2019年12月29日日曜日

かわいい和歌山の子どもたち

今年最後の授業は,和歌山大学附属小学校3年生との授業でした。4桁同士のたし算とひき算の計算問題に取り組みました。

子どもの素直な論理に寄り添いながら授業を進めていきました。(授業の詳細はまた別の機会にお知らせします)多くの子どもが活躍する授業となりました。授業の終わりには,「もう終わりなの」「もっとやりたい」といううれしい声があがりました。しかし,もう私の体力は限界寸前でした。私が「もう疲れたからおしまいだよ」というと,今度は子どもたちから,「だったら5分休憩して,またやろうよ」と声が続きました。算数を愉しんでいる素敵な子どもの姿に出会えた授業でした。

ありがとう!和歌山大学附属小の子どもたち!

2019年12月25日水曜日

明日は全国算数授業研究会和歌山大会!

明日,12月26日(木)は全国算数授業研究会和歌山大会です。私は3年生の子どもたちに授業を行います。子どもの論理を引き出し,その論理に寄り添った授業を展開したいと考えています。

本研究大会は,おかげさまで定員を超えたため申し込みを〆切っています。当日受付はありません。参加される先生方は,お気をつけてお越しください。

私にとっては今年最後の公開授業納めになります!

2019年12月19日木曜日

3年小数の差


3年生の子どもたちに,「差が大きい方が勝ちゲームをしよう」と投げかけます。

ゲームは2人1組で行います。1人にブロックを25個ずつ配ります。1個のブロックは0.1点と数えます。従って,最初の持ち点は各自2.5点です。
隣同士でジャンケンをします。パーで勝つと0.3点,チョキで勝つと0.2点,グーで勝つと0.1点,相手からブロックをもらえます。

子どもたちは,元気にジャンケンを行います。2回戦を終えた子どもたちが,自分のペアの得点を計算していきます。しばらくすると,「引き分けだ」という声が多く聞こえてきます。一方,「勝った」という喜びの声も聞こえてきます。

全員が計算を終えた時点で,最も多く聞こえたのは「引き分け」の声でした。そこで,この子どもたちの得点を順に聞いていきます。

結果は右のようになりました。どのペアも引き分けになっています。この結果を見た子どもから,「絶対に引き分けだ」「だって,全部が引き分けになっているか」と声があがります。発表されたペア以外にも,ほとんどのペアが引き分けになっています。
多くの子どもは,ゲームを行えば必ず勝負がつくと考えていました。ところが,勝負はつかずに引き分けになりました。予想とのズレに出会ったのです。そのため,「なんで引き分けなの?」と疑問の声があがります。

するとN男が「秘密が分かった」と声をあげます。
「⑤⑥なら,0.3と0.7をたすと1.0点。次に一の位の1と3と繰り上がりの1をたすと5。5点になるから引き分けなんだ」
N男の声をきっかけに,子どもたちに視点が広がっていきます。
「③④も同じだ。2.2点と2.8点をたすと5点になっている」
「⑦⑧もそうだね。①②も5点だよ」
子どもたちは,引き分けになる理由を探していきました。その結果,辿り着いたのが1回目,2回目のペアの合計点が5点になるという共通点の発見でした。子どもたちの発見は,引き分けになる理由としては完全なものではありません。しかし,複数のデータを比較する中から,共通する部分を見つけ出そうとした見方・考え方には価値があります。彼らの発見を聞いた多くの子どもからは,「本当だ」「すごーい」と驚きの声があがってきました。

子どもたちの発見は,さらなる学びの広がりへとつながります。S男が「あのね」と言いながら説明を行います。
「あのね。もし,5.1点だとしたらで考えました。T君が1回目5.1点で2回目4.2点,G君が1回目0点で2回目0.9点とったとします。すると,T君は0.9点でG君は0.9点で,やっぱり引き分けです」

S男は,最初の持ち点が5点の時にだけ引き分けになるのではないかと考えたのです。5点が特殊な事例なのか否かを調べたくなったのです。そこで,5.1点の場合を確かめたのです。その結果,5点は特殊な事例ではなく,一般的なものであったことが見えてきたのです。S男の発見に,子どもたちからも驚きの声があがりました。場面を自ら拡張して考えたS男の見方・考え方も優れています。

この時間は,小数の引き算として位置付いています。単に引き算を考えるのではなく,ゲームを通して驚きと発見がある引き算場面をデザインし,さらに子どもの見方・考え方を培うことにもつながる1時間となりました。

勝ったと喜んでいた子どもたちは,単なる計算間違いでした。結果は全ペアが引き分けになりました。





2019年12月17日火曜日

第22回 冬季全国算数授業研究大会 和歌山大会満員御礼

12月26日,全国算数授業研究会和歌山大会が和歌山大学附属小学校で開催されます。私も,3年生に公開授業を行います。

さて,おかげさまで大会申し込みの定員を超えたため,申し込みを〆切らせていただきました。多くの申し込みをいただきありがとうございました。12月26日,和歌山でお会いしましょう!

