2021年11月27日土曜日

水は何Lから分数のたし算・かけ算へ

 3年生「分数」の学習の2時間目です。子どもたちに,次の問題を提示します。

「水は何L入っていますか?」

この問題に対して,「昨日の問題と似ている」と声が聞こえてきます。そこで,「何が似ているの?」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明してきます。

「問題文がmとLの違いで,あとは同じだよ」

「昨日は,mと㎝だった。水のかさも,Lの下にはdLがある。小さい単位を表すというのが似ている」

子どもたちは,問題の構造が似ていることを見抜いてきました。鋭い子どもたちです。

最初に提示したのは,1Lますに3dL分だけ水が入った図です。3dLの水が入っていることは,子どもたちもすぐに分かります。しかし,「L」で答えます。子どもたちは,前時の長さの学習をもとに,次のように説明していきます。

「1Lを10等分した内の3つ分だから,3/10Lだね」

「等分ってなに?」

「公平っていうことだよ」

1Lよりも少ない水のかさも,分数を使えば「L」で表現できそうなことが見えてきました。

そこで,次の問題を提示します。今度の問題は,1Lますに7dL分


の水が入った図です。子どもたちは,この図について次のように説明を進めていきました。

「1Lを10等分した内の7つ分だから,7/10Lだね」

「あれ,これって1/10Lが7つ分っていうことだね」

ここで7/10Lに対する別の見方が生まれてきました。そこで,「1/10Lが7つ分って,どういうこと?」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明をしていきました。

「(図を指しながら)1/10Lが1つで1/10L。2つで2/10L・・・7つで7/10Lということだね」

「だったら,1/10×7ってかけ算の式にできるね」

「でもさあ,答えは7/70Lになるよ。やばいよ」

「違うよ,分母はかけないんだよ」

「なんで?それっておかしいよ」

1/10Lの7つ分を,1/10×7という式にできるという発想が生まれてきたことは素晴らしいことです。子どもたちも,このように立式できることは納得です。しかし,立式はできても,そこから導かれる答えが7/70Lになるからおかしいと考えたのです。既習の計算手続きから考えたら,このように考えるのは当然です。

7/70Lと考える気持ちを,クラス全体で共有します。しかし,7/70Lではおかしいと考える子どもたちが,説明をしてきます。

「それなら,分数のたし算にしたらどうかな」

「1/10+1/10+・・・+1/10になるね」

「でも,やっぱり7/70Lだよ」

「図で描けば分かるよ」

「ピザの絵で考えます」

コップで水のかさを学習しているのに,ピザの図が登場してきました。2年生の分数との出会いが時計型ケーキ(円)だったので,その印象が残っているのかもしれません。

「ピザを8等分したとします。1/8が2個なら2/8です。分母もかけるというなら,2/16になります。分母も2倍するということは,ピザがもっと小さく分けられていきます。その中の2個分は2/16になります。本当の図とは違ってきます」

「分母をかけると,分け方が変わってしまうね」

「だから,分母をかけたらだめなんだ」

「いくつにわけたという話は,変えてはだめなんだ」

分母をかけてしまうと,もともとの分け方が変わってしまうことを,図を使うことで子どもたちは納得していきました。やはりピザの絵は有効だったようです!

水のかさを分数で表現する活動を通して,子どもたちは同分母分数のたし算・かけ算の考え方までたどり着くことができました。すばらしい子どもたちの発想力です!





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1mよりも短いぞ・・・

3年「分数」の導入場面です。


「紙テープは何mあるでしょう」と投げかけ,右の図を提示します。子どもからは「2m」と声があがります。

そこで「本当に2m?」と念を押します。すると子どもからは,自然にジェスチャーが生まれてきます。両手を使って,次のように説明してきます。

「これで1mの1つ分」

「これで2つ分」


基にする大きさがいくつ分あるのかを考える,算数でとても大切な見方が生まれてきました。

 

次に,右の紙テープを提示します。子どもからは「あれ?」「えっ」と驚きの声が聞こえてきます。2mよりももっと長い紙テープを予想していたのに,子どもの目の前に現れたのは,それとは真逆の物だったからです。

