあると,加法の「合併」の意味をよりよく理解していくことができます。

その後,たし算の式表現などを教えていきます。たし算の入り口の授業でした。


 

2023年5月15日月曜日

誰がいる?

 「誰がいるでしょうか」

このように投げかけ,動物が並んだ絵を提示します。

「右から4番目」

全員が「かえる」と答えます。さらに,次の声が生まれてきます。

「『め』がついているから1匹だけだよ」

前回の学習を踏まえた素晴らしい声です。

2問目は「左から2匹」です。この問題は,答えにズレが生まれました。

「犬とコアラ」

「コアラ」

果たして正しい動物はどれでしょうか。

「左から2匹目ならコアラ」

「目だから1匹だけだ」

「でも,先生は左から2匹と言った。だから,犬とコアラ」

2匹のあとに「め」が付く場合と付かない場合の違いを,しっかりと認識することができています。ここが,本時のポイントでした。2つの言い方の違いは,しっかりと認識できていました。

その後も,同様に問題を出していきます。ところが,答えにズレが生まれました。こちらは正しく問題を聞き取れないことが問題でした。正しく聞き取ることは,1年生では難しいのですね。





2023年5月13日土曜日

何番目?

子どもたちに「どこにいるでしょう」となげかけ,蛇が一部だけ隠れた画像を提示します。一斉に子どもから,声があがります。
「左から3番目」
「右から5番目」
基準となる位置を意識した声が生まれてきました。

次に,パンダが2匹隠れた画像を提示します。今度は,次の声が聞こえてきました。
「左から1番目と2番目だ」
蛇の問題での説明をもとにした声です。この説明で,パンダの位置を正しく表現することができます。
一方,次の声も聞こえてきました。
「違うよ。『め』は1匹だけだよ」
この声を共有するのは,時間がかかりましたがていねいに進めます。
「1番目は,パンダ1匹。2番目もパンダ1匹」
「目」が付く説明では,1匹分のパンダしか示せないということです。
「だから,左から2番と言えばいい」
「左から2番」という説明は厳密には正しい表現ではありませんが,この気持ちもクラス全体で共有していきます。「左から2ますにパンダがいる」という意味です。これなら,一度に2匹分の説明ができます。


次の問題では,犬を3匹提示しました。今度は,先ほどの説明を生かした声があがってきました。
「右から3番」
これなら一気に説明ができます。直前の学びを生かせる子どもたちの姿に,びっくりです。

その後,コアラを提示します。これには「真ん中」と声があがります。「真ん中ってなに?」の私の問いかけに生まれてきたのが,次の声です。
「3個と3個の間」
左に3ます,右に3ます,その間にはさまれた場所が真ん中という説明です。数字を使ってわかりやすく説明ができました。


 

2023年5月9日火曜日

じゃんけんおはじきゲットゲーム

 「じゃんけんおはじきゲットゲームをしよう」

このように子どもたちに投げかけます。クラスを2チームに分けます。代表の子どもが,順にじゃんけんをします。パーで勝つと3個,チョキで勝つと2個,グーで勝つと1個のおはじきをゲットできるゲームです。

1組目の代表の子どもが,じゃんけんをします。月チームがパーで勝ちました。おはじき3個ゲットです。私は,勝った子どもが3個のおはじきをどのように並べるのかを見ていました。その子は,横に3個並べました。そこで,次のように尋ねます。

「横に並べた気持ちは分かる?」

子どもたちが答えます。

「わかりやすいから」

「縦もあるけど,横がわかりやすい」

「次も勝ったとき,その下に横に貼っていくとわかりやすい」

子どもの中から,2回目以降のじゃんけんの話題が出てきました。場面を拡張する見方が,1年生のこの段階でも生まれてきたことにびっくりでした。そこで,2回目以降のおはじきを貼る位置を,改めて子どもたちに尋ねます。

「何回勝ったかわかりやすい」

「なに(じゃんけん)で勝ったかわかる」

下に並べていくことのメリットを捉えているようでした。

その後,じゃんけんを続けます。子どもたちは,前述の話題の通り,勝つ度に下に下にとおはじきを分けて貼っていきました。

1回戦終了時点では,板書を見るだけで星チーム2勝,月チーム8勝ということが一目瞭然となりました。

この授業では,使えるおはじきがなくなった時点で,その数を「0」と教えることが目的の一つでしたが,子どもたちはそれを上回る数の並べ方についても発想を広げていくことができました。



2023年5月8日月曜日

数の列車

 子どもたちに次のように投げかけます。

「数の列車のはいくつですか」

数字が書かれた列車の車両が順に画面に提示されることを説明します。最初に提示したのは,列車の左端車両の「1」です。この提示だけで,子どもから様々な声が聞こえてきました。

「次は2だ。1,2,3,4だから」

「3かも。1個飛ばしで,1・3」

「だったら,4や5もあるよ」

「1」という1つの情報だけで,子どもは実に様々な可能性のある数字を説明してきました。これまでの数字の学習の土台を確実に生かした発想です。

しかし,「1」だけでは次の数字の情報は確定できません。するとここで,次の声が聞こえてきました。

「次の列車も最後まで見ないと,どの数字か決められないよ」

1年生なりの言葉でしたが,数字の決定には情報が不足していることへの指摘です。そこで,次の車両を提示していきます。

2両目は「」です。これでは決められません。そこで,さらに車両を提示します。次は「3」です。これで多くの子どもたちは「やっぱり2だ」「1,2,3,4だ」と考えます。一方,別の数字をイメージする子どももいました。

