子どもたちに,次の問題を提示します。
「矢印をコピー機で拡大しました。正しく拡大したのはどれでしょう」
この問題だけで,子どもから次の声が生まれてきます。
「長さが分かればできる」
「角度も必要だよ」
「角度だけでいいんじゃないの?」
「角度が同じなのに,長さが違う図形があるんじゃないかな」
「辺だけが伸びているのがあるよ」
角度だけでは正しい拡大図を判定できないと,子どもたちは考えました。その反例の図も生まれてきました。その結果,「やっぱり,辺も角度もいるね」と子どもたちは考えました。
図を提示する前に,これだけのことを考えられる子どもたちの力に脱帽です。
ここで,今回の教材である元の矢印と,拡大後の4つの矢印を提示します。直感での判断では,バラバラになりました。その後,実際に長さなどを調べていきます。やがて,「1番だ」と声があがります。
1番の図形が正しい拡大図である理由を尋ねます。
「元の辺の長さと,1番の辺の長さはどこも2倍になっている」
「他の図形は,2倍になっている場所もあるけど,2倍じゃない場所もあるから違う」
「他の図形は,角度も違っているから正しく拡大していない」
これらの話し合いの中で,「長さだけでいいんじゃない」と声が上がります。正しい拡大図と判断するためには,辺の比が等しいことだけが分かればいいという声です。果たして,角度の情報は必要ないのでしょうか。
「角度の情報はいるの?」
と子どもたちに投げかけます。多くの子どもは,矢印の判断基準をもとに「辺だけでいいんじゃないの」と考えはじめした。ところがここで,K子が図(右端)を描きながら説明します。
「下と右の斜めの辺は2倍。矢印の三角の左の辺を少し右に傾けると,上の横の辺と左端の縦の辺が台形みたいになる。これも辺は2倍になっているけど,コピーにはなっていない」
K子は,反例の図をイメージできたのです。この図を見た子どもたちから「おー,確かに」と驚きの声があがります。素晴らしい反例の図です。このK子の説明で,拡大図を判定するには,辺の情報だけではなく,角度の情報も必要であることが明確になった1時間でした。