2017年2月1日水曜日

子どもの考えと教師の考えのズレ

算数の授業を始める前,「きっと子どもは〜と考えるだろう」とついつい思い込んで授業をスタートしてしまうことがあります。

5年生の子どもたちに,次の問題を提示しました。
「1分間で4/5Lのジュースを作るマシンがあります。分では何Lのジュースを作ることができますか」
 子どもたちは,の中が整数なら計算できると主張します。が整数の場合は,既に学習を終えています。この声と同時に「分数ならどうやって計算するのだろう」という問いが生まれました。が分数になると,分数×分数の計算になります。この計算は,未習です。そこで,2/3の場合を考えることにしました。

 子どもたちは,既習の学習の考え方を使って,何とか計算しようとしました。

  4/5×2/3=12/15×10/15=12×10/15=24/3=

 この式の意味を読解します。「分数のたし算のように,分母を倍分して揃えた」「次に,分数のたし算のように,分子をかけて計算した」と子どもたちは考えました。倍分するアイディアは,分数のたし算からの発想です。分母を揃えたくなる気持ちは,子どもらしい発想です。私は,分母を揃えた後は,その分母同士もかけると考えていました。とこころが,子どもたちは分母はそのままで,分子だけをかける計算を考えたのです。これも,分数のたし算と同じ手続きで計算ができると考えたのです。子どもらしい発想です。子どものノートを見ながら,「そんな風に考えるのか」と感心をしました。分数のたし算の計算方法を活用した,よいアイディアでした。教師が事前に予想した子どもの姿と,実際の姿にズレが生まれた瞬間です。
 ズレに出会うと,何とか教師の想定していた世界に強引に子どもたちを連れて行こうとすることもあります。しかし,多くの場合,その強引な展開はうまくいきません。そんなときは,少し展開を子どもに任せてみます。

 先の考えに対して,次の指摘の声があがってきました。
2/3をかけているのに,答えがかけられる数の4/5Lよりも大きくなるのはおかしい」
かける数と積の大きさの関係からの指摘です。さらに,次の声もあがってきました。
「今の考え方だと,12/15×10/15の計算と12/15×10の計算が同じことになります。最初の式が違うのに,その後の式も答えも同じになるのはおかしい。だから12/15×10/15の計算の仕方は違うと思う」
分数のたし算のように考える方法の矛盾点を指摘する声です。この説明は分かりやすい説明でした。①の計算方法では,うまく計算ができないことが見えてきました。

4/5=12/15 12/15÷3=4/15 4/15×2=8/15

 2番目の式は,1/3分で何Lのジュースを作れるかを求める式です。この意味が読解できた瞬間「あー,分かった」という声がわき起こりました。1/3分当たりのジュースの量を2倍すれば,2/3分のジュースの量が求められます。この考え方は,わかりやすい方法でした。

4/5×2/3=4×2/5×3=8/15

 この式を考えた背景を考えさせました。「分数×整数では,分子だけをかけた。今度は分母があるので,同じように考えて分子と分母をそれぞれかけた」と,子どもたちは考えました。子どもにとっては,理解しやすい計算方法です。
 この考え方を使うと,①の計算は4/5×2/3=12/15×10/15=12×10/15×15=120/225=8/15となります。③の手続きで計算すれば,①の通分する考え方も偶然?にも同じ答えとなりました。


 既習の考え方を活用することで,何とか新しい計算場面を乗り越えることができました。しかし,これらの計算の答えが正しいかどうかはこのままではわかりません。図を描くことで,答えの確かめをしていきます。