2019年12月19日木曜日

3年小数の差


3年生の子どもたちに,「差が大きい方が勝ちゲームをしよう」と投げかけます。

ゲームは2人1組で行います。1人にブロックを25個ずつ配ります。1個のブロックは0.1点と数えます。従って,最初の持ち点は各自2.5点です。
隣同士でジャンケンをします。パーで勝つと0.3点,チョキで勝つと0.2点,グーで勝つと0.1点,相手からブロックをもらえます。

子どもたちは,元気にジャンケンを行います。2回戦を終えた子どもたちが,自分のペアの得点を計算していきます。しばらくすると,「引き分けだ」という声が多く聞こえてきます。一方,「勝った」という喜びの声も聞こえてきます。

全員が計算を終えた時点で,最も多く聞こえたのは「引き分け」の声でした。そこで,この子どもたちの得点を順に聞いていきます。

結果は右のようになりました。どのペアも引き分けになっています。この結果を見た子どもから,「絶対に引き分けだ」「だって,全部が引き分けになっているか」と声があがります。発表されたペア以外にも,ほとんどのペアが引き分けになっています。
多くの子どもは,ゲームを行えば必ず勝負がつくと考えていました。ところが,勝負はつかずに引き分けになりました。予想とのズレに出会ったのです。そのため,「なんで引き分けなの?」と疑問の声があがります。

するとN男が「秘密が分かった」と声をあげます。
「⑤⑥なら,0.3と0.7をたすと1.0点。次に一の位の1と3と繰り上がりの1をたすと5。5点になるから引き分けなんだ」
N男の声をきっかけに,子どもたちに視点が広がっていきます。
「③④も同じだ。2.2点と2.8点をたすと5点になっている」
「⑦⑧もそうだね。①②も5点だよ」
子どもたちは,引き分けになる理由を探していきました。その結果,辿り着いたのが1回目,2回目のペアの合計点が5点になるという共通点の発見でした。子どもたちの発見は,引き分けになる理由としては完全なものではありません。しかし,複数のデータを比較する中から,共通する部分を見つけ出そうとした見方・考え方には価値があります。彼らの発見を聞いた多くの子どもからは,「本当だ」「すごーい」と驚きの声があがってきました。

子どもたちの発見は,さらなる学びの広がりへとつながります。S男が「あのね」と言いながら説明を行います。
「あのね。もし,5.1点だとしたらで考えました。T君が1回目5.1点で2回目4.2点,G君が1回目0点で2回目0.9点とったとします。すると,T君は0.9点でG君は0.9点で,やっぱり引き分けです」

S男は,最初の持ち点が5点の時にだけ引き分けになるのではないかと考えたのです。5点が特殊な事例なのか否かを調べたくなったのです。そこで,5.1点の場合を確かめたのです。その結果,5点は特殊な事例ではなく,一般的なものであったことが見えてきたのです。S男の発見に,子どもたちからも驚きの声があがりました。場面を自ら拡張して考えたS男の見方・考え方も優れています。

この時間は,小数の引き算として位置付いています。単に引き算を考えるのではなく,ゲームを通して驚きと発見がある引き算場面をデザインし,さらに子どもの見方・考え方を培うことにもつながる1時間となりました。

勝ったと喜んでいた子どもたちは,単なる計算間違いでした。結果は全ペアが引き分けになりました。