1年生の子どもたちに次の問題を提示します。
「男の子が8人,女の子が5人います。男の子は女の子よりも何人多いですか」
問題に出会った子どもたちから聞こえてきたのは,次の声でした。
「たしざんかな」
「ひきざんじゃないの」
「よく,わからない」
子どもにとっては,まだ問題場面が十分に把握できていないようです。たしざんと考える子どもは,次のようにその根拠を説明します。
「だって,問題に『多いですか』と書いてあるからたしざんだよ」
「多い」=「たしざん」と考えたのです。子どもらしい論理です。この説明で半数近くの子どもが,「そうか!たしざんか」と納得します。問題文に見えるキーワードに,子どもたちがよく注目していることがわかります。しかし,そのキーワードに影響されすぎてしまうこともわかります。これは,実は1年生らしい考え方なのです。
これらの考え方に対して,「それはおかしいよ」という声もあがってきます。
「この問題は前の7月3日と同じだよ。『りすが8匹いました。オスは3匹です。メスは何匹ですか』と同じだよ」
「残りがないけど,ひきざんだったね。それと同じ問題だね」
「『残り』の変わりに『より』があるからひきざんだよ」
「『より』は『残り』と同じ意味だよ」
1週間ほど前に学習した問題と,今回の問題が似ていることに子どもたちは気づいたのです。多くの子どもたちが,すぐにその日のノートを振り返りました。この説明で,多くの子どもが,「やっぱりひきざんだ」と考えました。しかし,「よくわからない」と声をあげる子どももいました。
そこで,「よくわからない人もいるね。困ってきたね。そんなとき,どうしたらよかったかな」と子どもたちに投げかけます。子どもから生まれてきたのは,次の声でした。
「丸の図を使えばいいよ」
「丸を線つなぎをしたらいいよ」
男子と女子を表す丸をそれぞれ描きます。その丸を1対1でつなぎます。この線つなぎの学習は,4月に行っています。その場面を想起したのです。
ノートに丸の図を描かせて,線つなぎをさせました。この図から,今度は次の声が生まれてきます。
「線でつないだ男の子と女の子はペアだ」
「ペアになっていない男の子が3人だ」
「それが多い数だ」
「だから8-5だ」
これでこの問題がひきざんに式化できることが見えてきました。
この時間は,既習の場面を何回か振り返っていくことで,子どもたちが困った場面を乗り越えることができました。