2016年12月29日木曜日

2017年全国算数授業研究会の日程決まる!

2016年も間もなく終わります。

12月21日に,2020年学習指導要領改訂に向けた中央教育審議会答申が出されました。主体的な学び・対話的な学び・深い学びを授業を通して具現することが求められています。このほかにも,新しいキーワードが散りばめられています。これまで子どもの声に寄り添った授業展開を進めてきた先生にとっては,その授業スタイルを後押しする答申です。一方,知識・理解の注入型授業スタイルが算数授業のほとんどを占めていた場合は,見直しが必要となります。

先日,高知を会場に開催れた全国算数授業研究会は,会の発足当初から子どもの声に寄り添った授業展開の進め方を研究してきました。高知大会では,どの教室でも子どもの声に寄り添って授業を進める先生方の素敵な姿と,子どもたちの生き生きとした姿が見られました。

そんな全国算数授業研究会の2017年の大会日程が決定しました。

第29回全国算数授業研究大会   8月8日(火)~10日(木) 筑波大学附属小学校
全国算数授業研究会山口大会   12月26日(火) 

詳細はまだ未定です。

子どもの声に寄り添い,子どもがアクティブに追究を続ける算数の進め方を,実際の公開授業を通して議論しあう会です。私たちと一緒に,これからの算数授業の進め方を語り合っていきましょう。

2016年12月27日火曜日

高知の6年生と算数を愉しみました!

クリスマスイブの12月24日,高知市立神田小学校で「全国算数授業研究会高知大会」が開催されました。クリスマスイブの日にもかかわらず,子どもたちが登校してくれました。また,全国から300名を超える先生方が参加されました。

6年生の元気な子どもたちと算数授業を愉しみました。数字カードの入った2枚の封筒を提示し,「100に近い方が勝ちゲームをしよう」と投げかけます。クラスを2チーに分け,まずは封筒を選択させました。封筒には,それぞれ95と102の数字が書いてあります。この数字は,封筒の中の数字カードの平均値です。95の封筒を選択したチームは,ゲーム開始前は沈んでいました。102を選択したチームは,すでにうきうきです。平均値が100に近い数字カードを選択すれば勝てると子どもたちは考えたからです。

ゲームを始めます。代表の子どもが封筒の中の数字カードを1枚ずつ取り出します。負けを覚悟していた95を選択したチームは,予想に反して100に近い数字カードを引き続けます。勝ちを確信していた102を選択したチームは負け続けます。4回戦が終わった時でした。ここまで4連敗の102を選択したチームから,「102は離れた数字ばっかり。95は近い数字ばっかり・・・」と呟きが聞こえます。封筒に入っている数字カードを,100を基準にしてどの位置にあるのかという視点で見直した呟きです。すばらしい気付きです。この呟きを,クラス全体で共有化していきます。この過程で,今度はジェスチャーで「102は離れた数字ばっかり」を表現する子どもが現れました。このジェスチャーの意味を,共有化していきます。すると「カードでできる」という声が生まれてきます。ばらばらに貼られた数字カードを,度数分布のように子どもたちが並べ替えてくれました。

数字カードを並べ替えることで,「102は離れた数字ばっかり。95は近い数字ばっかり・・・」の意味がより見えやすくなりました。最後に,「もう1回,別の封筒でゲームをするとしたらどんな情報がほしいですか」と尋ねました。子どもからは,平均値ではなく「100から離れた数字がどれだけあるのか,100に近い数字がどれだけあるのか知りたい」と声があがりました。平均値の限界への気づきと新しい視点を,子どもたちは1時間の授業を通して見つけてくれました。

算数への素敵な視点がたくさん生まれたすばらしいクラスでした。高知の子どもの算数の視点は最高です!

2016年12月19日月曜日

算数授業づくり講座 IN西宮 のご案内

先日お知らせしました,兵庫県で行われる「算数授業づくり講座」の詳細が決まりましたので,お知らせします。私以外にも,算数を愛する3人の先生方のスペシャル講座もあります。算数の創り方を,共に学びましょう。

講座の詳細は,以下の通りです。


『尾崎正彦先生の算数授業づくり講座・4/15土・西宮』

【日 程】2017年4月15日(土) 10:30~17:00
【会 場】西宮市立教育会館(兵庫)
【参加費】3000円 (学生さん、春から教壇に立つフレッシュ先生は1000円)
【講 師】
 尾崎正彦先生(関西大学初等部)
 直海知子先生(大阪府公立小学校)
 松井恵子先生(兵庫県公立小学校)
 榎並雅之先生(姫路大学)special guest

◆スタディサプリ(リクルート)の算数授業ご担当の尾崎正彦先生は算数教科書の著者、授業名人でもいらっしゃいます。マイスター教員に学ぶ、算数授業づくり講座が今年も開講です。◆直海知子先生は朝日新聞「花まる先生」で実践が全国に紹介。若手育成にも力を入れておられるよき先輩です。割合指導の研究を重ねてこられた直海先生のお話は必聴です。◆松井恵子先生は兵庫県の優秀教職員として表彰。松井先生の算数教室はすべての先生方が一度見ておくべきです。1年生の育ちを余すところなく話していただきます。◆本講座のspecial guestとして算数研究に造詣が深い榎並雅之先生がご登壇。新しい算数教育の方向性を話して。◆本講座は演習形式なので「分かったつもり」で帰ることができません。inputとoutputがセットなので、学びが深まります。◆フレッシュ先生や、春からの算数授業を変えたい先生に、オススメの一日講座です!

