2019年5月31日金曜日

1年「かたち」で図形の見方を引き出す

1年生「かたち」単元では,さまざまな立体の特徴を遊びを通して捉えていきます。

次のように投げかけて授業をスタートしました。


「これから形当てゲームをします。箱の中に4つの形の中のどれか1つを隠します。どの形が隠れているのか当てるゲームです」

隠す形を1つずつ提示します。右の図形を見せていきます。取り出すたびに,子どもたちが自分たちなりのネーミングをしていきます。
直方体には「ながしかく」,三角柱には「ながさんかく」,円柱には「ながまる」,球には「ボール」と名前を付けました。

箱の中に形を一つ隠します。これだけでは当てられません。そこで,隠した形を箱の中で転がします。子どもたちは,転がった音だけを聞いて形を当てるのです。

最初に隠したのは三角柱です。箱の中で転がします。実は,転がし方に仕掛けがあります。三角柱を横向きに倒し,1回転分だけ転がします。「がたん」という音がします。転がし終わると,子どもたちが声をあげます。

「ながしかくだ」
「ながさんかくだ」
「『がたんがたん』と音がしたからながさんかくだ」
「ながしかくだと『しゅー』という音だから,ながさんかくだ」
「そうかな。ながしかくだって『がたん』という音だよ」
「ながしかくかながさんかくかのどっちかだよ」

「がたん」という音から,直方体か三角柱の2つの図形に絞ることはできました。しかし,まだ1つには絞りきれません。そこで,もう1度,形を転がすことにしました。
転がし終えた後,「どんな音が聞こえた」と尋ねます。

「がたん がたん」
「がたん がたん がたん」

2人の子どもの説明は微妙に違います。この違いを子どもたちに尋ねます。ここで聞き方の差が生まれます。違いに気づいた子どもが説明します。

「『がたん』が2回と3回だ」
「聞こえたのは『がたん』が3回」
「だから,ながさんかくだよ」

「がたん」の音の回数の違いに気づいたのです。さらに,子どもたちは「ながさんかく」だと判断した理由を説明します。

「だって,1つの平らなところで『がたん』がなる。次の平らなところで『がたん』がなる。裏側の平らなところで『がたん』がなる」
「角が3つあるから,ながさんかく」

面が1回床にぶつかると,「がたん」と音が1回聞こえると考えたのです。さらに,角に目を付けた説明も生まれてきました。
箱の中から,正解のながしかくを取り出すと,子どもたちは大喜びです。

続いて,円柱(ながまる)を転がします。今度は「しゅー」「ごろごろ」という音がします。しかも重さを感じる音です。提示した円柱は積み木です。球はプラスチック製です。この重さの違いを,子どもたちは聞き分けました。

「重たい感じの『しゅー』が聞こえたからながまる」
「『ごろごろ」という重い音だからながまるだよ。ボールは軽いから『ころころ』になるはずだ」

音だけに注目させることで,形の違いに目を向けることができました。さらには,なんと質量の違いにまで目を向けました!びっくりです。

2019年5月29日水曜日

1年生でもどんどん発見する

1年生と10の合成・分解までの学習が終わりました。ブロックを使って,いくつといくつになるのかを考えていきました。この場面でも,子どもたちはたくさんの発見をすることができました。

「階段になっている」
「下から見ても階段になっている」
「上に1で下にも1,上にも2で下にも2。同じ数が上と下にある」
「5と5の同じお友だちがある」
「左は1,2,3・・・と1ずつ大きくなる」
「右は9,8,7・・・よ1ずつ小さくなる」

この他にもたくさんのきまりが生まれてきました。1年生はたくさんのきまりや発見をすることに大きな喜びを感じているようです。

その後,算数のドリルを使い10の合成・分解の復習を行いました。こんな場面でも,きまり発見の喜びを感じた子どもたちは動き出します。
ドリルの10の分解の答えは「9と1」「6と4」「3と7」でした。この答えの確認が終わると,「きまりがあります」「おもしろいことがあります」と声があがります。「おもしろいことなんてドリルにあるの?」と思いましたが,多くの子どもが手をあげています。

「あのね,右の数字が2個飛ばしになっている」
「左も下から見たら,2個飛ばしだ」
「えっ? 2個飛ばしってなに?」

答えの数字カードが同じ数ずつ変化していることを発見したのです。確かにドリルにもおもしろい発見がありました。
しかし,「2個飛ばし」の意味を全員がすぐに理解することは簡単でありませんでした。子どもたちは,数の図を描きながら説明します。1年生でも,友だちがうまく理解できないと図を使いたくなるのですね。

ドリルにもおもしろさを感じる1年生って,すばらしいですね!



