2018年9月10日月曜日

しりとり歌であまりのあるわり算

3年生の子どもたちに,次のように投げかけます。
「こぶた→たぬき→きつね→ねこ のしりとり歌をもとに考えよう」

実にざっくりとした投げかけです。子どもたちは,「なにを考えるの?」「これじゃあ分からない」と鋭い指摘をしてきます。

まずは,このしりとり歌をクラス全員で歌います。この歌は,ねこまでいくと,もう一度こぶたに戻り,永遠に繰り返されることを確認します。

ここで,考える中身を提示します。
「12番目の動物はなにかな」
しばらく考えた子どもたちは,「簡単」「ねこ」と声をあげます。そんな子どもたちに,「本当?」と何度も尋ねます。「ねこだよ」と子どもたち。さらに「本当?」と尋ねます。すると今度は,「だから,図をかけばわかるよ」「式でわかるよ」と理由を説明する声が生まれてきます。

中学年までの子どもたちに,教師から理由を尋ねると授業が固まってしまうことが多々あります。中学年までの授業で大切なことは,子どもの中から理由を説明したくなる仕掛けを行うことです。

まずは,図だけを板書させます。ある子どもは,〇を12個書きました。

〇〇〇〇 〇〇〇〇 〇〇〇★

この図の意味をクラス全体で読解します。
「12番目だから丸を12個かいた」
「こぶた・たぬき・きつね・ねこで一固まり。この固まりが3個できる」
「3つ目の固まりの最後(★)が12番目だから,ねこ」

図はすぐに子どもたちに理解されました。しかし,「100番目とか1000番目とか数が増えたら,このやり方は大変になる」という,図の限界を指摘する声が生まれてきました。鋭い指摘です。

続いて,「式でわかる」という子どもたちに式を発表させます。

「12÷4=3」

この式の意味を読解させます。12,4,3の各数字の意味は簡単に読解できました。ところが,多くの子どもたちが納得できない表情でいます。その理由を説明します。
「答えが3だと,なんでねこになるの?」
多くの子どもが,頷いています。この問いを,クラス全体で考えていきます。

「答えの3は,こぶた・たぬき・きつね・ねこの固まりが3個あるってことでしょ」
「3つ目の固まりの最後がねこだから,ねこになる」
「固まりの最後は,全部ねこなんだよ。2つ目の固まりの最後もねこ」
「8÷4なら2。2つ目の固まりの最後もねこ。1つ目の最後の固まりもねこ」

子どもたちは,図と式を関連付けながら,説明をしていきます。「固まりの最後はねこ」の説明で子どもたちも納得です。

わり算の式でもどの動物かを判断できることが見えてきました。ところが,「でもさあ,中途半端な数だとわり算できないよ」「13とか14とか・・・」

きちんとわりきれいない数だと,わり算は使えないという声です。ここでも鋭い指摘が生まれてきました。そこで,次のように投げかけます。

「13番目だったら,どの動物かな」

式を13÷4と書くことはできました。しかし,「でも,答えはない」「計算できない」という声も聞こえてきます。これまでに子どもたちが学習しているわり算は,わりきれる計算のみです。あまりのある計算に違和感を抱くのは当然のは反応です。
「途中までなら答えは出る」という子どもがいました。そこで,その声をもとに続きをクラス全体で考えていきます。

「13番目は図で描くと 〇〇〇〇 〇〇〇〇 〇〇〇〇 ★ になる」
「4個の動物の固まりは3個あるから,3?」
「でも,1個(匹)だけはずれている」
「1個はずれているのが,こぶた」
「13÷4は3個の固まりでできて,はずれが1個になる」

話し合いを通して,13÷4の答えは「3はずれ1匹」ということが見えてきました。13÷4の答えを巡っての話し合いでしたが,子どもたちはその答えを説明するために,自然に図を描いて話し始めました。図を使いたくなる瞬間を子どもたちが感じたのです。図を使うことも算数では大切なことですが,このように子ども自らが図を使いたくなる状況設定を行うことが大切ですね。

さて,子どもたちはわりきれないあまりの部分を「はずれ」という言葉で表現してきました。「あまり」という言葉よりも,子どもにとっては固まりの中に入りきれない「はずれ」とう言葉の方が,あまりのイメージが持ちやすいようです。
また,「はずれの数によって,動物が変わる」という声もあがってきました。次時につながる声です。

この授業は,3年生「あまりのあるわり算の」第1時間目です。図と式の往復運動を何回も繰り返しながら,わりざんであまりを使う意味とその必要性を子どもたちが考えた1時間でした。