【プログラム 詳細】 

◆受付
10:30~10:50

◆1時間目(45分)尾崎正彦先生
10:00~10:45
『教科書教材でつくる算数授業』
 ~子どもの問いを生み出すコツ~
  ・学びのシェアリング(5分)

◆2時間目(45分)松井恵子先生
11:00~11:45
『1年生の算数授業づくり1年間』
 ~松井学級。子供たちの育ちの秘密を大公開~
  ・学びのシェアリング(5分)

<昼休憩・60分>

◆3時間目(30分)榎並雅之先生
13:00~13:30
『新しい算数教育の方向性』
 ~新学習指導要領で、算数教科は何を大事にしているか~
  ・学びのシェアリング(5分)

◆4時間目(45分)直海知子先生
13:45~14:30
『割合を理解させる指導ステップ1.2.3!』
  ・学びのシェアリング(5分)

◆5時間目(45分)尾崎正彦先生
14:45~15:30
『算数授業と国語力&学級力』
  ・学びのシェアリング(5分)

◆6時間目(30分)
15:45~16:15
『参加型!4月単元教材研究会(全6学年)』
(※参加者の皆さんは、算数教科書の上巻を持参ください。小グループをつくり、全員が話す教材研究会を開講します。各校に持ち帰り「学年教材研究会」のモデルとなります。)

◆質疑・閉式(17:00終了)

申し込みは,以下のアドレス(コクチーズ)からお願いします。

2016年12月16日金曜日

新刊本「算数の授業の腕を上げる51の技」(明治図書)発刊のご案内

間もなく冬休みです。忙しかった日々も,一段落がつく次期です。

さて,来年春(2017年)に明治図書から新刊本を発刊します。現段階の仮題は「算数授業の腕を上げる51の技」です。この本は,春に刊行した「算数授業つくりはじめの一歩」の続編とも呼べるものです。「はじめの一歩」が算数授業つくりの初級編だとしたら,本書は中級編とも呼べるものです。子どもの深い学び・アクティブな姿勢を引き出すための授業の創り方を紹介しています。

 目次は次の通りです。子どもがアクティブに動き出す授業は,形式に子どもを当てはめることでは実現しません。子どもが「実験したい」「この続きを調べたい」と追究意欲を感じるような授業創りが必要です。そのための51の技を紹介しています。来春の発刊をご期待ください。

序章 算数授業の腕前次第で子どもは変わる
  アクティブに育った子どもは授業を創り出す
  導入で8割が決まる算数
  呟きを活かす教師・活かせない教師

1章 子どもの問いを引き出し、つなぐ腕を上げる4の方法
  1 友だちの考えとのズレを引き出す
  2 予想とのズレを引き出す
  3 感覚とのズレを引き出す
  4 既習事項とのズレを引き出す

2章 課題づくり・発問の腕を上げる12の方法
  5 先行知識で対応できない仕掛けをつくる
  6 似て非なる2つの課題を扱う
  7 情報を整理し過ぎない
   8 認識の曖昧さを自覚させる
   9 安定感を崩す
  10 自由実験で仕掛ける
  11 拡がりのある課題で仕掛ける
  12 大量の情報を提示する
  13 見せ方を変える
  14  条件不足にする
  15 関係がありそうで本当はない2つの課題を扱う
  16 答えがない課題を扱う

3章 子どもを見る腕を上げる4の方法
  17 算数が苦手な子どもに注目する
  18 先行知識をもつ子どもをゆさぶる
  19 「わかりました」に騙されない
  20 瀬戸際に立たせることで意思表示させる

4章 話し合いづくりの腕を上げる10の方法
  21 マイチョークで参加意欲を高める
  22  板書した子以外の子どもを巻き込む
  23  気持ちを語らせる
  24 「わからなさ」を表現させる
  25  本時のポイントを全員に再現させる
  26  念押し発問で話し合いをまとめる
  27  子どものつぶやきをキャッチする
  28  価値あるつぶやきを共有化する
  29  一般化の考えを使わせる
  30  教師が親切に解説しすぎない

 5章 ノート指導の腕を上げる5の方法
  31 「思考の検索先」という意識で指導する
  32 ていねいさと自由さのバランスをとらせる
  33 振り返りの目的を意識させる
  34 振り返りでは目標数値を提示する
  35 ノートはその日に返す

6章 数学的な考え方を育てる腕を上げる7の方法
  36  相反する意味「だったら」
  37  混沌からアクティブの「例えば」
  38 実験範囲の拡張「たまたまじゃないの」
  39 表現したいことの高まり「絶対に」
  40 一般性の吟味「もし…だったら」
  41 素直な疑問「でもさあ」
  42  数学的な考え方への確信「やっぱり」

7章 板書の腕を上げる6の方法
  43  検索インデックスとなる1行目にこだわる
  44  めあての扱いを工夫する
  45 まとめの扱いを工夫する
  46 子どものつぶやきを色チョークで明示する
  47 1時間の流れを1枚で見せる

8章 教科書の使い方の腕を上げる4の方法
  48  教科書の見せ方を変えてみる
  49  教科書の考え方を予想させる
  50  公式・まとめの間を埋めてみる
  51  練習問題の進め方を工夫する

2016年12月5日月曜日

算数スタートアップ講座のご案内

2017年4月,兵庫県西宮市で算数スタートアップ講座を開催します。会場は未定ですが,1年間を見通した算数の授業創りのポイントと,学級創りのポイントを国語力と関連つけながら演習形式で実施します。4月の授業や学級創りをどのように進めるかで,1年間が決まります。