2019年5月20日月曜日

第7回教科書活用セミナーのご案内

7月28日(日)に,第7回教科書活用セミナーを開催します。会場は兵庫県西宮市です。

今回のセミナーは,2学期の最大単元かけ算です。かけ算を中心に講座を開催します。1年生~6年生までの2学期の重要単元の勉強会も開催します。
夏休み早々の企画ですが,多くの先生方のご参加をお待ちしています。

詳細は以下をご覧ください。また,申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://kokucheese.com/event/index/566835/


算数教科書活用セミナー・第7回(西宮大会) 

【テーマ】かけ算指導の本質に迫る 

◆今回も2本の模擬授業を通して「かけ算指導の本質」について語らいます。◆第2学年の授業は「かけ算の意味指導」の導入場面。子供たちも保護者も、“かけ算学習は、九九を暗唱すること”と思い込みがちです。かけ算には、累加や倍といった大事な意味があります。イメージを深めさせる導入授業のあり方を考えます。◆第3学年の授業は「2位数×1位数」の導入場面。筆算指導の前に大事なことは、「2桁のかけ算でも、これまでの九九で解決できる」という発見をさせることです。位に分けて計算するよさを子供たちが実感する授業提案です。◆講演は、本研究会代表の尾﨑正彦です。 

【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『かけ算指導の本質に迫る』尾﨑正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
① 盛祐輔の「教科書を活用したかけ算の授業」(第2学年) 
② 久保田健祐の「教科書を活用したかけ算の授業」(第3学年) 
※小グループで学びのシェア。 
※尾﨑正彦のコメント。 

◆15:45~16:30 
『2学期単元.攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 
1年「たし算とひき算」 
2年「かけ算(1)」 
3年「かけ算の筆算」 
4年「2けたでわるわり算」 
5年「倍数と約数」 
6年「はやさ」 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】『西宮商工会議所』(別館2階・大会議室) 
【参加費】2000円 

※ 本セミナーは学校現場の先生方対象です。それ以外の方は参加できません。

1年でもできる深い学び「8はいくつといくつ」

1年生の「いくつといくつ」も,「8はいくつといくつ」まで進みました。ここまで展開が進むと,子どもたちが学習の先を予測して授業を展開するようになります。

子どもたちと,「8は1と7」「8は2と6」になることを学習します。丸シールなどの具体物を使って,「1と7」「2と6」の組み合わせを確認します。

ここまで学習が進むと,子どもから「次が分かります」「次は3です」「5です」「3と5です」という声があがります。次の問題を予測した声です。しかし,なぜこの組み合わせを予測したのか理解できない子どもたちもいます。そこで,次のように尋ねます。

「どうして次の問題が3と5だと思ったのか,気持ちは分かるかな」

友だちの気持ちを読解させる場面を設定したのです。

「だって,左は上から1,2とくるから次は3」
「1から2は1増えた。だから次も1増えて3」
「右は7,6だから,順番で次は5」
「7から6は1減る。次も1減って5」

子どもたちなりに,数の上下の関係に目を付けて考えていたことが分かります。この見方・考え方は,たしざん・ひきざんの学習にもつながるものです。

本当に「8は3と5」になるのかを,子どもたちはノートに図を描いて確かめます。すると,確かに「3と5」になることが見えてきます。すると,今度はもっと先の場面に対する子どもの動きが生まれてきます。

「だったら次は,1,2,3,4,5,6,7,8だ」
「右は,7,6,5,4,3,2,1,0だ」
「次は,4と4」

まだ提示されていない8の分解数を子どもたちが,次々に発表してきました。ここでも,先ほど発表された数の上下のきまりに基づいた説明が生まれてきました。子どもたちが,そこまでに学んだことを活用して学びを深めた時間だと言えます。