「4。だって,1と3を合わせると4になる」

子どもの発想は柔軟ですね。左右の数字の和が真ん中に入ると考えたのです。この論理も納得できます。こうなると,さらに車両を提示しないと,空欄の数字は決られません。

4両目は「」,5両目は「5」,6両目は「6」です。これでほとんどの子どもたちは,「は2と4だ」と考えました。数字が順番に増えていくという論理をもとにした考えです。

一方,先ほどの左右の合計数の和が真ん中に入る考えも,この場合は成立します。「1④3⑧56」の並びだからです。この立場に立てば,6の右隣が1だとすれば,「5⑥1」となるので,左右合計の考え方も成立します。

この後も,様々な数の列車問題を提示します。一気にすべての車両を提示するのでなく,1両ずつ車両数字を提示することで,その先を自然に予測する声を引き出すことができました。その中で,子どもたちの発想の柔軟さにびっくりした時間となりました。

ただし,数字を決めた論理を語ることは,1年生にはかなり難しいですね。友だちが納得できる理由を論理的に説明することは,この段階ではかなりハードルが高いことも見えてきました。様々なアプローチで少しずつ説明力を高めることが大切ですね。




2023年5月3日水曜日

1年生と具体的事例

 前回のブログで,1~10の数字カードを使って大きい数ゲームを紹介しました。

数字カードの7が引かれたとき,「勝った」「だって,あと3個だから」という声が聞こえてきました。子どもたちが考える「3」について,その後,話題にしていきました。

「3ってなに?」(私)

「あと3こあるってこと」

「あと3の3ってなに?」(私)

「だから,1,2,3の3」

うーん,彼らは3そのものの意味を語り始めるのです。7以降の数字が3個あることの中身,すなわち具体例を尋ねているのです。ところが子どものこの瞬間の思考は,その話題から離れて,単なる数字の3の意味へと移っていることが分かります。数字の3そのものの意味と,7以降の数字が3個あることを区別して考えることにハードルがあることが見えてきました。1年生のこの段階での思考は,似て非なるものを明確に区別して考えることが難しいことが見えてきます。どの時期から,多くの子どもがこの区別を明確にできるのか,これから探りながら授業を進めていきたいと考えていきます。

毎日が発見の連続の1年生です。学習内容そのものは,高学年のそれと比較したら簡単です。しかし,その背後にある数学的な見方・考え方を培っていくことは,高学年のそれよりもかなり難しいと言えるのかもしれません。だからこそ,教師が1年生の数学的な見方・考え方の表出場面を細やかにキャッチして共有していくことや,それを引き出す意図的な働きかけを継続する必要があると言えます。

さて,前述の授業のその後です。子どもからは,次の声が生まれてきました。

「だから,8,9,10の3」

この子は指を折りながら7以降の数字が3個あることを主張しました。「8,9,10」と「3」を結び付けたのです。この姿を,全員に見せました。3の意味を拡張した瞬間とも言えます。

1年生の数学的な見方・考え方は,少しずつ成長していきます。

2023年5月2日火曜日

大きい方が勝ちゲーム!

 「大きい方が勝ちゲームをしよう」

子どもたちに投げかけます。教室を2チームに分けます。代表の子どもが1人ずつ順に出てきて,裏に数字が書かれたカードを1枚ずつ引きます。カードに書かれた数字の大きい方が勝ちというゲームです。数字カードに書かれた数字は,1〜10です。それぞれ1枚ずつしかありません。

代表の子どもたちが,カードを引いていきます。数字が現れる度に,子どもから様々なつぶやきの声が聞こえてきます。

最初に7が引かれたときには,次の声が聞こえてきました。

「いい数字」

「7は大きい数字」

そこで,「大きい数字ってどういうこと?」と尋ねます。

「あとちょっとで10」

「あと3ということ」

「1,2,3あるってこと」

「あと3」の具体例を説明することが,1年生にはハードルが高いようです。すぐにはその具体例が生まれてきません。

「8,9,10があるってこと」

この説明が生まれるまで,少し時間がかかりました。

この他にも,5が引かれたときには「いい数字」「10の半分」,9と8が引かれたときには「1ちがい」などの声が聞こえてきました。

単にゲームを楽しむのではなく,そのゲーム中の生まれてくる声をキャッチし,共有していくことで数の感覚を培う時間となりました。


2023年5月1日月曜日

10はあるかな?

 本実践は,板書シリーズ1年上(東洋館出版社)の教材を活用したのものです。

「子どもたちに10はあるかな」と尋ね,右の25ますの数表を提示します。

子どもからは「10はない」と声があがります。10そのものは,表にはありません。しかし,すぐに「9と1で10ができるよ」と声があがります。複数の数字を組み合わせることで,10ができるという気付きです。この視点に立てば,もっとたくさんの10を作ることができそうです。

4つの事例を全体で共有した後は,右と同じ表を配布し各自で10を探します。

その後,別の表でも10探しを行います。2つの数の組み合わせだけでなく,3つや4つの数の組み合わせで10を見つける子どももいました。

その後,「みんなも自分で問題を作ることができるかな?」と投げかけます。ノートに,25ますの数表を自作させることにしました。子どもたちは,ランダムに1〜9の数字をますに記入していきました。

その後,自分の問題を自分で解いていきました。すぐに10を見つけられる子どももいれば,なかなか10が見つけられずに苦労をしている子どももいました。偶然かもしれませんが,右下に5が集まり,簡単に10を作れる子どももいました。

問題の自作は板書シリーズにはない展開です。1年生の子どもでも,自作できますねえ。