この講座では,西宮市の先生方の実践発表も行われます。こちらもきっと役立つ講座です。

予定している私の講座内容は次の通りです。

2017年4月15日(土) 兵庫県西宮市(予定)

1本目講座(45分)
『教科書教材でつくる算数授業 ~子供の問いをどう生むか~』

2本目講座(45分)
『算数授業と国語力&学級力』

詳しい日程など詳細が決まりましたら,またお知らせいたします。

2016年11月29日火曜日

平成28年全国算数授業研究会高知大会のご案内


全国算数授業研究会高知大会が,以下の日程で高知市立神田小学校を会場に開催されます。

平成28年12月24日(土) 8:50〜16:30

日程や授業者などの詳細,及びお申し込みは,以下のサイトからアクセスして下さい。

http://shisanken-kochi.jimdo.com/全国算数授業研究大会/

私も,6年生の子どもたちに授業を行います。単元は「資料の整理」です。研究授業で取り上げられることの少ない単元です。大会テーマ「子どもが動き出す算数授業!」を展開するために,資料の整理というあまりおもしろさのない単元をどのように展開していくのかを提案したいと考えています。

神田小学校へは,10月に訪問させていただきました。永野校長先生を筆頭に,先生方はもちろん,子どもたちもとても元気でやる気に溢れた学校です。私が授業を行う6年生も本当に知的で元気な子どもたちでした。きっと,どの学年も愉しい算数授業が展開されることと考えています。

学習指導要領もまもなく発表されます。新しい時代の算数は,「子どもが動き出す算数授業!」をどのように構成していくかがポイントです。これからの算数授業のあり方をともに高知で学びましょう!

2016年11月14日月曜日

関西大学初等部研究会申込受付開始

お待たせしました! 平成29年2月4日(土)に開催される関西大学初等部研究会の申し込みが始まりました。以下のアドレスより,お申し込みください。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2016/11/7-1.html

私は,算数5年生の公開授業を行います。単元は「分数のわりざん」です。関西大学は私立学校ですので,算数では独自のカリキュラム編成をしています。6年生で学習する「分数のかけ算」「分数のわり算」を5年生で学習します。この6年生内容の部分を,5年生で授業を行います。5年生の子どもたちが,どこまで6年生内容に食らいついていけるかをご覧ください。

申込〆切は1月20日16時です。お早目にお申し込みください。

2016年11月3日木曜日

公開研究会花盛り(胎内市中条小学校公開研究会2次案内)



11〜12月は,全国各地で公開研究会が数多く開催されます。特に,指定研究を受けた学校の公開が多いのがこの月です。

12月9日(金)には,新潟県胎内市立中条小学校で,国立教育政策研究所教育課程研究指定校の公開研究会が行われます。以前にもお知らせしましたが,2次案内が中条小学校のホームページに掲載されています。詳細は,以下のアドレスからご覧下さい。

tainai-ed.nxc.jp/nakajo-es/

この研究会では,私は算数の指導・講演を行うことになっています。中条小学校の研究テーマは,次の通りです。


活用する子どもを育てる授業の創造 
~教科横断的な論理的思考力の育成~ 

算数はもともとが論理を育てる教科です。その前提のもとで,どのように授業を構成していけばよいのかがポイントになります。当日公開される授業や私のクラスの授業をもとに,講演を行いたいと考えています。御近隣の先生方,是非,ご参加下さい。

2016年11月2日水曜日

国立教育政策研究所教育課程研究指定校の公開研究発表会(京都府向日市第2向陽小学校)のご案内



11月10日(木)に京都府向日市第2向陽小学校で,国立教育政策研究所教育課程研究指定校の公開研究発表会が開催されます。

研究主題
『みんなで学び合い!!』 
~児童を「授業で」「環境で」「協働で」育てる算数の実践へ~ 

当日は,公開授業の他にも国立教育政策研究所の小松信哉氏の講演もあります。この研究公開には,これまでに私も何度か関わっています。非常に勉強熱心な先生方の集団です。是非,ご参加下さい。

詳細・申し込みは,以下の第2向陽小学校のホームページでご覧下さい。



www.kyoto-be.ne.jp/2kouyou-es/cms/?page_id=13

2016年10月24日月曜日

教科書教材から問いを引き出す

算数教科書を使って授業を進める先生は多くいます。先日,5年生の「分数と小数・整数」単元で,教科書にある問題(学校図書)をそのまま子どもたちに投げかけました。次の問題です。

「2Lの牛乳を人で等しく分けるとき,1人分は何Lになるでしょうか」

教科書では,この後,の中に順に1〜5の数字を入れて計算する展開になっています。

私のクラスの子どもたちから,先の問題に出会った瞬間,「あれ,等しく分けられない人数があるよ」と呟きがあがりました。そこで,この声をそのまま子どもたちに投げ返しました。

「等しく分けられない人数があるってどういうこと?」

子どもたちは,次のような反応をしてきました。

「偶数だと分けられるけど,奇数の人数だと分けられないんじゃないかな」
「そうかな? 5人は奇数だけど分けられるよ」
「3人は分けられないよ」
「そうだよ。計算すると0.666・・・で永遠に6が続くよ」

 そこで,この声を再び,そのまま子どもたちに投げ返します。

「3人だと2Lの牛乳は等分できないんだね」

「分けられるよ」「分けられるはずだけど,分けられないよ」と,子どもの反応にズレが生まれてきます。イメージとして2Lを3等分できることは分かります。しかし,計算すると,微妙なあまりが出てしまいうまく分けられなことに,子どもたちは違和感をもったのです。それが,先の声になります。

授業ではその後,図を使い分数を用いることで2Lを3等分できることを見つけていきます。

教科書の問題を使っても,子どもの声に耳を傾けると価値ある呟きの声が聞こえてきます。その呟きを授業の舞台に載せることで,教科書のその後の展開を超える授業を進めることができるのです。価値ある子どもの呟きや声をキャッチできる力が,算数を愉しくしていきます! 