さて,数の論理としてまだ提示されていない8になるパターンが発表されました。しかし,まだ実際に確認してはいません。そこで,ノートに丸の図を描いて確かめます。
その結果,子どもたちが予想したパターンはすべて正しいことが見えてきました。

子どもたちが発見した数学的なきまりや,この他にも生まれてきた数に関する発見をすべて価値づけました。このような取り組みの蓄積が,子どもたち自信で学びを深める礎となっていくのでははいでしょうか。

2019年5月16日木曜日

1年「いくつといくつ」を拡げる

1年生「いくつといくつ」の場面です。前時では5を分解する学習を進めました。この日は,6を分解する場面です。

1問目は「6は2といくつ」です。これは2と4です。
2問目は「6は1といくつ」です。これは1と5です。
3問目は「6は3といくつ」です。これは3と3です。

3問目が終わった時点で,次のように子どもに尋ねます。
「なにか気づいたことはないかな」

子どもから,次の声があがります。
「3番目は,3と3と3だ」
「全部3だ」

3問目は3と3なので,同じ数同士に分解できます。1年生なりの表現ですが,3と3に分解できる特殊性に子どもたちは気づいたのです。そこで,次のように投げかけます。

「1問目は2と4,2問目は1と5だから,3と3のように同じ数じゃないね。昨日の5には3と3のような同じ数はあったかな?」

子どもたちは前日のノートをふり返ります。しかし,同じ数の組み合わせはありません。「5にはないよ」と声があがります。そこで,次のように投げかけます。

「6には3と3の同じ数になるお友だちがいるんだね」

この投げかけで,子どもたちが動き出します。

「6だけじゃないよ」
「8もだよ」
「4と4になるよ」
「10もだよ」
「10なら5と5だよ」

目の前の対象場面は6です。ところが子どもたちは,お友だちがいる数の範囲を拡張して考えていこうとしたのです。1年生でも,類推的に場面を拡張する考え方はできるのですね。

8や10の分解は,この段階ではまだ未習です。そこで,具体物を使い本当に同じ数の組み合わせ(お友だち)ができるのかを確認します。いずれも子どもたちの考え通りに,お友だちの組み合わせがあることが分かります。

その後も子どもたちは,「4にもあるよ」「2にもあるよ」と対象場面をどんどん拡張して考えていきました。1年生が類推的思考を発揮した1時間となりました。



2019年5月10日金曜日

脳科学の視点から学級経営を学びましょう!

令和最初の講座が,5月18日(土)に開催されます。「算数授業づくり講座」として兵庫県西宮市で開催です。この講座では,算数の授業作りだけではなく,学級作りについての講座も開催します。今回は,脳科学の視点から学校教育の役割や我々教師が心得ておくべきこと,成功者に共通する力を身につけるために日々できることはなにかなども一緒に学ぶ機会を設定したいと考えています。

この講座,間もなく定員に達します。お早めにお申し込み下さい!



詳細は以下をご覧ください。


新学期がスタートし,新学習指導要領も次年度から開始されるにあたり、尾﨑正彦先生の「算数授業づくり 講座」を開催できることになりました! 授業名人であり、算数教科書の執筆もされている尾﨑正彦先生です! 今回のテーマは「授業づくりや発問づくりのポイント」です。教材作りの基礎・基本の技術を、それぞれの 学年の単元を例にして皆さんで学び合いましょう!また、算数の授業を軸にした学級経営も教えていただきます。 また、本サークルのメンバーたちと全6学年で「すぐに使いたい算数の授業ネタ ワークショップ」を行い ます。皆さんで1学期単元の教材研究について意見交換をしましょう! どうぞ、お誘い合わせの上ご参加ください!

 1時間目講座①「ズレが生まれる発問づくりのポイント」 尾﨑正彦先生……50分
 2時間目講座②「主体的・対話的で深い学び合いの授業のポイント」尾﨑正彦先生……50分
 3時間目 「すぐに使いたい算数の授業ネタ ワークショップ」(わっしょい!)20分
 4時間目講座③「算数の授業を軸とした学級経営のポイント」 尾﨑正彦先生……50分

○ 日 程: 2019年5月18日(土曜日)
受 付   12:30~12:50
開会行事 12:50~13:00
1時間目 13:00~13:55 (講座①50分+ふりかえり 5 分)
2時間目 14:05~15:00 (講座②50分+ふりかえり 5 分)
3時間目 15:10~15:30 (20分)
ワークショップ 「すぐに使いたい算数の授業ネタ」 (わっしょい!)
4時間目 15:40~16:35 (講座③50分+ふりかえり 5 分)
質疑&閉会 16:35~

○ 会 場: 『西宮市立勤労会館』(第8会議室)
○ 参加費: 3000円(学生2500円)

申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/…/2ecfed005a1621bc427e2bf92b01f7…/

2019年5月8日水曜日

3年「わり算」0のわり算は難しい!

