2019年3月31日日曜日

教科書活用セミナー京都大会

昨日は静岡で教科書活用セミナーを開催しました。授業改革に対して前向きな先生が静岡にはたくさんいらっしゃいました。私も楽しく講座を進めることができました。

さて,4月21日(日)に教科書活用セミナー京都大会(京都教育文化センター)を開催します。この会のテーマは対話的な学びです。「対話的な学び」が学習指導要領で取り上げられてから,ペア説明やグループ活動が多く取り入れられています。しかし,その多くには形式的な展開がみられます。本当の「対話的な学び」は形式的に進めることはできません。さらに京都では,人工知能AIを活用したグループ活動の実証実験が始まりました。AIを使ったグループ活動についても,先生方と意見交流していきたいと考えています。

教科書活用セミナー京都大会の詳細は以下をご覧ください。

算数教科書活用セミナー・第6回(京都大会) 

【テーマ】教科書を使って「対話のある算数授業」をつくる 

◆なぜ算数授業の中で「対話」をつくるのでしょうか。クラスの友だちとの対話を通して、「考えの深まり」や「学びの定着」を生み出していくことができるからです。◆教師がコツさえ知れば、教科書教材で十分に、対話のある算数授業を生み出すことができます。◆2本の模擬授業と、尾﨑正彦代表の講座を通して、「対話のある算数授業のつくり方」を明らかにしていきます。 

【プログラム】 
◆11:30 受付開始 

◆12:00~12:45 
講座『対話のある算数授業のつくり方』尾﨑正彦 (45分) 

◆13:00~14:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
 ① 樋口万太郎の「わり算」の授業(3年生) 
 ② 森谷明夫の「いくつといくつ」の授業(1年生) 
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦のコメント。 

◆14:45~15:30 
『5月単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆15:30~16:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】 『京都教育文化センター』(302会議室) 
【参加費】2000円 

申込みは以下のアドレスからお願いします。
https://kokucheese.com/event/index/558653/

2019年3月28日木曜日

算数授業づくり講座のご案内 IN西宮

春休みがスタートしています。先生方は新年度の準備に忙しい日々を送られているのではないでしょうか。

新年度のスタートは「黄金の日々」と呼ばれるほど大切です。スタートに必要なことは,教師が明確な戦略を持つことと子どもを見る目を鍛えていくこと,さらには子どもに合わせて柔軟な授業展開を進めていくことです。これらの力は,簡単には身に付きません。そのためのノウハウを「算数授業づくり講座」として兵庫県西宮市で5月18日(土)に開催します。詳細は以下をご覧ください。


新学期がスタートし,新学習指導要領も次年度から開始されるにあたり、尾﨑正彦先生の「算数授業づくり 講座」を開催できることになりました! 授業名人であり、算数教科書の執筆もされている尾﨑正彦先生です! 今回のテーマは「授業づくりや発問づくりのポイント」です。教材作りの基礎・基本の技術を、それぞれの 学年の単元を例にして皆さんで学び合いましょう!また、算数の授業を軸にした学級経営も教えていただきます。 また、本サークルのメンバーたちと全6学年で「すぐに使いたい算数の授業ネタ ワークショップ」を行い ます。皆さんで1学期単元の教材研究について意見交換をしましょう! どうぞ、お誘い合わせの上ご参加ください!

 1時間目講座①「ズレが生まれる発問づくりのポイント」 尾﨑正彦先生……50分
 2時間目講座②「主体的・対話的で深い学び合いの授業のポイント」尾﨑正彦先生……50分
 3時間目 「すぐに使いたい算数の授業ネタ ワークショップ」(わっしょい!)20分
 4時間目講座③「算数の授業を軸とした学級経営のポイント」 尾﨑正彦先生……50分

○ 日 程: 2019年5月18日(土曜日)
受 付   12:30~12:50
開会行事 12:50~13:00
1時間目 13:00~13:55 (講座①50分+ふりかえり 5 分)
2時間目 14:05~15:00 (講座②50分+ふりかえり 5 分)
3時間目 15:10~15:30 (20分)
ワークショップ 「すぐに使いたい算数の授業ネタ」 (わっしょい!)
4時間目 15:40~16:35 (講座③50分+ふりかえり 5 分)
質疑&閉会 16:35~

○ 会 場: 『西宮市立勤労会館』(第8会議室)
○ 参加費: 3000円(学生2500円)

申し込みは以下のアドレスからお願いします。

https://www.kokuchpro.com/…/2ecfed005a1621bc427e2bf92b01f7…/

2019年3月20日水曜日

小数倍のもとの数は?