2016年10月17日月曜日

平成29年2月 関西大学初等部研究発表会のお知らせ

毎年恒例の関西大学初等部研究発表会を,今年度も実施します。日程は,次の通りです。

平成29年2月6日(土) 午前8時20分受付開始予定

現在,1次案内を当校ホームページにアップしています。正式な申し込みは,2次案内がホームページにアップされる11月中旬以降になります。

私は,算数(5年生)の授業を公開します。5年生ですが,6年生内容につながる分数の学習場面を提案します。子どもたちが,アクティブに問題場面に働きかけ新しい方法を発見する授業を提案する予定です。詳細は,2次案内をご覧ください。

なお,お申し込みいただいた人数が規定数を超えた場合,安全確保のために参加申し込みを〆切らせていただくことがあります。お早めのお申し込みをお願いいたします。


詳細は,以下の当校ホームページをご覧ください。

http://www.kansai-u.ac.jp/elementary/2016/10/post-419.html

2016年10月16日日曜日

佐渡の学校を訪問しました

先日,新潟県佐渡市の小学校を訪問しました。佐渡は私の故郷です。

2つの小学校を訪問しました。どちらの学校の子どもたちも,とても素直でびっくりしてしまいました。低学年はもちろん,高学年の子どもたちも真剣に先生の話を聞いていました。それまでの先生方の指導の素晴らしさが実感できた時間でした。

また,授業をされた先生方の研修に掛ける意気込みも大変に高いものがありました。「授業診断」研修を両校とも行いました。全クラスの授業を参観し,先生の授業方法を評価する研修です。とてもシビアな研修です。全員の授業に対して,私が評価を行うからです。きっと先生方もひやひやして,この日を迎えられたのだと思います。しかし,研修会での先生方の学びの姿勢は本当に真剣でした。プラスの話だけではなく,厳しい内容の話にも真剣に向き合っていただけました。これなら,佐渡の子どもたちも大丈夫です。

これからも故郷・佐渡の子どもたちのために,私にできることを進めていたいと考えています!

2016年10月6日木曜日

高知の逞しい子どもたち 最高でした!

先日,高知の小学校に訪問しました。全校児童600名を超える学校です。午前中は,全クラスの算数授業を参観しました。どのクラスからも,素直で元気な子どもたちの素敵な声が聞こえてきました。このような声が生まれる背景にあるのは,4月から算数授業を指導している先生方の力量の高さにあります。教師の指導力で,子どもたちはぐんぐん成長していきます。

午後は5年生の子どもたちに,「偶数・奇数」の授業を行いました。「1~5の数字カードを全部使って,カードの間に+・-を入れて計算をしよう」と投げかけました。まずは,答えが最大になる数を尋ねます。これは「1+2+3+4+5」で15となります。次に,最小の答えを計算をせずに予想をさせました。「0」「1」「4」と予想にズレが生まれます。ズレを感じた子どもは,一気にアクティブになります。ここから先は,子どもたちに自由に実験を任せました。
「13ができた」「7ができた」と,実験開始後,声があがります。さらにしばらくすると,「4はできないなあ」「4は無理なの」と呟きがあがります。答えが見つけられた式を,子どもたちに板書させます。板書が終わると,子どもたちが次々と手をあげてきます。「きまりがある」と声があがります。「奇数の答えはあるけど,偶数の答えはないよ」「偶数の答えは出ないね」と,この問題の秘密を発見した声が生まれてきます。以前に学習した「偶数・奇数」の言葉を使って,見つけたきまりを分かりやすくまとめることができました。
実験開始前の子どもたちは,15までの答えを見つけられると考えていました。ところが実際に実験をすると,奇数の答えしか生まれないのです。予想とのズレに出会うことが,子どもたちにきまりを発見させていったと考えられます。素敵な子どもたちと,楽しい算数授業ができた1時間でした。

こんな素敵な出会いのあった高知で,12月24日(土)に全国算数授業研究会高知大会が開催されます。私も公開授業を行います。是非,ご参加ください。
詳細は,次のアドレスまで。 http://shisanken-kochi.jimdo.com  から「全国算数研究大会」をクリックして申し込みください。

2016年10月2日日曜日

『アクティブラーニングでつくる算数の授業』好評により再版決定! & 授業診断in高知・佐渡

2020年の学習指導要領改訂に向けて,「アクティブラーニング」のキーワードが教育界を席巻しています。子どもが主体的に算数の学習問題を創り出す力を育てていく授業を構成していくことが,本当の意味での「アクティブラーニング」授業です。形式的にグループ学習を進めても,子どもが新しい問題場面を創り出すことはできません。
どのように日々の授業を改善していったらアクティブな子どもが育つのかをまとめたのが,春に東洋館出版社から発刊した『アクティブラーニングでつくる算数の授業』です。好評により,再版が決定しました。ご購入いただいた皆様,ありがとうございます。

10月は,高知市,そして私の故郷・新潟県佐渡市の小学校を訪問し,全学級の算数授業を参観し,授業診断を行います。企業で行われている経営コンサルタントによる業務改善の手法を,学校現場に取り入れた企画です。アクティブな子どもを育てるためには,どのように授業を改善していけばよいのかを,訪問先の先生方とご一緒に考えていきます。