3年生の子どもたちに,次の問題を提示します。

「クッキーが個あります。4人で分けます。1人分は何個でしょう」

子どもから,「の数が分からないと計算できないよ」と声があがります。
そこで,が12の場合を考えさせます。子どもからは,「簡単だよ」「式でかけるよ」「図でもかけるよ」と声があがります。

子どもたちは,12÷4=3 1人分は3個と答えを導き出します。図でも1人分が3個になることを確認します。

次に,が4個の場合を考えさせます。この場合も,「簡単」と声があがります。

4÷4=1 答え 1人1個
図でも1人分が1個になることが確認できました。

次に,が0個の場合を考えさせます。1人分が0個になることは,図で分かります。これは全員も納得です。そこで,「式はどうなるかな?」と尋ねます。ここまで順調だった子どもたちの考えが,ここで分裂します。「0÷4」「4÷0」の2種類です。

「4÷0だよ。だって,0÷4だと答えがマイナスになっちゃうよ」
「0÷4はできないから,4÷0だよ」
「0個を分けるんだから,0÷4だよ」
「でも,0÷4はマイナスだよ」
「ないものを分けるんだから,0個でしょ」

子どもたちの考えは膠着します。ここでN子が次のように説明します。

「最初の問題は12個を4人で分けた。これは12÷4。12個は式の前の数。今の問題も,クッキーが0個だから,0÷4。式の前に0がくる」

N子は,全員が簡単だと納得した最初の問題と比較して考えたのです。N子の説明をきっかけに,子どもたちが動き出します。

「2番目の問題も同じだ。4÷4の最初の4は,クッキーの4個。後の4は4人」
「式の前の数はクッキーの数。式の後ろの数は人数」
「だから,0個が前で4人が後」


複数の式を比較することで,0のわり算の本当の意味が見えてきました。1番目の式と3番目の式を関連づける考え方は,数学的に価値あるものです。このような考え方を称賛しました。



1年「なんばんめ」

今年は1年生の算数も教えています。先日,右のような動物のシールを貼り,子どもたちに尋ねます。(ライオンの左側には,「まえ」という文字が板書してあります)

「前から3番目の動物はなにかな?」

子どもたちの考えは2つに分かれました。「ハムスター」と「ちょうちょ」です。「なんでハムスター?」という呟きも聞こえてきます。そこで,次のように投げかけます。

「ハムスターと考えたお友だちの気持ちは分かるかな?」

友だちの考え方の読解を行いました。1年生スタートして1ヶ月ですが,そんな1年生でもしっかりと読解を進めることができます。

「『まえ』というところから数えたんだよ」
「『まえ』から数えると,1(まえ),2(ライオン),3(ハムスター)だからだよ」

子どもたちから,動物と数字を対応させる説明が生まれてきました。このような説明の仕方は,数学的に価値がある考え方です。この考え方を称賛します。
ハムスターと考えた友だちの考えが読解できました。

そこで,「3番目はハムスターだね」と子どもたちに投げかけます。すると,「そうじゃないよ」「ちがうよ」と子どもたちの声があがります。

「『まえ』は入れちゃあいけないんだよ」
「『まえ』は文字でしょ。動物じゃないよ」
「はじめの動物はライオン。だから,1(ライオン),2(ハムスター),3(ちょうちょ)になる」
「ライオンが1匹目だよ」

異なる考え方と対比して考えることで,子どもたちは「前から3番目」の本当の意味をしっかりと理解していくことができました。

今回の展開は,ほぼ教科書通りです。しかし,そこでの子どもの反応を分析していくとズレが見えることがあります。そのズレを授業の舞台に載せることで,子どもたちの算数に対する理解はより深まっていくのです。