2017年6月14日水曜日

校舎の高さ

6年生の「比」の学習の活用場面として,木やビルの高さを求める問題が教科書などに掲載されています。教科書では,次のような課題文になっています。
「木のかげの長さから,木の高さを求めましょう。校庭に立てた0.8mの棒の影は1.2mでした。このとき,校庭の木のかげの長さは12mでした。木の高さは何mでしょう」

十分すぎるデータが含まれた課題文です。この学習で大切なことの一つは,どのようなデータを収集すれば,実測不可能な木やビルの高さを求めることができるのかを子ども自身が考えることです。十分すぎるデータがあらかじめ用意されていては,もはや考える余地はありません。

子どもたちに,次のように投げかけます。
「校舎の高さを求めることはできるかな。あなたなら,どんな方法で高さを調べますか」
先ずは自由に子どもたちに,高さの求め方を考えさせました。
「ビルの上から巻き尺をたらす」
「1階分の高さを調べて,その高さを13倍する」(校舎は13階建て)
「はしご車にのって高さを測る」など

 比を使う考えは,この時点では子どもからは生まれてきません。1階分の高さを13倍する方法は「いいね」と子どもの共感を得ました。ところが,「でも,それってどの階の高さも同じじゃないとだめだよね」と指摘を受けます。それ以外の方法は,いずれも危険を伴う測定方法です。
 そこで「もっと安全に校舎の高さを調べる方法はないかな」と投げかけます。ここが子どもたちには難問でした。やがて「影の長さを測ればいいかな?」という呟きがあがります。この呟きをきっかけに,子どもたちが動き出します。
「そうか,ビルの影の長さを測ればいいんだ」
「影の長さが分かっても,高さは分からないよ」
「だから,同じ時刻に棒を立てて,その影の長さを測るんだよ」
「そういうことか」
「どういうこと?」
「だから,棒が1mで影が0.5mだったとするでしょ。このとき,ビルの影が20mなら,高さはamでしょ。1:0.5=a:20になるから,aは40mでしょ」
「わっかた! 比が同じってことだね。比を使えばいいんだね」

子どもたちの理解には差があります。比を使う視点も,このように少しずつ時間をかけながら共通理解を進めていきました。

太陽が出たときの校舎の影の長さと棒の高さと影の長さを使うことで,校舎の高さを安全に測定できることが分かった1時間でした。その後,晴天の日,上記の考え方を使って校舎の高さを比を使って求めました。子どもたちの測定結果は,ほぼ50m前後でした。実際の高さは約55mです。ほぼ正確な高さを測定することができたと言えます。