2017年1月4日水曜日

新学習指導要領への対応は教科書分析からスタート!

新学習指導要領の答申が中教審から昨年末に出されました。その中で重視されているが,次の3点です。

「 何ができるようになるか -育成を目指す資質・能力-」
「 何を学ぶか -教科等を学ぶ意義と、教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成- 」
「 どのように学ぶか-各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実-」

この3点を意識して,教育課程を編成することを求めています。この3点,具体的な算数授業で考えると,何を意識すればよいのでしょうか?

まずは,「何を学ぶか」は教科書内容そのものです。教科書に載っている内容が,子どもたちに学ばせることです。

では,「何ができるようになるか」は「何を学ぶか」と何が違うのでしょうか? 「何を学ぶか」は知識・理解的なものです。一方,「何ができるようになるか」は,子どもたちが思考力・判断力・表現力を発揮して知識・理解を獲得していく過程を重視することを求めています。算数で言えば,帰納的な考え方や類推的な考え方が生まれるように授業展開を工夫してくことが大切になります。すなわち数学的な考え方が育成されるような授業展開を行うのです。

「どのように学ぶか」は,主体的・対話的・深い学びを授業場面で具現していくことを求めています。単なる知識・理解の教え込みではなく,子どもが主体的に追究を連続するアクティブな授業展開を求めています。授業方法の改善を求めています。

5年生に「円と正多角形」単元を例に考えます。この学習場面の教科書での扱いを見てみます。多くの教科書では,正三角形・正方形・正五角形・正六角形を提示し,辺の長さや角の大きさ・中心角の大きさを測定させます。その上で,どの辺も角も同じ大きさであることを発見させ,正多角形の定義へと導きます。この展開であれば,正多角形の定義を子どもたちは見つけていくことができます。「何を学ぶか」は,この展開で達成されます。しかし,「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」の視点は,達成できたといえるでしょうか。先の展開では,教師の指示通りに正多角形の構成要素を子どもたちは調べていくだけです。そこには,数学的な考え方が発揮される場面はありません。ましてや,主体的な学びもなければ,対話的な学びを行う必要もありません。

「何を学ぶか」は,正多角形の定義を見つけていくことです。そこに向かう展開を,少し工夫することで「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」も具現できます。正三角形だけを提示し,1つの角の大きさと中心角の大きさを尋ねます。子どもたちは,「正三角形ですか?」「正三角形ならわかるよ」と,声をあげます。提示した三角形が正三角形であることを説明します。「だったら,角は60°,中心角は120°」と子どもたちは主張してきます。正三角形であれば,既習の内角の和の知識などを活用することで,計算でそれぞれの角度を求めることができます。ここまでは,まだ子どもたちは教師の指示通りに角の大きさを求めているだけです。

次に,正方形を提示し,角の大きさと中心角の大きさを尋ねます。今度も「正方形ならわかる」と,子どもたちが主張します。そこで,提示した図形が正方形であることを説明します。「角は90°,中心角は90°」と子どもたちは主張します。これも既習の知識をもとに,計算で求められます。
ところがここで,「あっ,きまりがある」と声があがってきます。「角の大きさと中心角の大きさをたすと180°になる」「本当だ! 正方形も正三角形も180°だ」ときまりへの共感の声があがります。正三角形と正方形の角の情報から帰納的な考え方を発揮し,角の大きさの合計が180°になることを見つけていったのです。
さらに,「だったら正五角形も180°になるよ」「正六角形も180°になる」と声があがります。教師が提示した図形を超えて,子どもたちは自ら対象場面を拡張してきまりを適用できると考えたのです。教科書の図形を1つずつ順番に提示することで,主体的な学び・対話的な学び・深い学びを引き出すことにつながったのです。

教科書教材の見せ方を少しだけ変えることで,新学習指導要領がめざす「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」を具現することができるのです。教科書分析で教える内容を明確に自覚します。その後,教科書教材の提示の仕方を工夫する展開を構想して,これからの算数授業創りを進めていきましょう!