2019年12月12日木曜日

大きな数の数え方

1年生に「りんごの数は何個でしょう」と投げかけます。右のリンゴの画像を提示します。子どもたちは,「20個」「35個」などとリンゴの予想数を発表していきます。それと同時に,「よくわからないから,同じ紙がほしい」と声をあげてきます。そこで,同じリンゴが印刷された紙を配布します。

子どもたちがリンゴの数を数えていきます。数え方は様々です。

「1,2,3・・・」
「2,4,6・・・」
「5,10,15・・・」
「10,20」

多くの子どもは10ずつまとめて数えていました。そこで,「10ずつ数えるお友だちが多いんだけど,その気持ちは分かるかな」と尋ねます。

「だって,10でまとめたほうが分かりやすい」
「前の勉強で10の固まりで考えると簡単というのをやったでしょ。それと同じ」
「10月16日の勉強で,10を作って考えると簡単に計算ができるのをやったでしょ。だから,10でまとめると簡単」

子どもたちは,既習の10のまとまりのよさを想起することができました。1年生でも,過去のノートを探しながら,どの学習とつながっているのかを具体的に指摘していくことができるのです。すばらしい1年生です。

10ずつ数えるよさを引き出すことができました。この気付きをもとに,20を超える数の表記の仕方も指導していきます。

さて,今回のリンゴの数は28個です。1ずつ数えても,2ずつ,5ずつ数えても,それほど大変ではありません。そのためか,「2ずつがいいよ」と考えている子どももいました。

そこで,今度は右のリンゴを提示します。見ただけで子どもからは,「うわー」「多過ぎ」と声があがります。
同じ紙を子どもたちに配布し,リンゴの数を数えさせます。リンゴの数が多すぎることもあり,ほとんどの子どもは10ずつの固まりを作って数えていました。一方,1つずつ,2ずつ数える子どももいました。

1ずつ数えた紙,2ずつ数えた紙をテレビに投影し,子どもたちに数えさせます。いずれの数え方も,途中で「あれ,どこまで数えたっけ?」「ここ,まただぶった?」と分からなくなってしまいました。それを見ていた別の子どもが,「そうじゃないよ!」と元気よくテレビの前に登場してきます。ところが,その子どもたちも途中で何個まで数えたのかが分からなくなってしまいました。1年生らしい微笑ましい光景です。

今回のリンゴの数は80個です。10の固まりで数えれば,10が8個。従って,10,20,30・・・80と一気に数えることができます。

ある程度大きな数を数える体験を通すことで,子どもたちは10ずつ数えるよさを実感していくのです。最初に提示した28個程度では,そのよさを実感することは難しいのです。10ずつ数えるよさを子どもたちにすぐに実感させることは簡単ではありません。2段構えで教材を提示し,体験をさせていくことが大切です。

2019年12月7日土曜日

1mを超える分数

3年生の分数学習の後半です。子どもたちに,「次の大きさを図で表そう」と投げかけます。

「1mと1/5m」と大きさを板書し,右の図も板書します。図を見た子どもからは,「えっ?」「どういうこと」「意味分からない」という声が聞こえてきます。

「問題の意味が分からない」という声も聞こえてきました。そこで,問題の意味をクラス全体で考えていきます。

「1mの長さと,あと1/5mの長さがあるってことだよ」
「でも,それを図でどう表すかがわからないんだよ」
「だから,1mの長さをかいて,あと1/5mをかけばいいんだよ」


このように子どもたちは説明してきます。再度,子どもたちはノートに作図を始めます。子どもたちのノートには,2種類の図が描かれていました。そこで,まずは右の図を提示します。

1m分を青で色を塗ります。さらにその図の上に,残りの1/5m分を赤で重ね塗りをしたのです。この図に対して,「そうそう!」「わかる」と納得の声が多数あがります。一方,神妙な表情で首を捻っている子どももいます。首を捻っている子どもに,その理由を尋ねます。

