2017年7月23日日曜日

和歌山の子どもたちと偶数・奇数を実験する

先日,和歌山の5年生の子どもたちに「偶数・奇数」の授業を行いました。

「1,2,3,4,5の数字の間に,+か−を入れて計算しよう」

このように投げかけます。まずは,答えが一番大きくなる式を考えさせました。これは簡単です。

1+2+3+4+5=15

最大値は15です。ここで子どもたちに,答えは他にもあるか予想させました。子どもたちは,1~15までの答えの式を作ることができると考えました。そこで,子どもたちに実験をさせます。

子どもたちは,ノートに計算を進めていきます。やがて,「3ができた」「13ができた」などの声が聞こえます。できた式を黒板に板書させます。

最終的に答えを見つけれられた計算は,1,3,5,7,9,11,13,15でした。この結果から,子どもたちは「偶数の答えはない」「奇数の答えだけがある」ことに気づいてきました。

この発見から,子どもたちの新たな追究が始まります。
「(  )を使う」
「かけ算を使えば,偶数の答えができるんじゃないかな」
「数字を全部偶数に変えたら,偶数の答えができるんじゃないかな」

子どもたちは,計算の条件を変えることで偶数の答えを見つけることができると考えました。そこで,上記の3つの方法の中で,自分が実験してみたい方法を選択させました。

子どもたちは,自分が選択した方法を使って計算を進めていきます。やがて,「偶数の答えができた」という声があちらこちらからあがってきました。

子ども自身が条件を変更し,しかも,その条件変更方法を自分で選択することで偶数の答えになる式を作ることができました。このような追究の姿こそ,「深い学び」と言えるでしょう。和歌山の元気でかわいい子どもたちと愉しく1時間を過ごすことができました。

2017年7月19日水曜日

速さの平均?

6年生「速さ」の学習の終盤に,次の問題を子どもたちに提示します。

45㎞離れた町まで車で往復しました。行きは時速30㎞で走り,帰りは時速50㎞で走りました。往復の平均時奧は何㎞ですか」

 問題に出会った子どもたちは,「こんなの簡単」と自信満々でした。子どもたちのノートには次の式が書かれていました。

305080 80÷2=40 答え 40㎞」
 
 この式を板書します。式を見つめたほとんどの子どもたちは,「当たり前」という表情をしています。「だって,時速30㎞と50㎞なんだから,合計して2でわれば平均だよ」と考えています。

 ところが,「違う」という声があがります。しかし,「なにが違うの?」と声があがります。2つの時速を合計して2でわることに疑問を呈すること自体が不可解なのです。
この声に対して,「違う」という違和感をもつ子どもたちが主張します。

「時速30㎞は長い時間がかかる。50㎞は短い時間で済む。時速だけじゃなくて,時間もバラバラになっている。だから,そのまま平均にできない」
「時速30㎞は1時間で30㎞進む。時速50㎞では1時間で50㎞進む。さっきの計算では,進む距離が違っているのに,そのまま時速をたして2でわってはだめ」

 最初の式に違和感をもった子どもたちの説明で,少しずつその違和感が共有されていきます。その後,テストの平均の話題が出てきました。次のような説明です。
「これってテストの点数と同じだよ」
200人で平均点80点のテストと,2人で平均点40点のテストは平均60点じゃない」
「人数も平均点も違う。人数が同じならいいけど」
「そうか! 時速とかかった時間の2つが違うからそのままたして2でわるのは変なんだ」
 
 テストの例示は,イメージがつきやすかったようです。子どもたちの理解が,一気に深まりました。


 正しくは次のようになります。
45÷301.5 45÷500.9 1.50.92.4 90÷2.437.5 答え 37.5㎞」


 難しい問題場面でしたが,シンプルな例とつなげて考えることで違和感の原因を突き止めることができた1時間でした。

2017年7月8日土曜日

速さを比べるには?

速さの学習の冒頭で,次のように子どもたちに投げかけます。
「K君とチワワ,走るのが速いのはどちらでしょう」

もちろん,これだけではわかりません。そこで,両者が走る映像を提示します。ただし,K君は普通の再生速度の映像を提示します。一方,チワワはスロー再生映像を提示します。当然ですが,これでは速さの比較はできません。子どもからは,「走った距離と時間を教えてほしい」と声があがります。

そこで,この2つの情報を教えます。
K君 41mを6.4秒    チワワ 31mを5.2

走る距離も違えばタイムも違います。そこで子どもから生まれてきたのが,「基準を揃える」で考えでした。子どもたちが考えた基準は「1秒当たりに揃える」「1m当たりに揃える」「距離の最小公倍数に揃える」の3通りでした。いずれの方法でも,K君が速いことが分かりました。
 ところが,この学習を進めているときに「もっと人数が増えたら公倍数は面倒になる」「1m当たりで比べると,差があまりない」という声があがりました。
公倍数に揃えると1271mになります。これだけでも十分に大きすぎる数値です。また,1m当たりで比べると,K君は約0.2秒,チワワは約0.2秒となります。四捨五入するとどちらも0.2秒となります。これでは差がないことになります。1秒あたりで比較すると,K君は約6.4m,チワワは約5.9mです。こちらは明らかに差があります。
 K君とチワワの速さの比較では,1秒あたりに揃える比べ方がわかりやすいことが見えてきました。ところが子どもたちは,「1mあたりの比べ方もいいよ」「公倍数だっていいんじゃない」と考える子どもたちもいました。

そこで,今度は全員で走ることにしました。今度は子どもたちが自分で走る距離を決めます。走る時間も,班でお互いに測定しました。走る距離は3m,5m,7m,13m,17m,19m,23m,29m,31mとバラバラです。実際にグラウンドで測定します。

 測定を終えた班から,自分で決めた基準で計算を始め 。しばらくすると5班の子どもから「全部0.2になる」と声があがります。この声の対象となったデータは次の通りでした。


S君  29m 5.5秒
N君  19m 4.2秒
Dさん 31m 5.4秒

この声の意味を全員で共有します。
「1m当たりを基準にすると全部同じになる」
「四捨五入すると,3人とも0.2秒になるから,差がない」
「1秒当たりを基準にすると,四捨五入してもS君5.3m・N君4.5m・Dさん5.7mで差がはっきりするから,1秒を基準にするのがわかりやすい」
「最小公倍数にすると,とても大きい数になる。それに,そのあとの計算も多くなるからめんどう」

 基準を何にするかで,その結果が分かりやすい場合とそうではない場合があることが分かりました。最終的に子どもたちは,「1秒あたりで比べるのが分かりやすい」と考えました。

次の学習指導要領では統計教育が重視されています。統計の考え方を子どもたちが活用する姿を培うことが大切です。今回の学習では,子どもたちが測定した走ったデータを複数比較する中から,より速さを比べやすい方法を見つけていくことができました。統計処理を進める中から,秒速で比較するよさに気づいたともいえます。