しかし,すぐに子どもたちは再び指を左右に動かしながら,何かを数えています。そこで,「なにをしているの?」とそのジェスチャー表現の気持ちを読解します。

「小さい紙テープが,何個入るのかを調べている」

「小さい紙テープは,1,2,3,4,5個入った」

「でも,1mよりも小さいよ。なんて言えばいいの?」

「だったら分数を使えばいいよ」

「1mを5つに分けた内の1つ分だよ」

「1mの1/5だね。それなら,1/5mと言えばいいのかな」

1mよりも短い長さを,そのまま「m」の単位で表現することはできません。そこで,子どもたちが思いついたのが,2年生で学習した分数と関連づける見方です。分数を使えば,1mよりも短い長さも「m」の単位を使って表現することができるのです。

この後も,1mよりも短い長さを提示しました。その度に子どもたちは,指を左右に動かしながら短いテープが1mに何個分入るのかを一生懸命に探っていました。



2021年11月24日水曜日

GAKUTOセミナーIN京都 いよいよ申し込み開始!

 お待たせした! 2022年2月19日(土)に京都市で田中博史先生をはじめとする算数を愛する先生方が開催する「GAKUTOセミナーIN京都」の申し込みが開催されます。申し込み開始は,11月27日(土)12時~です。参加人数に対面(50名)もオンライン(200名)も定員がありますので,お早めにお申し込みください。


会の詳細は,以下のパンフレットをご覧ください。算数の達人がお届けする濃い会です!

お申し込みは,以下のアドレスからお願いします。

https://senseiyell9-gakuto.peatix.com/



2021年11月23日火曜日

新潟ウィーク!

 今日はこれから,新潟大学教育学部附属新潟小学校の秋の研究会に参加します。授業者は志田先生です。全国でも有数の授業の達人です。5年生「割合」の授業について,新潟の仲間や筑波大学附属小学校の夏坂先生と,授業について語り合います。授業動画を視聴された先生方,ご参加をお待ちしています。

明日は,新潟市総合教育センター主催の算数・数学講座です。こちらも多くの先生方に孟子身をいただいています。教育センターの毎年の恒例行事にようになっていますが・・・。

故郷新潟の先生方とお会いできることを,楽しみにしています。



2021年11月19日金曜日

暗算は十の位が先? 一の位が先?

 子どもたちに次のように投げかけます。

「1本24円のあめを3本買います。代金はいくらですか」

子どもからは,「かけ算だ」「簡単だね」「筆算でできるね」などの声があがってきます。そこで,「今日は筆算を使わずに,暗算で答えを求めることはできるかな?」と投げかけます。子どもたちは,「できるよ」「筆算と同じようにすればいいだけ」と考えます。

早速,暗算で計算をしてもらいます。多くの子どもたちが,すぐに答えを見つけることができました。そこで,「頭の中で,どうやって計算したの?」と尋ねます。

「最初に一の位の4×3で12。次に十の位で20×3で60。最後に,12+60で72」

二位数×一位数の既習は,一の位から計算をしていました。この経験値から考えれば,この手順で計算を行うのは当然です。

一方,「こんなやり方もあるよ」と声があがります。

「最初は十の位で20×3で60。次が一の位で4×3で12。最後に60+12で72」

最初のかけ算の順番を入れ替えるという考えです。ところが,「それって同じでしょ」「やりやすさも同じ」「どうせ最後にたすんだから,同じだよ」と声が続きます。

この声に対して,次の声が聞こえてきます。

「最後のたし算の一の位は,最初のは2+0でしょ。後のは0+2でしょ。2に0をたすよりも,0に2をたす方が簡単だよ」

この声に対する反応は,分裂しました。「確かに!」「同じでしょ」とズレが生まれました。

そこで,たし算の一の位の0が先にある方が計算が本当に簡単なのかを,実験することにしました。

「これから先生が言う式の答えが分かったら,3秒手をあげます」

このように説明した後,次の問題を口頭で発表します。

ア 39+30

イ 20+37

ウ 47+30

エ 40+37

4問の実験の結果,多くの子どもたちは一の位に0が先にあるイ,エの計算の答えを早く見つけることができました。すると,子どもたちも「十の位から計算した方が簡単だ」と考えが変容していきます。しかし,「アも簡単だよ」と主張する子どもも半数います。やはり,計算に慣れている方法にこだわるのも自然な姿です。

