2018年9月3日月曜日

4年「2けたのわり算」の指導順を考える

4年生に「2けたでわるわり算」単元があります。この学習の大きなねらいの一つには,百の位÷十の位のわり算を筆算でできるようになることがあります。しかし,これはねらいの一つです。筆算を形式的に暗記して,それで計算ができるようになることがだけがねらいではありません。

教科書では,次のような展開順になっています。

① 80÷20を10の固まりをもとに計算する
② 84÷21を筆算で計算する。商の見積もりで,80÷20の見方を活用する
③ 96÷33を筆算で計算する。商の見積もりから,仮商の修正を行う
④ 170÷34を筆算で計算する。商は一の位にのみ立つ
⑤ 322÷14を筆算で計算する。商は十の位から立つ

②以降は,筆算の計算練習が中心になります。①では10の固まりの図をもとに,計算の仕方を考えます。しかし,②以降はそれは活用されません。見積もり場面でも,図を直接活用することはありません。
また,②〜④の計算の問題を筆算で計算する必要性はあるでしょうか。いずれも商は1桁です。わり算の筆算を使わなくても,かけ算を使って考える方が簡単かもしれません。
教科書では,筆算の計算手順をていねいにていねいに順序よく教える展開です。しかし,そこにはその必要性はないのです。

そこで,①のあとに⑤を位置づける展開を行いました。子どもたちは,それまでに,10の固まりの図やサクランボ算などを使って答えを見つける方法を発見しました。子どもたちは,「でもさあ,何十÷何十ならできるけど,中途半端な数のわり算だと計算できないんじゃないかな」と考えました。

この子どもの声をもとに,⑤の問題場面を提示します。「322枚の色紙を14人で等しく分けます。1人分は何枚ですか」と教科書と同じ問題を取り上げます。

子どもたちは,図やサクランボ算を使って考えます。ところが,うまくできません。「無理だよ」「サクランボは絶対に無理」などの声があがります。
そこで,百の固まりを3個,十の固まりを2個,1の固まりを2個作図した子どもの図を提示します。
百の固まりを14人で等分することはできません。子どもたちは,「だったら,百を十にして十にプレゼントすればいい」と考えます。この時点で,十の固まりは32個になりました。十の固まり32個なら,14人で等分できます。これをノートに実験で確かめます。十の固まりが1人に2個ずつ配れ,4個余ることが見えてきます。子どもたちは,「だったら,余った十の固まりは1にして一の位にプレゼントすればいい」と声があがります。

一の位は42個です。これを14人で等分します。子どもたちは,図で確かめます。一の丸を42個作図します。子どもたちは,「大変」「丸が多すぎる」と悲鳴をあげています。時間はかかりましたが,1人に3個配れることが見えてきます。
以上のように考えれば,1人分は20+3=23枚であることがわかります。図を使えば,それまで「できない」と思っていたわり算ができることが見えてきました。

子どもたちに「図を使えば,どんなわり算もできそうだね」と投げかけます。ところが子どもたちは,「めんどう」「丸をたくさんかくのが大変過ぎる」「時間がかかって大変だよ」と声をげてきます。

この場面で,私は筆算と出合わせました。ここまでに子どもたちが図を使って考えた計算方法は,筆算のそれと全く同じです。同じ計算を筆算で行うと,子どもからは「簡単」「すぐできた」と喜びの声があがります。筆算のよさを実感できたのです。教科書にようにていねいすぎる展開だったら,これほどまでに筆算のよさを実感するこはなかったのではないでしょうか。

筆算との出合いをどう演出するのかを考えて,教科書の授業順を見直すことも時には大切ですね。