4年生に小数倍の学習が入りました。そこで,子どもたちに次の問題を提示します。

「あすかさんが月曜日に30ページ,火曜日に36ページ,水曜日に21ページの本を読みました。火曜日に読んだページ数は月曜日に読んだページ数の何倍ですか」

先ずは,自由に子どもたちに考えさせます。子どもからは,「36÷30」「30÷36」の2つの式が生まれてきました。問題文に合う式はどちらなのか,子どもたちの話し合いが始まります。

「30÷36は問題が変わるよ。月曜は火曜の何倍かの問題ならこの式だけど,今は火曜は月曜の何倍かだから違うよ」
「問題には火曜は,月曜の何倍かと(は)と(の)があるから36÷30」

子どもたちの話し合いで,問題文に合う式は36÷30であることは見えてきました。ところが,ここで子どもたちの認識のズレ見えてきました。

「前の勉強で,割合=比べる数÷もとにする数 と学習したでしょ。だから,もとにする数は30だよ」
「えっ,もとにする数は36だよ」

子どもたちは,正しく立式できたのにもかかわらず,もとにする数が30なのか36なのかの認識がズレたのです。これは,36÷30の式の意味が十分に認識できていないことを意味します。この時点では,ほとんどの子どもは36がもとの数だと考えていました。割合の学習の難しさが垣間見えた瞬間でした。

もとにする数が30なのか36なのかが,子どもたちの新たな問いとなりました。子どもたちの話し合いが続きます。

「火曜は月曜の何倍かということは,月曜の倍が火曜ということでしょ。だから,月曜がもとだよ」
「えっ,なんで?」
「30×=36でしょ。これは,=36÷30になるから30がもとだよ」
「どういうこと?」
「火曜は月曜の何倍かということは,36の中に30は何個あるかということと同じでしょ。だから,もとは36」
「えっ,それなら30じゃない」
「えー,わかんなくなってきた」

子どもたちは様々な事例をもとに説明を進めていきます。しかし,なかなか子どもたちの納得には至りません。割合の見方・考え方の難しさがここでも見えてきます。
ここで私が図や別の例を示し,子どもを納得させることはできるかもしれません。しかし,この展開で生まれる納得は表面的なもので,心の底からの納得には至らない可能性が高いのです。この場面を,もう少しだけ子どもに委ねてみることにしました。すると,子どもが発想の転換を行います。

「図を描けば分かるよ。火曜は36ページでしょ。だから大きい円。月曜は30ページでしょ。これは36ページの中に入る円。火曜は月曜の何倍だから月がもとだよ」

話し合いが混沌としてきたときには,複雑な場面を図に置き換える発想は数学的に価値ある見方・考え方です。
さらに,子どもの説明は続きます。

「火曜は月曜の何倍かを,前に勉強したT君と小人の身長比べの話に例えるよ。すると,T君の身長は小人の身長の何倍かという問題になるでしょ。これなら小人がもとでしょ。だから,月曜の30がもとだよ」
「T君は小人の何倍かは,火曜は月曜の何倍かと同じだから月曜がもとだよ」

以前に身長比べの問題に取り組みました。本のページ数比較を,この身長比較の事例に置き換えたのです。この置き換えにより,子どもたちは「そういうことか」と納得しました。複雑な場面をシンプルな別事例に置き換えることも,数学的に高い見方・考え方です。この置き換えの発想を子どもから引き出すことができたのは,子どもにぎりぎりまで問題解決場面を委ねた結果です。子どもからこの考え方が生まれることで,その発想を大いに称賛することもできます。子どもの考え方を称賛することは,その後の類似場面で同様の考え方が子どもから生まれる布石ともなります。

子どもに委ねる→生まれた考え方を価値づける・称賛する→その後の類似場面で価値づけた考え方が再現・活用される

このサイクルの蓄積を進めていくことが,日々の算数授業では大切です。






2019年3月19日火曜日

×11にきまりはあるの?