2016年9月25日日曜日

ループ理論で分数のたし算を構成する

5年生に「分数のたし算・ひき算」単元があります。教科書では,通分・約分の学習を終えてから,異分母分数のたし算の学習へと進みます。系統性を意識した展開です。しかし,この展開では分数のたし算場面で子どもが問いを感じることはありません。通分・約分は,異分母分数のたし算で子どもが困らなようにするために位置づいているからです。
アクティブな子どもを育てるためには,子どもが学習内容に必要感・問いを持つことが大切です。そこで,通分・約分と分数のたし算を同時進行で進める展開を行いました。
子どもたちに,「ブロックつかみどり大会をしよう」と投げかけます。1回戦は,1/6の大きさのブロックだけがつかみとられました。この場合は,同分母なので既習の計算で合計得点が求められます。2回戦は,1/6と1/3の大きさのブロックがつかみとられました。「分母が違うから計算できない」「さっきは基準(分母)が同じだから計算できたけど,これでは基準が違う」「基準が同じならいいのに」と,子どもたちは異分母のブロックに出会って感じたことを表現してきます。問いが生まれました。
その後,子どもたちはブロックを使って1/3が2/6と同じ大きさであることを見つけていきます。つまり,1/3を2/6に変身することで同分母同士のたし算へと変換できます。通分を学習していない子どもたちは,ここでブロックという具体物で分数を変換する方法を見つけていきます。
ブロック操作で分数を変換することを見つけた子どもたちに,「そうか,ブロックを使えば同じ分母の分数に変身することができるんだ」と念押し発問を行います。これに対して,「ブロックを使わなくても,計算でわかるよ」「だって,1/2と2/6は1/3をもとにすると,分母も分子も2倍ずつすれば2/6に変身できるよ」と,計算で同分母の分数を見つける方法にも気付いていきます。
異分母分数のたし算との出会いで感じた問いから,子どもたちは通分の必要感に気付き,その方法も見つけることができたのです。
時には,単元構成の配列を見つめ直すことで,子どもがよりよく問いを感じるアクティブな展開を進めることができますね。このように単元構成を入れ替える授業構成方法を,元聖徳大学教授・手島勝朗氏はループ理論と命名しました。

2016年9月18日日曜日

当事者意識から問いを引き出す

子どもたちに「ブロックとばしゲームのチャンピオンを決めよう」と投げかけました。4人1組でゲームを行います。ゲーム用紙の上でブロックを指ではじいて得点を競うゲームです。ゲーム用紙には,様々な大きさの円が描かれています。ブロックがそこに入れば5点獲得です。スタートラインに近い位置の円は小さく,遠い位置の円は大きくしてあります。簡単なルールのゲームです。

子どもたちは大喜びでゲームに興じました。ゲーム終了後,班のチャンピオンを発表してもらいます。「A君 10点」「B君 15点」「C君 10点」などと発表が続きます。D君の発表の時です。一瞬静まり返った教室が,あっという間に喧騒に包まれました。「D君 20点」この結果を聞いた一部の子どもたちが騒ぎ始めます。「なんで?」「それはありえない」「おかしい」「3回しかしていないのに,絶対にそれはない」・・・。実は,班によってゲームの回数が異なるように仕掛けをしておいたのです。D君の班は5回ゲームを行いました。一方,3回・4回の班もありました。彼らは,猛烈に抗議をしてきます。

「おかしい」と叫ぶ理由をクラス全体で共有します。「だって,班によってゲームの回数が違ったら不公平だよ」と説明します。もっともな理由です。そこで,どうやったら正しくチャンピオンを決められるのかを考えさせました。

「4回目以降の結果を使わない」という考えが生まれました。ところが,6回のゲーム回数だった班もあります。その班のT子は,4~6回目に得点をしていました。4回目以降を使わないと,「T子がかわいそう」という声があがります。

「公倍数を使えばいい」とう考えも生まれます。前単元で学習した内容を活用した考えです。ところが,この考えに対して「めんどうだよ」「今はいいけど,別の回数だったら大変」と声があがります。今回は,3回・4回・5回・6回のゲーム回数です。4種類の数値の公倍数を求めることは容易ではありません。さらに,「11回,19回,23回,29回とかの素数回数になったら大変すぎる」という声もあがります。見えてきた解決方法を一般化しようとする視点が,この時点で生まれてきたのです。子どもたちの鋭い視点にびっくりしました。

「倍数がだめなら減らしたらどうかな」「だったら1回あたりにしたらどうかな」「D君なら4回ゲームして20点だから20÷4=5点でしょ。1回当たり5点だね」「それなら簡単だね」と,今度は1回当たりのゲーム回数で考えるアイディアが生まれてきました。公倍数は,全体のゲーム回数を増すと仮定して考えました。ところがその方法に限界を感じた子どもたちは,逆思考で減らすことを考えたのです。この逆転の発想にもびっくりでした。

この授業は,5年生「平均」の導入です。子どもたち1人1人が取り上げられる数値(データ)の当事者であったからこそ,「不公平感」や「かわいそう」「めんどう」などと感じることができたのです。

