「こぶたぬき」というしりとり歌があります。算数の時間,この歌を何回か繰り返し歌います。その後,「20番目の動物は何?」と尋ねます。
子どもたちは指を折って数え始めます。20番目まで小さな声で歌っているのです。かわいい姿です。しばらくすると,ノートにかけ算やわり算の式を書き出す姿も見られるようになりました。
やがて「ねこだ」と声があがります。なぜ,「ねこ」だと言えるのでしょうか。その理由を子どもたちが説明します。
「4×1=4,4×2=8・・・4×5=20だからねこ」
「わり算でもできるよ。20÷4=5だからねこだよ」
ところが,わり算の説明に対して「5だと何でねこなの?」と疑問の声があがります。「5」という数字を見ていても,「ねこ」という答えは見えてはきません。子どもらしい自然な疑問です。
そこで今度は,「5」が「ねこ」になる意味を全員で考えていくことにします。
「こぶた・たぬき・きつね・ねこで1セット。これが2セット,3セット,4セットあって,ねこは20番目」
「答えの5は5セットぴったりということ。ぴったりの最後はねこでしょ。だからねこ」
「2セット目で終わっ
たとしても,最後はねこ」
「5セットぴったり」「ぴったりの最後はねこ」の言葉で,「5だとねこ」の意味を全員が理解することができました。
「ぴったりの最後はねこ」の言葉を聞いた子どもたちもたちから,今度は「ぴったりじゃなかったらどうするの?」という声が聞こえてきます。子どもたちが,対象場面をわりきれるわり算場面から,わりきれない場面へと拡張して考え始めたのです。よい思考の流れが見えてきました。
ぴったりではなかったらどうするのかが,次の子どもたちの問題となりました。子どもからは,
「21番目だったらどうするの?」
「23番目はどうなるの?」
などと具体的数値をあげた声も聞こえてきます。
そこで「21番目だったら,どの動物か」を考えていくことにしました。しばらくすると「わり算は無理!」という声が聞こえてきます。
これまでに子どもたちが学習してきたわり算は,ぴったりと答えが見つかる計算(わりきれるわり算)のみです。しかし,21番目はぴったりと答えを見つけることができないのです。だから子どもたちは,「わり算は無理!」と声をあげたのです。
では,21番目の動物はわり算では見つけることはできないのでしょうか。子どもからは,次の声があがってきます。
「21÷4=5でしょ。でも,残りが1ある」
「残りは1だから,こぶたになる」
ぴったりわりない中途半端な数を,子どもたちは「残り」と命名してきました。しかし,「残り1だからこぶた」になるという説明は,すぐには全員に理解されません。
「ぴったりだとねこで終わる」
「残り1だから,ぴったりから1進んでこぶた」
「残りが2ならたぬき,残りが3ならきつね」
「残りが4ならねこ」
「残り4はないよ。またぴったりになるからねこ」
右図のように,各動物に残り「1ぴき目」「2ひき目」のように数字を入れることで,「残り1」だと「こぶた」になる理由が見えてきました。言葉の説明だけではうまくいかないときには,言葉を文や図に置き換えることで,理解は一気に進みます。
「こぶたぬき」のしりとり歌を使って,あまりのあるわり算の入り口の学習を進めてみました。