3年生の子どもたちに,「こんな計算はできるかな」と問題を出しました。

①25×11=275
②16×11=176
③34×11=374
④61×11=671

①〜④までを筆算で計算を進めていきます。④の計算が終わったところで,子どもから「気づいたことがあります」と声があがります。この声で,他の子どもたちも「きまりはあるのだろうか?」と①〜④の計算を見直します。きまり発見の授業展開で大切なことは,すぐにきまりを発表させないことです。どんなきまりがあるのかを,クラス全体で探すことを愉しむ時間をたっぷりと確保することです。

子どもたちが見つけたきまりを発表します。
「どれも11をかけている」
「筆算の計算の1段目と2段目のかけ算の答えは同じになっている」
「②の16×11だったら,かけられる数の16は1+6で7。この7が答えのところで,1と6の間に入っている」
「本当だ! すごい」
「だったら③もそうだ。34×11は3+4で7。この7が答えでは374だから間に入っている」

この7が生まれるきまりを,子どもたちは②③の事例で納得しました。そこで,このきまりを隣同士で再現します。再現することで,見つけたきまりの考え方を定着させるためです。
さて,この再現活動の中で,S子は先ほどの話題にはなかった④の式を事例に話をしていました。きまりの説明の対象場面を自ら広げてみたのです。このような考え方・説明の仕方も大切です。

7のきまりを共有した子どもたちの思考のベクトルは,さらに深まっていきます。

「もし,11×11ならどうなるかな」
「11×11なら,今のきまりなら答えは121になるよ」

先ほどまではかけられる数の2つの数値の合計は7でした。その数値の組み合わせが7にはならない場合にも,同様のきまりはあるのだろうかと考えたのです。このように場面を拡張する考え方もすばらしい発想力です。

11×11が本当に121になるのかを実験します。結果は「121」になりました。この結果から子どもたちは,×11ならいつでも前述のきまりが当てはまるのだろうかと考え始めます。一方,きまりの一般性を信じ切れない子どももいます。そこで,自分で自由に数値を設定し,(AB)×11=A(A+B)B になるのかを実験することにしました。子どもに,この部分は任せたのです。時にはこのように子どもたちに実験部分を任せることも大切です。

子どもたちは自由に数値設定をして,計算を進めていきます。やがて,「なった」「私もだ」と喜びの声があがります。一方,「73×11=803」となり先ほどのきまりはそのままではあてはまりません。しかし,子どもたちは「7+3=10でしょ。十の位の1が7に繰り上がると考えれば803」と説明してきます。見方を変えることで,きまりは当てはまることを説明してきたのです。

自由に計算を進める中で,子どもたちは「×11はいいけど,×22や×33になったらきまりは当てはまらない」と考えはじめます。子どもたちの思考の範囲が,さらに拡張していったのです。

そこで,かける数が×22の場合にきまりが当てはまるのか否かを自由に実験させます。やがて,「これはだめだ」「うまくいかない」と声があがります。

34×22=748
33×22=726
21×33=693

このような結果となります。先ほどのきまりは当てはまりません。ところがここで,「そうかな」という声が聞こえます。

「34×22なら3+4=7でしょ。×22だから×11の2倍。だから,7も2倍にすると14。この4が748の真ん中に入っている」
「それなら33×22も同じだ。3+3=6で6×2=12。答えは726だから真ん中が2になっている」
「×33も同じだ。21×33は2+1=3で3×3=9。答えは693だから真ん中は9になっている」

きまりは当てはまらないとあきらめかけていた×22,×33の計算も,見方を変えるときまりが当てはまることを見つけたのです。鋭い視点,さらにはあきらめない粘り強さをもった子どもたちです。

たくさんのきまりが次々に生まれ,さらには子どもたちが追究のベクトルを次々と自ら設定した1時間となりました。この実践は,筑波大学附属小学校の田中博史先生の授業を参考に展開しました。

夏休み新潟縦断3日連続講座

今年の8月,新潟縦断3日連続講座を開催予定のお知らせです。お近くにお住いの先生方,ご参加くださいね!

8月22日(木) 学級経営&算数講座 会場:佐渡市立金井小学校(予定)
8月23日(金) 新潟市総合教育センター主催算数講座
         (新潟市内の先生方限定対象)
                   会場:新潟市立総合教育センター
8月24日(土) 算数スペシャル講座
         (新潟附属小・志田先生,聖篭・山田先生とジョイント企画)
                   会場:新潟市万代市民会館(予定)

詳細は決まり次第お知らせします!
熱い夏,新潟で算数を熱く学びましょう!

