2017年1月16日月曜日

円周と直径の関係

円周と直径の長さの関係を子どもたちが目的意識を持って調べる授業は,どのように構成すればよいのでしょうか。教科書(小学校5年)では,「円周は直径の何倍になっているか調べてみましょう」と投げかける展開が多くを占めます。この展開では,子どもは円周と直径の関係を調べさせられているだけです。

そこで,次のような問題を投げかけます。
「周りの辺の長さの合計が24㎝の正三角形と正方形,面積は同じでしょうか」
 正方形が大きいと考える子どもが多数でしたが,正三角形が大きい,面積は同じと考える子どももいました。
 正しい結果を求めるために,先ずは正三角形をノートに作図をして面積を求めます。面積は28㎠になりました。一方,正方形は計算で求められます。面積は36㎠です。この結果を見た子どもたちから,「だったら正五角形はもっと大きくなる」「そうだ!角の数が増えるほど,面積は大きくなるんだ」と,まだ見えていない形を予想する声があがります。このように,子ども自らが場面を拡張して考えていくことが算数では大切な考え方の一つです。

 子どもの予想を確かめるために,正六角形→正十二角形と実験を進めていきます。正六角形の面積は42㎠,正十二角形の面積は44.4㎠となりました。子どもたちの予想は,この結果から確からしいことが見えてきました。

 この結果から,子どもたちは「正何百角形の面積はもっと大きくなる」「だったら,円の面積が一番大きくなりそう」と考えます。一方,「円は正多角形ではないから,違うかもしれない」という考え方も生まれてきました。
 そこで,「円周24㎝の円で確かめよう」と投げかけます。ところがここで,「どうやって24㎝の円を描くの?」「円の長さはどうやって測るの」と声があがります。子どもが持っている定規では,円周の長さを測定することはできません。
 ここで生まれてきたアイディアが,家庭科で使っているメジャーを使うことと,紙テープを円の上に当て,それを開いて長さを測定するアイディアです。子どもたちがノートに作図した円周の長さを,上記アイディアで測定します。その結果,ほぼ24㎝の円を作図することができました。円周がほぼ24㎝の円が作図できたところで1時間目を終わりました。
 
前時,円周24㎝の円を紙テープで作りました。その時,「最初からテープを24㎝に切ってから円を作れば簡単」というアイディアが生まれました。そこで,このアイディアで正確な円の作図に挑戦します。
 紙テープを24㎝に切ります。そのテープで円を作ります。できた円の直径を測定します。その直径をもとに,コンパスで円を作図します。このやり方で,円周24㎝の円が作図できました。

 ところがこの円を作図した後,「でも,いちいちテープでやるのは面倒」と声があがります。決められた円周の長さの円を作図するたびに,テープを使って直径を調べていたのでは手間がかかるという声です。このように地道にテープで円を作図する作業の面倒さを実感する場面から,「もっと簡単に指定された円周の長さの円を作図できないだろうか」という視点への転換が引き出されます。この視点の転換が,新しいきまりへの気づきを生んでいきます。

 子どもから,今度は,「わるさんになっている」「かけるさん」と声があがります。子どもたちは,円周と直径の長さに3倍の関係があることに気づきました。さらにこの3倍の関係は,他の大きさの円でも当てはまると予想をしました。そこで,別の直径を自由に設定し,直径と円周の長さが3倍の関係になっているのかを実験することにしました。

 直径10㎝では円周が30㎝でした。直径6㎝では円周が18㎝でした。直径4㎝では円周が12㎝でした。この他にも,様々な大きさの円で実験しました。どの円でも,円周は直径のほぼ3倍になっていることがわかりました。この関係が分かれば,決められた長さの円周の円を作図するには,計算で直径を求められます。これなら紙テープは不要になります。

 紙テープを使って,自由に実験する場を設定することで,円周と直径の長さの関係を子ども自身が発見していくことができました。