「赤いテープの長さは,何㎝ですか」
これは簡単です。「5㎝」と子どもたちがノートに答えを書きます。そこで,「本当に5㎝ですか」と尋ねます。子どもたちは,次のように説明します。
「だって,10㎝の半分だから5㎝だよ」
次に,右下図を提示します。同様に赤のテープの長さが何㎝か考えさせます。子どもたちは,「10㎝」とノートに長さを記述します。そこで,「本当に10㎝でいいの」と尋ねます。子どもたちが説明します。
「40÷4で10㎝だよ」
「だって,40㎝の中が4つに分かれているよ」
「4個に分けた1つ分だから40÷4なんだよ」
ここで引き出したい見方は,この「4個に分けた1つ分」という説明でした。この説明は,他の子どもたちからも納得の声があがります。これで,赤いテープが10㎝であることが見えてきました。
今度は,右の図を提示します。しかし,尋ね方を変えます。
「赤いテープは何mですか?」
私の質問と同時に,「えっ?」「できない」という声があがります。先ほどまでの問題とのズレを実感した声です。そこで,「なんで『えっ?』と言った友だちがいるのかな?」と気持ちを読解させます。
「だって,さっきまでは㎝で答えていた。でも,今度はmで答えるから」
「mでは答えられないよ」
「だって1mないんだよ」
「㎝なら言えるけど」
「㎝なら,ますが1mの中に10個あって3つ分が赤いから30㎝」
「100÷10で1ますが10㎝と分かるよね」
「でも,mでは言えないよ」
赤にテープを30㎝とは表現できても,mの単位では表現できないと多くの子どもたちは考えました。ところがここで,「できるよ」「さっきのを使えばいいよ」という声があがります。「さっき」というのは2問目の問題のことです。
「だからね,1mを10個に分けた3つ分と言えばいいんじゃない」(N男)
「そうか,2問目も『4個に分けた1つ分』と言ってたもんね」
N男の説明は,量分数の見方そのものです。しかも,N男の見方が2問目の考え方を活用していることにも価値があります。このN男の見方を大いに褒めました。
N男の「1mを10個に分けた3つ分」の言い方に対して,「なんか長すぎるなあ」という声もあがります。それをきっかけに,2年生の分数表記を想起する声があがってきました。N男の説明は,「3/10m」と表現することができます。
子どもたちが知っている表現方法の限界に出会わせることで,新たな表現方法(量分数)に気付かせる展開を構成してみました。