2019年3月14日木曜日

4年生「簡単な割合」文具店の方針への賛否

4年生に「簡単な割合」が入りました。今回は,筑波大学附属小学校の田中博史先生の実践を参考に,本校でも実践を行ってみました。

子どもたちに,次のように投げかけます。

「ある文房具店が諸般の事情により,全品100円値上げすることになりました。この文具店の方針に賛成ですか,反対ですか」

この投げかけに対して,子どもからは「それって,文具店の立場ですか,買う人の立場ですか」と質問があがりました。鋭い視点です。立場によって賛成・反対が変わるというわけです。

そこで,立場によって賛成・反対が変わるのかをクラス全体で考えていくことにしました。この時点で,この論点の意味が見えていない子どももいたからです。子どもたちは,次のように話し合いを進めていきました。

「10円の鉛筆があったとします。これは100円値上げだと110円になる」

1本10円の鉛筆という例示が子どもから生まれてきました。子ども自らが考える対象となる事例を例示していくことは,大変に高度な考え方です。この鉛筆の事例に対して,子どもからは「高過ぎだ」と声があがります。

「600円のシャーペンがあったとします。これは100円上がると,700円にしかなりません」


今度は600円のシャーペンの事例が生まれてきました。さらに,この事例に対しては「700円にしか」と「しか」という言葉がつきました。そこで,なぜ「しか」という言葉を鉛筆では使わず,シャーペンでは使ったのかをクラス全体で共有していくことにしました。

「だって,10円が110円になったら11倍になっている」
「でも,シャーペンは600円が700円だからそれほど値上げしていない」
「そうかな? どちらも100円ずつ値上げしているよ」
「鉛筆10円が110円になったら11倍。これって鉛筆11本買える値段だよ。シャーペン600円が700円になっても11本も買えない」
「600円が700円は700÷600で約1.2倍。だから,1.2本分しか買えない」
「10円をもと,600円をもとと考えると,鉛筆がすごく増え方が大きい。シャーペンは増え方が小さい」
「もし,11000円の万年質があったら,100円上がっても11100円。ほとんど上がっていない。増え方がすごく小さい」

割合は子どもには馴染みのない言葉です。子どもにとっては増え方が大きい・小さいと表現することが,割合の見方を示す言葉のようです。
また,10円と600円を同じ大きさのもととして図に表現することで,この増え方の違いがより明確になりました。

最終的に子どもたちは,この文房具店の方針に対して次のように考えました。

「お店の立場でもお客さんの立場でも,100円値上げは反対。10円が100円になればお店はいいかもしれないけど,多分,買わなくなるからお店もいいことはない」
「10円が110円。11000円が11100円は不公平」
「全部が1.5倍なら平等」
「だから,全品100円値上げではなく,全品1.5倍とかの同じ倍の値上げがいい。それなら,お客さんも買う」

文房具店,お客の2つの立場の読解からスタートした授業でした。子どもたちは,自分たちで事例を示しながら,価格により不公平感が生まれることに気づきました。


2019年3月12日火曜日

『小学校算数指導スキル大全』近日刊行

間もなく,明治図書より『小学校算数指導スキル大全』が刊行されます。熊本の宮本博規先生をはじめ,全国の算数指導の超ベテラン先生方で執筆した本です。私は,Chapter1を担当しています。

先生方の日頃の算数指導改善に役立つことをねらった本です。様々な授業シーンを想定して構成されています。お好きなページから読み進めても大丈夫です。是非,お求め下さい!

『小学校算数指導スキル大全』の目次は次の通りです。

はじめに
Chapter1 学びの質は指導スキルで大きく変わる
1 教育界と医療界を対比する
2 指導スキルがないと授業はどうなるか
3 「めあて」と「まとめ」はだれのものか
4 発表会=対話的な学びではない
5 やらせっぱなしの深い学びと振り返り
Chapter2 算数授業の指導スキル50
教材・教具
1 きまりを見つける問題をつくるスキル①(数と計算)
2 きまりを見つける問題をつくるスキル②(図形)
3 日常や社会の事象を算数の教材に変身させるスキル①(測定・変化と関係)
4 日常や社会の事象を算数の教材に変身させるスキル②(データの活用)
5 子どもの理解を助ける教具づくりのスキル

