かけ算の筆算をさくらんぼ筆算で取り組んでいたときのことです。「405×8」の問題に取り組みました。一の位の計算は,5×8の答えを40と書きます。ここまでは,全員が同じ考えでした。ところが,十の位の計算をどのようにメモするのかを巡って,子どもたちの反応にズレが生まれてきました。
「00×8」
この考えに対して,「えっ?」「なにが『えっ?』」と相反する声が生まれてきたのです。そこで,「00×8」「0×8」の両者の気持ちを読解していくことにしました。
先ずは,「00×8」について読解します。
「十の位のかけ算だから,00×8だよ」
「0×8と書いたら,一の位の計算だと勘違いされてしまう」
「もし,485×8の計算だとします。十の位は80×8でした。この80には十の位と一の位の数字があります。だから,405×8だって,00×8と書いて,十の位と一の位の両方の数字を書かないといけない」(H男)
H男の説明は,既習のかけ算の計算での書き方を,405×8にも当てはめて考えようとしたのです。例示をする見方,共通点を見つけていく見方など,すばらしい視点が生まれてきました。この学習では,このような既習とつなげて論理的に考えていく見方・考え方を引き出し,鍛えていくことをねらったのです。その意味でも,よき例示が生まれてきました。
しかし,「0×8」という考えの子どもたちも,「でも,でも」と言って意見を主張しようとしています。そこで,今度は「0×8」の読解を行います。
「00と書かなくても,0で意味は分かる」
「000000なんて書かない。0は0でいい」
「405をさくらんぼにしたら,400と5でしょ。十の位は0なんだから。だから,十の位を書くなら0でいい」
「0+0=0と書くけど,0+0を00とは書かない」
0は何個集まっても,表記としては0としか書かないという説明です。この説明も,既習の0表記とつなげた見方・考え方です。
この他にも様々な論理的な説明が子どもからは,生まれてきました。いずれも既習と結びついた論理的な内容でした。授業最終版では,お互いの気持ちは分かるが,「00×8」「0×8」というのが子どもたちの思いでした。