2016年8月8日月曜日

次は全国算数授業研究会高知大会

夏の全国算数授業研究大会が終わりました。今大会では,3年生「かけ算」の公開授業を行いました。積が,123➡234➡345➡・・・と111ずつ増加するかけ算の計算を子どもたちと楽しく作り上げる1時間を構成していくことができました。きまりの限界を感じた子どもたちが,再び新しいきまりを発見して大喜びする姿を愉しむことができた1時間でした。私が想定していたゴールとは異なるゴールでしたが,大切なことは子どもがアクティブに追究したいゴールへとサポートすることです。その意味でも,子どもの実態に応じて,教師が的確にアクティブな子どもを応援できる展開になったのではないかなと考えています。とにかく愉しい1時間でありました。

さて,次の全国算数授業研究大会は12月24日に開催される高知大会です。会場は,高知市立神田小学校です。大まかな日程は以下の通りです。

 8時20分~ 受付
 8時50分~ 授業1 高知の先生方の公開授業12本
10時30分~ 授業2 直海先生(豊中市立熊野田小) 
                                       緒方先生(日野市立日野第5小)
               河内先生(豊島区立高南小)  
                                        岩本先生(呉市立仁方小)
               江橋先生(国立学園小)
                                松山先生(高知大附属小)
13時20分~ 授業3 山本先生(筑波大附属小)
                                 夏坂先生(筑波大附属小)
               尾﨑(関西大学初等部)
15時 5分~ シンポジウム 
               田中先生(筑波大附属小)
                               柳瀬先生(三鷹市立高山小)
               宮本先生(熊本市教育センター) 
                                       土居先生(高知市教育委員会)

問い合わせは,次のところまでお願いします。
 高知市立美里小学校 中川弘子 
 ☎ 088-8470271
 FAX  088-847-0272

熱い高知で再び算数を愉しみましょう!


                   



2016年8月3日水曜日

新潟県胎内市立中条小学校研究会のご案内

熊本市立池上小学校の研修会に参加してきました。池上小学校だけではなく,熊本市内の先生方も多く詰めかけていただきました。アクティブな算数授業創りに対する熊本の先生方の意気込みがひしひしと伝わる研修会となりました。震災に負けない熊本の先生方の授業改革に掛ける意気込みがあれば,熊本の子どもたちもきっと愉しい算数授業を送ることができるでしょう。

また,私が算数を教えている5年生の子どもたちが作成した算数絵馬を,池上小学校の子どもたちにお届けしました。夏休み明けの子どもたちが,笑顔で算数絵馬にチャレンジしてくれることを楽しみにしています! 江戸時代の日本では,神社に算額と呼ばれる絵馬を奉納していました。算額を通して,地域の人々が算数での交流をしていたのです。平成の算数絵馬で,熊本の子どもと関西大学の子どもが交流できれば最高です。

さて,12月9日(金)に新潟県胎内市中条小学校で国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業の公開研究会が開催されます。
研究テーマは,「活用する子どもを育てる授業の創造~教科横断的な思考力の育成~」です。
私は,公開される算数授業をもとに講演を行います。思考力の育成は日本の子どもたちの喫緊の課題の一つです。公開授業をもとに,どのような手立てを行うことで子どもたちの思考力が高まるのかを,ご参会の先生方と考えていきます。

この研究会の詳細は,中条小学校のホームページを参照ください。

2016年8月1日月曜日

第28回全国算数授業研究大会のご案内

8月に入りました。今年も暑い夏になりそうです。8月6日~8日には,この夏をさらに熱く盛り上げる「第28回 全国算数授業研究大会」が開催されます。会場は,筑波大学附属小学校です。

今回の大会テーマは,

「子どもがアクティブになる瞬間・時間(とき)」

です。アクティブラーニングの本当の姿,算数における子どもがアクティブになる姿を,実際の公開授業を通して提案します。アクティブラーニングは次の指導要領改訂に向けたキーワードです。しかし,理論は分かっても,実際の授業はどのように進めればいいのと考える先生方も多いのが実情です。その疑問を公開授業を通して,参会の先生方とともに考えていきたいと考えています。

この大会の2日目には,私も公開授業を行います。3年生「かけ算の筆算」場面を公開します。練習問題場面でも子どもがアクティブに動き出す授業を提案します。どんな授業になるのか楽しみにされてください!

私の他にも,筑波大学附属小学校の夏坂先生・中田先生・大野先生の公開授業や田中先生の講演もあります。また,公開授業者を会場の先生方の投票で決定するという恐ろしい企画もあります。この企画には,私の主宰する「算数授業を愛する会」のメンバーである関西学院初等部の木下先生も挑戦します。このほかにも,多くの公開授業やワークショップなどが盛りだくさんです。

この夏,全国算数授業研究大会で算数を熱く語り合いましょう!

大会期日 8月6日(土)12時30分~8月8日(月)16時
会   場 筑波大学附属小学校
会   費 8000円
申   込 当日受付のみです。ただし,先着1000名分の資料のみ用意しています。

2016年7月14日木曜日

高知算数セミナーのご案内


間もなく夏休みです。1学期,クラスの子どもたちは算数授業を愉しむことができたでしょうか? 
先日,偶数と奇数の授業を行いました。「あきら君とゆう子さんがカルタ大会をしました。1回戦はゆう子さんが6枚差で勝ちました。2回戦は,ゆう子さんは1回戦よりも1枚多くカルタをとりました。あきら君とゆう子さんの差は何枚になったでしょう」の問題を考えました。カルタの枚数が明示されていないため,子どもたちは「例えばカルタが10枚だったとするでしょ」と具体例をあげて場面を分かりやすい事例に置き換えて考え始めました。10枚では,差は8枚になります。この事実を見た子どもたちは,「カルタ10枚の時は差は8枚だけど,他のカルタの枚数だと8枚にならないんじゃないかな?」と考えます。一般化の世界に子どもたちの思考が拡がっていきます。そこで,子どもたちに自由にカルタの枚数を設定して実験させます。実験の途中から「あれ? 2で割れる数の時にしか1回戦の差が6枚にならない」「11枚や13枚では1回戦の差が6枚にならない」ことに気づきます。6枚差ができる場合とできない場合を整理していくと,カルタの偶数枚数と奇数枚数に分けられていきます。偶数と奇数を用いて考える必然性に子ども自らが気づいた授業でした。
 
