6年生の子どもたちへの,最後の授業です。子どもたちに「一筆書きはできるかな?」と尋ねます。ルールは丸印の付いている場所がスタート位置だということだけです。
最初に提示したのは,漢字の日を横倒しにした形です。これは一筆書きができました。スタート位置は,上下の中央の点のみ一筆書きができます。この結果に,子どもたちは次のように考えました。
「真ん中の点だからできた」
「真ん中は左右に行ける」
「でも端の丸は片方しか行けないから,できないんだ」
丸から伸びる辺の方向に視点を当てた声が生まれてきました。果たしてこの見方に,一般性はあるのでしょうか。多くの子どもたちは,この見方に自信を持っていました。一方,半信半疑の子どももまだいます。
そこで,別の形で実験します。三角形の中央に横線が入った図形です。ノートに一筆書きができるのか試します。しばらくすると「できた」と声があがります。三角形も,真ん中の丸からスタートした場合だけ,一筆書きが完成しました。
さて,真ん中からスタートすれば,どんな形でも一筆書きは完成するのでしょうか。「四角がもっと多くてもできるの?」と声があがります。
そこで正方形と長方形が組み合わされた図形を提示します。この形も一筆書きができました。この図形も真ん中の丸からスタートすることで,一筆書きが完成しました。
子どもの予想の正しさが,ここまで証明されました。そこで,さらに複雑な図形を提示します。漢字の「田」の上に長方形が接した図形です。何度もチャレンジしていると,「できない」「1本辺を減らしてくれたら」「2本辺を減らしてくれたら」と声があがります。
そこで,1本だけ辺を減らして一筆書きができるのかを考えさせます。すると「田」の右上の辺を1本減らすとできそうだと声があがります。果たして,本当にできるのでしょうか。
1本減らすことで,一筆書きはできました。この実験を行っているときに,よい声が聞こえてきました。その声を共有していきます。
「①と③を合わせたらできそう」
「真ん中の丸からスタートするとできる」
「真ん中の丸は,3方向だ」
「①なら左・右・縦」
「②は上・下・横」
「③も④も同じ3方向がある」
「あっ! ①は3方向が2つある。②も3方向が2つある」
「それなら③も3方向が3つある。④も3方向が3つある」
④は辺を1本消す前の3方向の丸は4つありました。しかし,その場合に一筆書きはできませんでした。辺を1本消した後は,3方向の丸は2つになりました。結果として,一筆書きが完成しました。3方向が2つある図形であれば,一筆書きができるということが子どもたちの話し合いを通して見えてきました。
授業終盤は,子どもたちが見つけたきまり(オイラーの定理)をもとに,自由に一筆書きの図作りに挑戦させました。シンプルな図からかなり複雑な図まで,子どもの柔軟な発想で作図ができました!