問題提示
6 主体的に問題にアプローチさせるスキル①(□にする)
7 主体的に問題にアプローチさせるスキル②(一部を隠す)
8 主体的に問題にアプローチさせるスキル③(条件不足にする)
9 主体的に問題にアプローチさせるスキル④(情報過多にする)
10 主体的に問題にアプローチさせるスキル⑤(オープンエンドにする)
11 主体的に問題にアプローチさせるスキル⑥(問題づくりをさせる)
12 全員授業に参加できるようにするスキル①(単純化する)
13 全員授業に参加できるようにするスキル②(視覚化する)
14 問題への興味・関心を高めるスキル①(ゲーム化する)
15 問題への興味・関心を高めるスキル②(計算問題にしかけを仕組む)

自力解決
16 手が止まっている子どもに考えるきっかけを与えるスキル
17 ペア対話(小集団の学び合い)を有効に活用するスキル
18 スモールティーチャーを活用するスキル

話し合い・発表
19 子どもの考えをつなぎながら話し合いを展開するスキル
20 苦手な子どもを話し合いに参加させるスキル
21 グループ学習を有効に活用するスキル
22 ジグソー学習を活用するスキル
23 誤答や誤認識を生かすスキル
24 発表のハードルを下げるスキル
25 発表をアクティブにするツール活用のスキル

振り返り・まとめ
26 統合・発展につながる振り返りのスキル
27 問題解決の過程で行う振り返り・まとめのスキル
28 知識・技能を確実に習得させるまとめのスキル
29 学習感想を有効に活用するスキル

アイスブレイク
30 授業モードに素早く切り替えるスキル①(低学年)
31 授業モードに素早く切り替えるスキル②(中学年)
32 授業モードに素早く切り替えるスキル③(高学年)

発問
33 問題に対する問い(めあて)をもたせるスキル
34 意味を考えさせるスキル
35 理由や根拠を引き出すスキル
36 子ども思考を揺さぶるスキル
37 統合的に捉えることを促すスキル
38 発展的に考えることを促すスキル

板書
39 授業の流れをわかりやすく示すスキル
40 数学的な見方・考え方を可視化するスキル
41 子どもの考えを比較したり,関連づけたりするスキル
42 アイテムを効果的に活用するスキル

ノート指導
43 学習内容をすっきり整理させるスキル
44 思考の過程をノートに残させるスキル
45 計算などのミスを生じにくくさせるスキル
46 ノートの点検・評価で意欲を高めるスキル

特別支援
47 数を数えるのが苦手な子どもへの支援のスキル
48 計算が遅い,間違いが多い子どもへの支援のスキル
49 文章題の読み取りが苦手な子どもへの支援のスキル

50 図形を見る力が弱い子どもへの支援のスキル

2019年3月9日土曜日

そろばんの定位点

3年生でそろばんの学習を進めています。

そろばんには定位点が打たれています。子どもたちが使うそろばんの定位点は,「一の位」「千の位」「百万」の順に位置付いています。

子どもたちに,「二万をそろばんに入れよう」と投げかけます。この指示に対して,「千の位」の定位点の位置に一玉2個を入れる子どもがいました。この表し方では二千になってしまいます。おそらく,「一の位」の定位点の左にある定位点を「一万の位」だと勘違いしたのでしょう。

実は,戦前のそろばんの定位点と現代のそろばんの定位点は異なっていました。戦前は「一の位」「一万の位」「一億の位」の位置に定位点がありました。

子どもたちに,戦前のそろばんの定位点が,前記位置にあった理由を考えさせました。

「数字は1,000て書くことがあるでしょ。だから,それに合わせて今の定位点は千の位のところにあるんだよ」
「一十百千で1シリーズ,一万十万百万千万で1シリーズ」
「1シリーズ毎に定位点を打っていたんだよ」
「定位点を見れば,万や億がすぐに分かる」

この話し合いの中から,子どもたちは「この勉強ってどこかでしたよね」と類似学習を想起していました。「大きな数」の学習で一億までの数の仕組みを学びました。そのときにも,「一十百千で1パック」という言葉で,数の仕組みを発見していきました。子どもたちは,その時の学習場面と類似であることに気づいてきたのです。

さて,子どもたちは日本の位取り記数法と戦前のそろばんの定位点の関係に気づくことができました。戦前の定位点の位置の方が,子どもにとっては大きな数をそろばんに入れるには分かりやすいのです。しかし,西洋の数字表記に合わせるために定位点は現在のように変更されることとなったのです。

