算数の時間,「2,3,4,5のカードを□に入れて,答えが一番○○な式を作ろう」と投げかけます。子どもたちに「1□×□」という式を提示します。2つの□に数字を入れて答えが最小値になる式を考えさせます。先ずは,計算しないことを条件に,頭に浮かんだ式をノートに書かせました。子どもからは,「12×3」「13×2」の2つの式が生まれてきました。この式に対して,「同じ」と声があがります。
そこで,「同じ」の気持ちを全員で読解します。
「2×3も3×2も答えは同じ6」
「式の2と3を入れ替えただけだから,答えは同じ」
このように考えると答えは同じになりそうです。
ところが「違うよ」という声も聞こえてきます。
「2年のたしざんでは,1,2,3の順で小さく数字を並べたから,12×3が小さい」
2年生で学習した虫食いたし算問題を思い出したのです。そのときに見つけたきまりと同じように考えればいいのだというのです。よき見方が生まれてきました。
ところが,この見方に対しても「違うよ」と声があがります。
「12と13はだいたい同じ数でしょ。だから,同じ数の3倍と2倍なら2倍の方が小さい」
「たしざんの筆算にしたら,だいたい同じ数を3回たす12+12+12と,2回たす13+13では2回たす方が小さい」
12と13はたった1違いの近い数です。このように考えれば,この2つの数字の大きさはだいたい同じと捉えることができます。だいたい同じ数字の2倍と3倍であれば,明らかに2倍の方が小さくなります。
だいたいの数で12と13を捉え直すこと,また,倍の考えをたし算の筆算に置き換えることでより見えやすくすることは,私の想定を超えた発想でした。子どもの発想は素晴らしいですね。この問題では,数字を変えて複数の問題に取り組む中で,かける数に最小値,かけられる数に2番目に小さい数を代入することで,答えが最小の式ができることを帰納的に発見していく授業が多くあります。ところが,今回は12と13をだいたい同じ見ることで,演繹的に考えていくことができたのです。
この授業では,この後でさらに新しい発見が子どもから生まれてきました。その発見がいつでも当てはまるのかを考えることで,気がついたらずっと計算に取り組んでいた1時間となりました。