「重ねて塗るのは,なんか変な気がする・・・」

1mと1/5mを分割するのではなく,重ねているので,全体としては1mに見えてしまうことに違和感を抱いたのです。この違和感を共有していきます。すると,「だったら,別の塗り方がある」「『と』だよ」と声があがります。

「問題は1mと1/5mでしょ。『と』と書いてあるんだから,1m分とあと1/5m分を分けてかくんだよ」

右手で1m分を,左手で1/5m分を表現しながら説明をしていきました。この説明をきっかけに,右の図が生まれてきました。この図であれば,前述の違和感は解消されます。「『と』はたすってことだね」という声も生まれてきました。

基準量である1mを超える分数を表現するのは,この時間が初めてでした。「と」の1文字に着目していくことで,分数表現の仕方の概念を拡張していくことができた1時間でした。

2019年12月3日火曜日

量分数と分割分数の壁を乗り越える

3年生の「分数」学習もいよいよ大詰めです。子どもたちに「□mの図はどれでしょう」と投げかけます。

1問目は,「2/3m」を提示します。子どもたちは,一斉に左の図を指さします。理由を説明してきます。

「だって,1mを3つに分けたわけたうちの2つ分だからです」

的確に説明ができました。
第2問目は,「1/4m」で,提示したのは右の図です。左の図は,全員が1/4mだとして指さします。1問目と同じように,「1mを4つに分けたうちの1つ分」と説明してきます。
一方,意見が分かれたのが右の図です。2mを4等分した図です。この図を1/4mと考える子どもの論理を,全員で考えます。

「2mを4つに分けた1つ分だから」

1問目の説明を活用した見方です。この見方は,高学年でも混同が見られるものです。さて,この見方について「でも,それは違う」と声があがります。

「それは1/4mじゃなくて,2/4mだよ」
「もし,青の長さが1/4mだとします。そうすると,その隣は,2/4mになる。その隣は,3/4m。最後は4/4mになる。でも,本当は2mだから8/4mにならないとおかしい」(S男)

このS男の説明に,「そういうことか!」と声があがってきました。しかし,この説明は1回ではクラス全体には伝わりません。時間をかけて,クラス全体に共有していきました。
S男の説明は,敢えて青のテープの長さが1/4mだとしたらと仮定した上で論を進めていったのです。1/4mと考える友だちの論理をいったん認めたのです。しかし,その論理でその先を考えていくと,最終的に矛盾する場面(本当は8/4mなのに4/4mになっている)に出会うことを説明したのです。子どもにとっては,このように相手の論理を正しいと仮定して,その後の展開を進める矛盾に気付かせる展開が納得しやすいのかもしれません。

量分数と分割分数の混同は,高学年でもよく見られます。その解決方法の1つが見えた1時間でした。


分数と重さがつながる

3年生「分数」の1コマです。子どもたちに,「何mですか」と投げかけ図を提示します。

右の図であれば,2/9mと子どもたちは答えます。その理由を,「1mを9つに分けた2つ分だから」と説明してきます。

後半,右の図を提示ます。「わかる」と声があがります。そこで,ノートに何mかを書かせます。この活動の中で,「式も書ける」と声があがります。右の図から,式が見えたのです。そこで,どのような式が見えたのかを尋ねます。

「9/9-2/9=7/9」
「9/9は1mのことでしょ」
「2/9は色の塗っていない白いところ」

式の意味を図とつなげながら説明していきます。1mが複数に分割された図を目にしたことで,式化したくなったのです。この式の意味が理解できたところで,今度は次の声があがってきました。

「これって,重さと同じだ」

この声を聞いて,「あー」と納得の声があがります。一方,「どういうこと?」という声もあがります。そこで,この声の意味をクラス全体で共有していきます。

「〇月〇日のノートを見てください。重さの勉強ではかりの目盛りを読んだでしょ」
「1350gは,1000gから350gをたし算するよりも,1500gから150gをひき算をした方が速かったでしょ。それと同じだよ」
「目盛りの近い方から計算した方が,簡単だったもんね。これも(長さ)も,近い目盛りを読むのと同じだね」
「テープの長さは,青いマスを7つ分数えるよりも,白いマスが2つしかないから,白をひき算した方が速いよ」

分数と重さは別の領域です。しかし,この2つの領域には考え方の視点では共通する部分があることに子どもたちは気付いたのです。すばらしい見方・考え方が生まれてきました。