2019年3月8日金曜日

メートル法 4年生の場合

メートル法についてお伝えしてきました。この学習は,移行措置で4年生にもあります。

長さ,重さの順で単位の位置を子どもたちと考えていきます。子どもたちは,途中で単位の共通点に気がついてきます。

「長さも重さもmがついている」
「mとgをベースとすると,そのベースの記号にmがどちらにもついている」
「だったら,水のかさも同じだ。かさにもmLがあるよね」
「本当だね。3つともmがついている」
「かさにはdLがあるよ。だったら,dgやdmがありそうだ」
「それならcmがあるんだから,cgやcLもありそうだね」

ここまで子どもたちと復習してきたのは,長さと重さです。ところが子どもたちはここまでの「m」の共通点への気づきから,思考の対象範囲を水のかさへも広げてきたのです。さすが4年生です。この思考の広がりを価値づけます。

すると今度は,思考の対象範囲がさらに広がります。

「長さにはkmがあるよ。重さもkgがあるから,かさにもkLがあるね」
「重さはさらに重たいtがあるね。だったら,長さはtmかな?」
「でも,それはないよ。だって,tは1つの記号だけだよ。ベースのm,g,Lと同じで,tは次のベースだよ」
「tが次のベースなら,例えば長さはbで,かさはsとかの1文字になるはずだね」

4年生の子どもたちは,「t」の特殊性を見事に分析しました。さらには,「t」が別のベース単位と見れば,長さやかさも新しい別のベース記号ができるはずだと考えたのです。論理的なすばらしい発想力です!


2019年3月6日水曜日

メートル法 子どもの発想はおもしろい!

 メートル法の学習の様子をお伝えしてきました。

これまでに,「重さ」「長さ」「かさ」のメートル法の学習を進めました。そこで,これまでに出てきた単位を整理していきます。すると,子どもたちは単位の間の空白部分に目を付けてきます。

「㎝があるなら,cgもあるんじゃないかな」
「それなら,かさのcLもありそうだね」
「まって,dLはあるでしょ。だったら,dmやdgもありそうだね」

これまでに子どもたちは,単位の共通点に気付いてきました。それらを「m3兄弟」「k3姉妹」と名付けてきました。その発想を,単位の空白部分にも当てはめたのです。すばらしい発想力です。子どもたちは,「c3兄弟だ」「d3兄弟だ」と盛り上がっていきます。「cL」「dm」などは実在する単位です。子どもたちは,前時の学習から類推して新しい単位の存在を発見したのです。

すると,子どもの発想はさらに広がります。

「だったらt(トン)3兄弟もあるのかな」
「tmやtLもあるのかも」
「それならt3兄弟だ」
「ここにトンカツも入れたら,t4兄弟だ」
「でもさあ,重さのtはtだけで他の単位の字がついていないから,これはないかも」

子どもたちは,tにも兄弟関係があると考えたのです。この発想も,それまでの学習から類推して考えたのです。この発想力も素晴らしいですね。さらに,食べ物の「トンカツ」まで入れて「t4兄弟」とは私もびっくりです。

t3兄弟は実在はしませんが,子どもの発想力の広がりは本当に素晴らしいものがありました。




2019年3月4日月曜日

メートル法 重さ〜かさ編

 3年生のメートル法の学習の2時間目です。子どもたちに次のように尋ねます。

「一番大きい重さの単位は何ですか」

「t」「1t」と子どもから声があがります。そこで,「1t」とノートの右端に書かせます。次に大きい単位を尋ねます。これは,「㎏」と声があがります。

「1㎏」をどの位置に書くのかを考えさせます。子どもたちは,前時で10倍になると1マス分間をあける学習を行っています。「1t=1000㎏」なので,この場合は3マス分あけることを子どもたちは見つけてきます。

このあと,さらに3マス左側に1gが来ることを学習します。ここで,次のように投げかけます。

「まだ習っていないけど,1gよりも小さい単位があります」

子どもたちは,理科の学習で「mg」の単位には触れているようでした。しかし,その具体的大きさについてははっきりとはしていませんでした。そこで,次のように尋ねます。

「1mgは何マスあけて書けばいいかな」

ここで子どもたちから,「長さと同じだよ」と声があがります。

「1mよりも小さい長さは1㎜でしょ。1mは1000㎜」
「だから,1㎜と1mは3マスあいた。重さも,㎎とgの間も3ますあく」

子どもたちは,前回の長さの学習での単位の配列をもとに,重さも同じ関係があると考えたのです。すると,長さと重さの2つの単位の共通点の気づきが,次の発見を引き出します。