さて,7月25~26日は高知算数セミナーに参加します。7月26日(火)は高知大附属小学校の子どもたちに,公開授業を行います。5年生「単位量当たりの大きさ」単元です。高知の子どもたちに授業をするのは久しぶりです。子どもたちと算数を愉しみたいと考えています。
 
高知算数セミナーの詳細は以下の通りです。
 
 
 
【高知算数セミナー】
 
夏の研修として恒例となっている高知算数セミナーも今年で第46回を迎えることになりました。

今回は筑波大学附属小学校・関西大学初等部の先生方の格別のご理解とご協力をいただき,各方面の算数専門の先生が講師として参加してくださいます。同一単元・同一内容の授業を2人の先生にしていただき討議する『立ち合い授業』も計画しています。高知ではなかなか見られない参考になる授業,そして実践をもとにした講演,白熱した授業討議を展開してくださいます。

また,講師の先生方のご協力をいただき,高知会場に引き続いて,第31回幡多算数セミナーも開催いたします。夏限定の願ってもない研修の機会ですので,是非多くの方にご参加いただけますようここにご案内申し上げます。 
 
 
会 期  7月25日(月)・26日(火) 

   高知会館 (高知市本町5丁目6-42)088-823-7123

1.主 催 土佐教育研究会算数・数学部会  高知市算数研究会

2.共 催 高知県教育センター

3.後 援 高知県教育委員会 高知市教育委員会
 
      高知県市町村教育委員会連合会    
      
      高知県数学教育研究会 高知市教育委員会 

4.主 題 問題を解決する算数活動
      ~子どもの思考過程を大切にした授業づくり~ 


5.講 師 
 
正木 孝昌先生(前 國學院栃木短期大学)
 
田中 博史先生(筑波大附属小) 
    授業 3年 題材 「わり算」
 
山本 良和先生(筑波大附属小)
    講演 「算数授業とICT」
 
盛山 隆雄先生(筑波大附属小)  
    授業 6年 題材 「割合の表し方を考えよう」
 
大野  桂先生(筑波大附属小) 
    講演 「すべての子どもの学力に応じる算数授業のつくり方」
 
尾﨑 正彦先生(関西大学初等部) 
    授業 5年 題材 「単位量当たりの大きさ」
 
松岡  謙先生(高知市立泉野小)
    授業 6年 題材 「割合の表し方を考えよう」

 
7.日 程

7月25日(月)

8:30 9:00  9:55 10:05    11:00   11:50 14:00  15:00   16:00 17:00
 
受付
3年授業
(田中
先生)
休憩
開会行事
研究
討議
休憩
講 演
  (山本
  先生
昼食
6年授業
(松岡
   先生)
休憩
6年授業
  (盛山
   先生)
休憩
研究
討議
連絡


 

7月26日(火)
 
8:30 9:00  9:45 10:00      10:40  10:55       11:45   12:00
 
受付
5年授業
(尾﨑先生)
休憩
研究討議
休憩
講 演
(大野先生
閉会行事


 

8.会 費 3,000円(土佐研会員及び高知市市教研会員)
      
      3,500円(その他の参加者)
 
      1,000円(大学生)
 
9.申し込み先
 
高知・幡多会場とも,当日受付が可能です。
(高知県教育センター教職員研修管理システムによる事前受付もできます。)
 
 

2016年7月10日日曜日

熊本でアクティブ算数体験しましょう!

8月3日(水)午前9時~正午迄、熊本市立池上小学校でアクティブな算数授業の作り方を体験するワークショップ型研修を開催します。参加される先生方に授業プランを考えて頂きながら、アクティブな算数授業の作り方を実感して頂きます。

巷には、アクティブラーニング関連の本が多数溢れています。ある形式に子どもを当てはめることで、アクティブラーニング成功と主張する本もあります。しかし、アクティブに追究する子どもは形式に当てはめられるのでしょうか?本当にアクティブな子どもは、形式から飛び出していくはずです。そんな授業の作り方を御一緒に学んでいきましょう!

池上小学校の藤本校長先生は、私と同じ研究会で長年ご一緒してきた盟友です。きっと藤本校長先生からも素敵な算数の話をお聞きできると思います!

