子どもたちに,次の問題を提示します。
「ロボットABCがあります。1番速く歩けるのは,どのロボットでしょう」
子どもからは,「ABCのロボットの表を見せて欲しい」「グラフでもいいから見せて欲しい」と声があがります。そこで,ロボットBCの2体の歩く速さが表示されたグラフを提示します。このグラフから,次の声があがります。
「これならBとCは,比べられる」
「見たら分かるから,計算はいらない」(H子)
H子の声の意味を,読解していきます。
「5秒のところを見たら,Bは15㎝進み,Cは10㎝進んでいるからBが速いと分かる」
「だから,Aも5秒が分かれば決まるよ」
グラフのデータを読解することで,計算をしなくても歩くのが速いロボットを判定することができることが見えてきました。そうなると,子どもから「Aの5秒のデータを教えて欲しい」と声があがります。しかし,そのままそのデータを与えてはおもしろくありません。そこで,次のように投げかけます。
「Aは3秒で7.5㎝でした」
3秒のデータのみを提示します。これに対して,子どもたちは次のように話し合いを進めます。
「これで1秒当たりが分かる」
「7.5÷3で2.5㎝」
「だから,決まった数は2.5ということになる。文字式でいうと,y=2.5×xになる」
「5秒のときは,2.5×5で12.5㎝と計算ができるね」
「だからBが一番速いことが分かるね」
Aのデータを提示したことで,子どもからは文字式にデータを一般化するアイディアが生まれてきました。そこで,BやCのロボットも文字式に置き換えてみました。
さて,この一連の活動の中で「でも,このロボット歩くのが遅すぎないか?」という声が子どもからあがります。最速のBでも,5秒で15㎝です。確かに遅すぎる気がします。
そこで,子どもは5秒間でどれくらい歩けるのかを実験しました。代表の子どもが歩きます。結果は,5秒で478㎝でした。文字式では,y=95.8×xとなりました。その後,Bロボットの速さも子どもたちは体験してみました。人とロボットとのあまりの差に,次の声があがります。
「ロボットは遅すぎる!」
「わかった!きっとロボットは小さいんだ」
「それなら少ししか進めない」
ロボットの大きさが自分の身長と同じだと考える前提条件を,子どもたちは疑い始めたのです。提示されたデータを鵜呑みにするのではなく,批判的に見ていくことも大切な視点ですね。
この授業は「板書で見る全単元・全授業のすべて算数6年下」(東洋館出版社)の教材を活用して展開しました。