2017年6月16日金曜日

同じビルを探せ

算数の時間,子どもたちに次にように投げかけます。
「同じ形のビルはいくつあるかな?」
 この問題を聞いた子どもたちが,素敵な話し合いを自然に始めます。
「何が基準なの?」
「そうだよ。基準が分からないと・・・」
「正方形なら同じ大きさということ?」
「えっ,形だから大きさは関係ないよ」
「それってどういうこと?」
「大きい正方形も小さい正方形も同じ形ということだよ」
「もし,縦と横の辺の比が4:6の長方形なら,比が2:3の長方形も同じ形ということだよ」・・・。
 子どもたちは,「同じ形」という言葉の意味を上記の話し合いを通して吟味したのです。その結果,「辺の長さの比が同じなら同じ形」と判断できると子どもたちは考えました。
 
 上記の判断をした子どもたちに,右の図形を提示します。赤のビルを基準とした場合の同じ形を探させました。直感で,同じ形のビルの数を予想させます。「2種類」「3種類」「4種類」「5種類」と予想にズレが生まれます。

 同じ形は何種類あるのでしょうか。子どもたちは,「同じ形をほしい」と要求をしてきます。そこで,同じ図形が印刷されたプリントを配布し実験します。子どもたちは,定規を使って辺の長さを調べていきます。
 やがて,「3種類だ」と声があがります。赤いビルの底辺部は2㎝,高さ部分は5㎝と4㎝,上部斜めは2.3㎝です。エの図形は,底辺部3㎝,高さ部分は7.5㎝と6㎝,上部は約3.5㎝です。どの辺も1.5倍になっていることがわかります。このように辺の比が同じ図形は,ウ・エ・オの3種類あると考えました。
 ところが,ケの四角形も辺の比は全てエと同じ1.5倍になっています。実験をしながら,「ケもエと同じ長さだ。これも同じ形?」と迷う子どもの姿も見られました。

 では,ケの図形も「同じ形」と考えてもいいのでしょうか。子どもたちは,
「エは違うよ。だって角が直角じゃないよ」
「同じ形は,辺の比が同じで角が同じじゃなきゃだめだよ」
と声があげます。エとウの図形を比較することで,「同じ形」の判断基準には辺の比だけでなく,角の大きさも必要なことが見えてきました。
 
 この学習は,「拡大図・縮図」の入り口の1時間です。拡大図・縮図だと判断するためには,対応する辺の比が等しいことだけではなく,対応する角の大きさが等しくなければいけないことを,子どもたちが発見するこができました。