「だったら,水のかさも同じだよ」
「1mLと1Lだね」
「1Lは1000mLだから,これも3マスあいている」
「どれもmがついている」
「長さも重さもかさも,m何とかになっている」
「m3兄弟だ」
「m3兄弟を1000倍すると,mがなくなる」

子どもたちは,かさの領域に対象範囲を広げたのです。そして,かさにも同様のきまりがあることを発見してきました。素晴らしい視点をもった子どもたちです。

さらに,子どもの追究は続きます。

「だったらkもそうだよ」
「1kmと1kgはどちらも,1mと1gの1000倍になっている」
「それなら,1Lの1000倍もあるのかな」
「1kLだね。でも,そんなのあるの?」

1kLの単位が存在することを教えます。すると子どもたちは,またもおもしろい視点で対象を見つめます。

「1km,1kg,1kLだから,どれもLがつくね」
「これはL3兄弟だね」
「長さと重さとかさは,別の単位だけど,兄弟だね」

それまでまったく別のものに見えていた長さ・重さ・かさの単位が,実は単位の記号に着目することで共通点があることが見えてきました。それを子どもたちは,「兄弟」と表現してきました。メートル法は単位の復習ですが,子どもの思いに寄り添うことで愉しく盛り上がる1時間を送ることができます。



2019年3月1日金曜日

教科書活用静岡大会もうすぐ満席です!

3月に入りました。いよいよ新年度準備が始まりますね。

さて,算数は学級担任であれば,毎日行う授業です。毎日ある教科は国語と算数だけです。この2教科が基幹学力と呼ばれる理由はそこにあります。この2教科をしっかりと教えることができれば,子どもの学力は確実に向上します。反対に,この2教科をいい加減に指導してしまうと,それにつれて他の教科の学力も低下してしまう可能性が高くなります。

算数は毎日指導する教科です。しかし,先生方にとって教える教科は算数だけではありません。国語も,社会も体育も図工も教えます。やることはたくさんあります。算数ばかりに教材研究や授業準備の時間を大きく割くことができないのが現実です。

そんなときに頼りになるのが教科書です。算数教科書は4月に全員に配られます。この教科書を使って授業を進める先生が多いのではないでしょうか。
教科書を授業冒頭から開き,そのまま教科書をなぞるような授業を進めても,子どもが「算数は楽しい」と感じることは難しいのではないでしょうか。教科書をベースにしながら,子どもが「算数は楽しい」と声があげてくなるような授業展開の方法があれば,先生方の授業準備時間も大きく削減できます。

算数教科書活用セミナーでは,教科書を活用しながら,ほんの少しの工夫をすることで子どもが算数好きになり,学力も向上する授業のあり方を提案していきます。

3月は静岡大会です。満席まであと少しとなりました。算数授業に悩まれている先生のご参加をお待ちしています。

詳細・お申し込みは以下をご覧下さい。


算数教科書活用セミナー・第5回(静岡大会) 

【テーマ】教科書教材を使った算数授業びらき&4月の算数授業 

◆授業びらきは、算数との出会いの時間。「今年の算数は何か違うぞ」と感じさせる大きなチャンス。教師の授業観も伝えます。◆算数科の本質は教科書の中にこそあります。教科書教材を使った授業びらきについて考えましょう。◆「授業びらき」と「4月の算数授業計画」が本大会のテーマ。2本の模擬授業を通した提案です。本研究会代表の尾崎正彦の講演もご期待ください。 

【プログラム】 
◆12:30 受付開始 

◆13:00~13:45 
講座『4月の算数授業はこう作る』尾﨑 正彦 (45分) 

◆14:00~15:30 
教科書を活用した模擬授業(30分×2本) 
 ① 大川 拓郎(上学年の算数授業びらき) 
 ② 中越 進(下学年の算数授業びらき) 
 ※小グループで学びのシェア。 
 ※尾﨑正彦&松村隆年のコメント。 

◆15:45~16:30 
『4月単元攻略法』~全6学年の教材研究会~ 
教科書を使った教材研究の方法とコツを、小グループで学びあいましょう!(希望学年にご参加) 

◆16:30~17:00 
算数授業づくりQ&A 

【会場】常葉大学 静岡草薙キャンパス(A210) 
【参加費】2000円(教員志望の学生は1000円) 

※ 本セミナーは「学校現場の教員」と「教員志望の学生」対象です。それ以外の方は参加できません。

申し込みは以下のアドレスからお願いします。
https://kokucheese.com/event/index/548891/