4年生に,右の図を提示し次のように投げかけます。
「大中小の3つのビルがあります。一番傾いているのは,どのビルでしょう」
子どもたちは,提示されたビルの図を見つめます。ビルの傾きに合わせて頭を傾ける子ども,2本の指で傾きに合わせた角を作る子どもなど,さまざまな姿が見られました。
この時点での子どもたちの考えは,バラバラでした。友だちの考えとのズレが生まれました。
子どもたちの考えは分裂しています。どうすれば傾きの決着をつけることができるのでしょうか。比べ方を子どもたちに尋ねます。
「2本の指を傾きに合わせて比べる」
間接比較の方法です。子どもらしい発想です。この方法を実験します。ところが,子どもによって結果がバラバラになりました。これでは正しく比べられません。指を移動する間に,指の幅が変わったのです。
「2本の定規をビルと地面に合わせて角を作り,他のビルと比べる」
これも間接比較です。この方法も実験します。しかし,ここでも結果にズレが生まれました。正確には比べられません。定規が移動する間にズレてしまったのです。
「ビルの長さを測る」
長さと角は比例関係にはありません。子どもからは,「それじゃあ,大きいビルが大きいに決まっている」と声があがりました。ところが,「だったら,ビルの高さを小さいビルに揃えたらいい」とアイディアがあがります。この方法なら正しく比較できそうです。ところが実際に実験すると,どのビルもほぼ同じ数値になりました。この結果が正しいとすれば,3つのビルの傾きは同じということになります。しかし,どう見ても3つのビルの傾きは同じには見えません。この方法も正しくはないようです。
しかし,この方法には前述の2つの方法と明確に異なるよさが含まれています。この方法のよさを子どもたちに尋ねます。
「数字にしていること」
「見えないことを数字にして,見えるようにしている」
「長さと同じだ」
「重さと同じだ」
長さは数字で表現します。見えない角の大きさを数値化することで,比較しやすくなると考えたのです。この点で,非常に優れた視点になります。数値化するというアイディアのよさ,すばらしさを価値付けました。
分度器を使った角の大きさ自体は教えることです。しかし,角の大きさを数値に置き換えるよさを子どもたちに実感させてから,角度や分度器に出合わせることが,この学習では最も大切なことではないでしょうか。
角の大きさを数値化する必要感を引き出した授業でした。