そこで,今度はかけ算問題で暗算の実験を行うことにしました。

「63×4を,一の位を先に暗算しよう」

「54×3を,十の位を先に計算しよう」

この問題は,最後のたし算が「12+240」「150+12」となっています。一の位に0がある計算です。この両タイプの計算を体験したことにより,次の声も聞こえてきました。

「十の位+百の位を計算するよりも,百の位+十の位を計算する方が簡単だよ」

最後のたし算の構造を分析的に捉えて声です。この声に納得する子どももいましたが,「同じでしょ」と捉える子どももいました。

そこで,今度も実験をして計算のしやすさを体験することにします。

④48+250

⑤350+24

暗算で答えが求められたら,手をあげてもらいました。圧倒的に⑤の問題が早く答えが求められる子どもが多くいました。

頭では今まで通りの筆算手順が暗算でも簡単だと思っていた子どもたちでしたが,実際に復習の問題を体験していく中で,十の位を先に計算するよさを実感することができた1時間でした。

家に帰ってから自主学習で両方のやり方を体験し,それらにかかった時間を計測し,十の位を先に計算するやり方の簡便さを見える化してきた子どもたちもいました。


2021年11月17日水曜日

13×2と12×3

算数の時間,,,,のカードをに入れて,答えが一番○○な式を作ろう」と投げかけます。子どもたちに「1×という式を提示します。2つのに数字を入れて答えが最小値になる式を考えさせます。先ずは,計算しないことを条件に,頭に浮かんだ式をノートに書かせました。子どもからは,12×3」「13×2」の2つの式が生まれてきました。この式に対して,「同じ」と声があがります。

そこで,「同じ」の気持ちを全員で読解します。

「2×3も3×2も答えは同じ6」

「式の2と3を入れ替えただけだから,答えは同じ」

このように考えると答えは同じになりそうです。


ところが「違うよ」という声も聞こえてきます。

「2年のたしざんでは,1,2,3の順で小さく数字を並べたから,12×3が小さい」

2年生で学習した虫食いたし算問題を思い出したのです。そのときに見つけたきまりと同じように考えればいいのだというのです。よき見方が生まれてきました。


ところが,この見方に対しても「違うよ」と声があがります。

1213はだいたい同じ数でしょ。だから,同じ数の3倍と2倍なら2倍の方が小さい」

「たしざんの筆算にしたら,だいたい同じ数を3回たす12+12+12と,2回たす13+13では2回たす方が小さい」


1213はたった1違いの近い数です。このように考えれば,この2つの数字の大きさはだいたい同じと捉えることができます。だいたい同じ数字の2倍と3倍であれば,明らかに2倍の方が小さくなります。


だいたいの数で1213を捉え直すこと,また,倍の考えをたし算の筆算に置き換えることでより見えやすくすることは,私の想定を超えた発想でした。子どもの発想は素晴らしいですね。この問題では,数字を変えて複数の問題に取り組む中で,かける数に最小値,かけられる数に2番目に小さい数を代入することで,答えが最小の式ができることを帰納的に発見していく授業が多くあります。ところが,今回は12と13をだいたい同じ見ることで,演繹的に考えていくことができたのです。


この授業では,この後でさらに新しい発見が子どもから生まれてきました。その発見がいつでも当てはまるのかを考えることで,気がついたらずっと計算に取り組んでいた1時間となりました。



 

2021年11月12日金曜日

00×8? 0×8?