ご参加の方は、学校名・参加者名をFAX にて池上小学校までお申し込みください。

池上小学校特別校内研修

(公財)日本教育公務員弘済会熊本支部 学校教育研究助成事業

学校名
(              )小学校
参加者名

(30)池上小学校 FAX096-312-1578

2016年4月22日金曜日

「アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業」 発刊のお知らせ

4月がスタートしました。先生方の算数も順調に進んでいることではないでしょうか? 今年,私は5年生担任です。3年連続の持ち上がりです。3日前から,周りの辺の長さの合計が52㎝で中身が一番大きい箱を作ろうという学習に取り組んでいます。この学習は盛り上がりました。まずは,縦・横・高さの3辺の合計が13㎝になる組み合わせを考えれば,簡単に周りの辺の長さの合計が52㎝の箱を見つけられることに子どもたちは気づきます。これなら,当てずっぽうに辺の長さを探さなくとも簡単に題意の箱の候補を見つけることができます。これだけでもすごい発見! 
その後,中身の比べ方へと子どもたちの興味が移ります。子どもは砂や粘土を入れて,重さを数値化することで比較しようと考えました。数値化で比較ができることへの気づきも,すばらしいです。さて,箱の中に砂や粘土を入れる実験をしました。その結果,どんなことが起きたと思いますか? 同じ箱に同じように粘土を入れたのに,重さはバラバラになりました。この結果に,「これでは正確に調べられない」と子どもたちは考えます。比較できると考えていた方法での比較が,壁にぶつかります。そこで生まれてきたのが,「だったら同じ大きさのブロックを入れて,その数で比べる」という発想です。重さからブロックの数へと数値化の中身が変化します。この活動の中から体積の公式への気づきも生まれました。愉しい3時間でした。ときにはゆったりと活動を愉しむ算数も大切ですね。


 4月末,「アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業」の単著が,東洋館出社から発刊されます。
国立教育制作研究所の小松信哉氏の特別寄稿もあります。「アクティブ・ラーニング」は,次期学習指導要領のキーワードです。しかし,実際にどのように授業を変革していけばよいのかは漠然としています。一部では,ある形式に当てはめることで「アクティブ・ラーニング」の授業ができたと勘違いされている実践も見られます。では,どのように授業を変革すればよいのしょうか? そのポイントを,具体的実践例を通して紹介していきます。是非,ご覧下さい。目次は以下の通りです。

目次

はじめに

1章 「アクティブな授業」ってどんな授業?
 1 ごく普通の導入なのに…
 2 子どもが次の課題を創り出す瞬間
 3 子どもがアクティブに授業を創り出す
 4 「小学校教育は既にアクティブ」説は本当か?
 5 文部科学省の解説からアクティブ・ラーニングを考える
 6 能動的な学びがなければアクティブ・ラーニングではない
 7 学習方法のキーワードはアクティブ・ラーニングの目的ではない

2章 最初の3ヵ月で子どもが変わる
 1 子どもは教師の出方を見ている
 2 子どもは教師の授業スタイルに3ヵ月で染まる
 3 教師が変わらなければアクティブな展開はできない
 4 自由に表現できる雰囲気作りは最初の3週間が勝負
 5 子どもの発想を鍛えるのは最初の3ヵ月が勝負
 6 2学期から子どもが変わる
 7 子どもに委ねると授業は愉しくなる
 8 子どもがアクティブになると教師も子どもも愉しくなる

3章 「問い」の連続がアクティブ・ラーニングをつくる
 1 能動的な学習を展開しているつもりではありませんか?
 2 「問い」がアクティブ・ラーニングへつながる
 3 アクティブ・ラーニングを深化させる「問い」の連続
 4 仕掛けがなければアクティブな追究は生まれない
 5 「ズレ」を仕掛ける

第4章 「12の仕掛け」でアクティブな授業をつくる!
 仕掛け1 先行知識が役立たない場面をつくる
 仕掛け2 似て非なる課題がズレを生む
 仕掛け3 情報を整理しないで提示する
 仕掛け4 あいまいさを自覚させる
 仕掛け5 子どもの安定感を崩す
 仕掛け6 認識とのズレを生む
 仕掛け7 きまりの連鎖で仕掛ける
 仕掛け8 大量の情報を提示する
 仕掛け9 見せ方を変える
 仕掛け10 条件を不足させる
 仕掛け11 関係性がありそうな発問で仕掛ける
 仕掛け12 答えがない問題を提示する 

5章 こんな「授業スキル」で子どもはもっとアクティブに!
 形式を真似るだけでは授業はアクティブにはならない
 スキル1 子どもの呟きや態度をキャッチする
 スキル2 価値ある呟きや態度を共有化する
 スキル3 価値ある呟きや態度を価値付ける
 スキル4 一般化の考えを育てる
 スキル5 教師が親切に解説しすぎない
 スキル6 念押し発問でアクティブに方向付ける
 スキル7 技能を鍛える

6章 授業で大切にしたい「7つのアクティブ・ワード」
 ワード1 「だったら」――相反する2つの意味
 ワード2 「例えば」――混沌をアクティブへと転換
 ワード3 「たまたまじゃないの」――実験範囲の拡張につながる
 ワード4 「絶対に」――表現したいことが高まる
 ワード5 「もし…だったら」――対象の一般性を吟味する
 ワード6 「でもさあ」――素直な疑問の出発点
 ワード7 「やっぱり」――数学的な考え方に確信をもつ

7章 「アクティブ・ラーニング」=「問題解決授業」?
 1 問題解決型ではいけないの?
 2 形骸化している問題解決型学習
 3 焦点化されていない数学的な考え方
 4 「わくわく」「ドキドキ」がない課題提示
 5 答えを教えられてしまう見通し
 6 クラスが二極化する自力解決
 7 聞いたふりをしている発表会
 8 ピントがズレた話し合い
 9 まとめていないまとめ
 10 形骸化した問題解決型授業で育つ子ども像
 11 形式で学力は育たない

特別寄稿 小松信哉(国立教育政策研究所)
 アクティブ・ラーニングがめざす方向
 1 教育課程企画特別部会「論点整理」より
 2 新しい学習指導要領等が目指す姿~育成すべき資質・能力~
 3 学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等
 4 学習評価の在り方について

あとがき

東洋館出版社 http://www.toyokan.co.jp