3年生の「時刻と時間」の 学習の一コマです。子どもたちに,次の問題を提示します。
「ネコランドのチケットセンターを出発してから1時間40分後の午前11時30分に,ネコタワーの頂上に着きました。チケットセンターを出発した時刻を求めよう」
実際の問題文は,ホワイトボード6行になりました。子どもにとってはかなりの長文です。そのため,「文が多すぎて無理」「よく分からない」という声が聞こえてきました。問題文の量の多さに圧倒された素直な声です。
しかし,子どもたちは必死で文章に向き合っていきます。やがて,「そういうことか」「ひき算かな」「繰り下がりがあるかな」と声がきこえてきます。
子どもたちが考えた式は,「11時30分−1時間40分」です。しかし,この式を見ても首を捻っている子どもの姿が見えました。なぜ,その式になるのか納得できていないのです。そこで,前述の式だと考えた理由を説明させます。
ところが,言葉の説明ではまだ納得できていない子どもの姿が見えました。そこで,「まだ,もやもやしている人がいるね。そんな時はどうしたらいいかな」と投げかけます。
ここで生まれてきたのが,「図にしたらいい」という声でした。
子どもから生まれてきたのは,右の図です。この図を,
クラス全体で読解していきます。
「タワーの頂上に着いたのが,11時30分」
「チケットセンターを出発した時刻が分からないから,?にした」
「チケットセンターからタワーまで1時間40分かかったから,それを矢印にした」
「?は□と同じ意味だから,□+1時間40分=11時30分になる」
「□を知りたいから,11時30分−1時間40分にすればいい」
これで,前述の式でよい理由を全員が納得しました。式が見えたので,実際に計算をしていきます。すると,今度は子どもたちの計算結果にズレが生まれました。また,計算しながら「意味不明」「できない」という声も聞こえてきました。
そこで,このズレを取り上げていきます。右のように筆算で考えた式を提示し,気持ちを全員で読解します。
「30分−40分ができないから,1時間繰り下げる」
「11時が10時になる。100分繰り下げたから,130−40=90分」
「90分は60分と30分。60分は1時間だから,9時に1時間あげる」
「だから,10時30分」
10時30分と答えが出たものの,納得できない表情の子どもがいます。
「なんか変だよ。10時30分だと,タワーに着いた11時30分の1時間前にしかならないよ」
この声に「確かに」と納得の声があがります。計算のどこかが間違えていたようです。一体,どこが間違えていたのでしょうか。子どもたちに考えさせます。
「1時間は60分でしょ。だから繰り下がりも60分だよ」
「さっきのは,繰り下がりを100分にしている」
「160−70の繰り下がりなら,10を繰り下げる。でも,この計算は,10繰り下げてはだめだよ」
「60分繰り下げて計算するから,60分と30分で90分にして考える」
時間の計算は,分の単位が60進法です。この部分が3年生の子どもには間違えやすいのです。前述のような計算をする子どもがいるのは,これまでの既習の整数の計算をもとに考えているので自然な姿だとも考えられます。この既習と比較することで,60進法の特殊な時間の計算の仕方について考えていくことができました。