 かけ算の筆算をさくらんぼ筆算で取り組んでいたときのことです。「405×8」の問題に取り組みました。一の位の計算は,5×8の答えを40と書きます。ここまでは,全員が同じ考えでした。ところが,十の位の計算をどのようにメモするのかを巡って,子どもたちの反応にズレが生まれてきました。

「00×8」

この考えに対して,「えっ?」「なにが『えっ?』」と相反する声が生まれてきたのです。そこで,「00×8」「0×8」の両者の気持ちを読解していくことにしました。

先ずは,「00×8」について読解します。

「十の位のかけ算だから,00×8だよ」

「0×8と書いたら,一の位の計算だと勘違いされてしまう」

「もし,485×8の計算だとします。十の位は80×8でした。この80には十の位と一の位の数字があります。だから,405×8だって,00×8と書いて,十の位と一の位の両方の数字を書かないといけない」(H男)

H男の説明は,既習のかけ算の計算での書き方を,405×8にも当てはめて考えようとしたのです。例示をする見方,共通点を見つけていく見方など,すばらしい視点が生まれてきました。この学習では,このような既習とつなげて論理的に考えていく見方・考え方を引き出し,鍛えていくことをねらったのです。その意味でも,よき例示が生まれてきました。

しかし,「0×8」という考えの子どもたちも,「でも,でも」と言って意見を主張しようとしています。そこで,今度は「0×8」の読解を行います。

「00と書かなくても,0で意味は分かる」

「000000なんて書かない。0は0でいい」

「405をさくらんぼにしたら,400と5でしょ。十の位は0なんだから。だから,十の位を書くなら0でいい」

「0+0=0と書くけど,0+0を00とは書かない」

0は何個集まっても,表記としては0としか書かないという説明です。この説明も,既習の0表記とつなげた見方・考え方です。

この他にも様々な論理的な説明が子どもからは,生まれてきました。いずれも既習と結びついた論理的な内容でした。授業最終版では,お互いの気持ちは分かるが,「00×8」「0×8」というのが子どもたちの思いでした。




2021年11月8日月曜日

さくらんぼ筆算は簡単!

算数の学習では,かけられる数が十の位を超えるかけ算の計算方法を考えてきました。子どもたちは,かけられる数を位毎に分ける「さくらんぼ計算」を行うことで,簡単に計算ができることを発見していきました。そこで,この時間は「百の位でも,さくらんぼは簡単に計算できるかな」と投げかけます。


364×8」「429×7」の2つの問題に取り組みました。「429×7」なら,429を「400×7」「20×7」「9×7」に分割することで,これまでに学習したことを活かして計算をしていくことができます。一方,地道に「429+429+429・・・」とたし算で求める子どももいました。たし算と比較すると,さくらんぼ計算は簡単に計算ができます。


ところが,百の位の計算はさくらんぼ計算でも「面倒」「気持ち悪い」という声も聞こえてきました。そこで,この声の理由を考えていきます。


「最後のたし算を暗算でするのが面倒」

「だったら,たし算は筆算したらいいよ」

「十の位はさくらんぼの線が少ないけど,百の位は線が多くなって大変」

「たし算・ひき算みたいに,かけ算さくらんぼも筆算できないかな」




もっと簡単にできる計算方法を求める声が生まれてきました。既習のたしざん・ひきざんでの筆算とつなげて考えられた点がすばらしいですね。


そこで,「429×7のさくらんぼ計算を筆算で計算するとしたら,どう書きますか」と左の筆算を示し,下線部以下の書き方を考えさせます。



さくらんぼ計算を活かして筆算を書くと,右のようになります。これを見た子どもたちからは,次の声があります。

「あー,そういうことか!」

「さくらんぼと同じことをしているね」

「見やすいね」

「最後のたし算したさくらんぼより簡単だね」


この筆算を「さくらんぼ筆算」と命名しました。日本では下線部下を圧縮した筆算が一般的ですが,今回ような筆算を指導している国も多数あります。計算方法は必ずしも一つではないのです。


2021年11月3日水曜日

算数ウィンターフェスティバル 申し込み開始

 12月26日(日)新潟で開催される新潟算数サークルMAC主催「算数ウィンターフェスティバル」の申し込みが始まりました。会場は新潟市立中央図書館(ほんぽーと)です。今回は,対面30名とオンライン50名のハイブリッド方式で開催します。

講師陣は新潟の算数授業を愛する熱い先生方ばかりです。寒い冬を熱い算数授業実践講座で盛り上げていきます。

お申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/d12ea0eb6915067e555171d91f85cb83/