2018年11月12日月曜日

小数のかけ算の筆算形式を任せる

4年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「1mの重さがgのうまうま棒があります。このうまうま棒4mの重さは何gですか」

先ずは,の中がどんな数なら計算しやすいかを考えさせます。子どもからは,1,10,20,100などの数字が発表されました。これらの数字なら,これまでの子どもたちの学習内容の範囲です。

続いて,の中がどんな数なら計算しにくいのかを考えさせました。まず,生まれてきたのは桁数が億や兆の数です。しかし,これらの数字も計算は大変ですが,子どもたちの学習範囲で解決することはできます。
一方,解決できない数字も発表されました。1.5や0.3などの小数です。小数のかけ算は未習です。これらの数値は解決できません。そこで子どもたちに,「これは解けないね」と投げかけます。「できない」とあきらめ顔の子どももいましたが,「だったら」と声をあげる子どもも大勢いました。

「だったら整数にすればできるよ」
「1.5を10倍して15にすれば,15×4になって計算できる」
「答えが出たら,さっき10倍したから10でわって戻せばいいよ」
「これなら他の小数も計算ができるね」

小数を整数に置き換えることで計算ができることを,子どもたちは見つけていきました。さらに,この考え方を使えば他の小数でも計算できることも見つけていきました。

そんな子どもたちに,「この計算を筆算でしたら式をどう書きま
すか」と尋ねます。1行目の1.5まで板書し,その続きを考えさせました。小数のかけ算の筆算形式を子どもに任せたのです。
子どもからは右のような2つの筆算形式が生まれました。左を考えた子どもの考え方を予想させます。
「1.5の1と4は一の位だから,位を揃えた」
 これまでの筆算では,位を揃えて計算を行いました。それと同じ考え方を,この計算にも当てはめたのです。
 一方,この筆算形式に対する反論があがります。
「これだと,計算がややこしくなりそうだ」
「5の下が数字がないから,0とすればいいのかな」
「0を書くということは2段になるのかな。面倒だな」

位を揃える形式は理解できても,その後の計算を考えると面倒な形式だという声です。

5と4の位置を揃えるという考え方の気持ちを予想します。
「1.5では計算できないから10倍して15にした。だから,計算は15×4だから5の下に4を書く」
この説明は,整数に置き換えた後の数字として筆算することをイメージしています。

そこで,2つの筆算形式で実際に計算を行ってみることにしました。
右の筆算は,10倍して15×4を計算します。かけられる数を10倍しているので,答えを10でわります。これが小数点の移動になります。
左の筆算は,1.5×4を1.5×4.0と考えることで,計算の面倒さを乗り越えることができることが見えてきました。
「1.5×4.0と考えて,両方の数を10倍します。15×40と考えます。これで計算します。答えは600です。さっき,10倍と10倍したから合わせて100倍です。だから,600を100でわります。だから,答えは6です」

1.5×4を15×40に置き換えて考えることで,一気に計算のハードルは下がりました。この考え方を理解した子どもから,今度は次の声があがります。
「だったら,小数×小数もできる」
「1.5×0.4なら,両方を10倍して15×4で計算ができる。答えは600。最初に10倍,10倍しているから100でわればできる」

小数×整数の筆算形式を考えることを通して,子どもたちは小数×小数のかけ算も同じように考えることで計算できることを発見することができました。形式を一方的に与えていたら,このような発見はなかったでしょう。子どもに任せることで,新しい計算の世界を子どもたちが発見した1時間でした。