2017年12月5日火曜日

樹形図との出会いを演出する

正方形を提示し,子どもたちに「最短ルートは何本ありますか」と投げかけます。スタートは左下端,ゴールは右上端です。辺上のみを移動できます。この場合は,2本です。

 次に,この正方形を組み合わせて縦横の長さを2倍に伸ばします。田の字ができます。このときの最短ルートを予想させました。子どもたちの予想は4本,6本,7本,8本,10本,12本と様々でした。
「辺の長さが2倍だから,本数も2倍で4本」
「田の字の中に正方形が4つできるから,本数も4倍になって8本」
この2つの理由が,論理的に納得できる理由として支持されました。
 実際の本数を実験します。ノートに最短ルートを作図していると,「面倒」という声が聞こえてきました。この面倒さへの気付きが算数学習では大切なのです。
 実験の結果,最短ルートは6本だと分かります。この実験の過程で,子どもたちは最短ルートが線対称になっているパターンを発見します。これが分かることで,「半分調べて,あとは2倍すればいいよ」というアイディアが生まれてきます。

 さらに図形を拡大します。縦横に正方形が3個ずつ並んだら何本の道ができるでしょうか。子どもの予想は8本〜90本まで分かれました。
 実際の本数を実験します。しかし,この実験はさらに大変でした。「ごちゃごちゃする」「あれ,これはもう描いてあった」という声が次々とあがってきました。友だち同士でノートを見せないながら,だぶりや落ちがないかチェックし合う姿が見られました。
 最終的に最短ルートは20本できることが分かりました。全ての道を描き出した子どもたちは,かなりの割合でだぶりがありました。
 
 一方,図の交点に番号を付けて【S-12-9−5−2−3-G】【S-12-9−5−3−2-G】とルートを描き出す子どもたちもいました。この方法だと,数字を順に書き出していくのでだぶりはなくなります。
 さらにこの方法を簡便に樹形図化した方法も生まれてきました。同じ番号の部分を省略して書くアイディアです。
「これだと簡単」
「だぶりがない」
 樹形図の簡便さに気付く声がたくさん生まれてきました。さらに,次の声もあがります。
「最初に上に行く最短ルートを調べれば,あとはそれを2倍すればいい」
「最初に横に行くルートは線対称だからだよね」
 樹形図をさらに活用する声です。半分の最短ルートを樹形図で求めた後,残りは計算で求める考えです。


 簡便な解決方法を形式的に教えることは簡単です。しかし,それでは子どもはその方法の本当のよさを実感することはありません。苦労を体験した後でその方法に出会うからこそ,子どもたちは本当のよさを実感するのです。