3年生の子どもたちに,次の問題を提示します。
「クッキーが□個あります。4人で分けます。1人分は何個でしょう」
子どもから,「□の数が分からないと計算できないよ」と声があがります。
そこで,□が12の場合を考えさせます。子どもからは,「簡単だよ」「式でかけるよ」「図でもかけるよ」と声があがります。
子どもたちは,12÷4=3 1人分は3個と答えを導き出します。図でも1人分が3個になることを確認します。
次に,□が4個の場合を考えさせます。この場合も,「簡単」と声があがります。
4÷4=1 答え 1人1個
図でも1人分が1個になることが確認できました。
次に,□が0個の場合を考えさせます。1人分が0個になることは,図で分かります。これは全員も納得です。そこで,「式はどうなるかな?」と尋ねます。ここまで順調だった子どもたちの考えが,ここで分裂します。「0÷4」「4÷0」の2種類です。
「4÷0だよ。だって,0÷4だと答えがマイナスになっちゃうよ」
「0÷4はできないから,4÷0だよ」
「0個を分けるんだから,0÷4だよ」
「でも,0÷4はマイナスだよ」
「ないものを分けるんだから,0個でしょ」
子どもたちの考えは膠着します。ここでN子が次のように説明します。
「最初の問題は12個を4人で分けた。これは12÷4。12個は式の前の数。今の問題も,クッキーが0個だから,0÷4。式の前に0がくる」
N子は,全員が簡単だと納得した最初の問題と比較して考えたのです。N子の説明をきっかけに,子どもたちが動き出します。
「2番目の問題も同じだ。4÷4の最初の4は,クッキーの4個。後の4は4人」
「式の前の数はクッキーの数。式の後ろの数は人数」
「だから,0個が前で4人が後」
複数の式を比較することで,0のわり算の本当の意味が見えてきました。1番目の式と3番目の式を関連づける考え方は,数学的に価値あるものです。このような考え方を称賛しました。