1年生は繰り上がりのあるたしざんの学習を進めています。これまで子どもたちは,たされる数かたされる数のいずれか一方を分解し,10を作ってから残りの数とたすという学習を進めてきました。8+3であれば,3を2と1に分解します。その上で,8+2=10と10の固まりを作ります。その後,10+1=11と計算します。このような計算方法について,子どもたちは次のように感じていました。
「だって,10の固まりを作ってから計算した方が簡単だよ」
「10+いくつ は簡単に計算できる。9+いくつ 8+いくつ はわかりにくい」
「7+3+5の3つのたしざんでも,7+3=10を作ってから残りの5をたしたでしょ。10に5をたすと簡単だから,同じように考えたんだ」
10の固まりを基準に考える良さをこれまでの学習で実感しているからこそ,上のような声が生まれてくるのです。
10の固まりの計算を作る過程で,多くの子どもは小さい方の数を分解した方が計算が簡単だと考えました。9+3であれば,10の固まりを考えるときに,「9はあといくつで10ができる」と考える方が,「3はあといくつで10ができる」と考えるよりも簡単に残りの数が見つけられると実感しているからです。
さて,そんな子どもたちに「8+8」を提示します。すると,「えー」「できない」と声があがります。たされる数もたす数も同数です。このタイプの問題とは初めての出会いです。「できない」の声を受けて,「8+8の答えは出せないんだね」と投げかけます。
「答え出せるよ」
「そうだよ。どっちかを分ければいいんだよ」
「私は最初の8(たされる数)をわける」
子どもたちは,たされる数かたす数のどちらかを2と6に分解して,計算を進めていきます。このように考えれば,8+8もこれまでと同じ方法で計算ができます。
ところが,T男がニコニコしながら計算する姿が見られました。T男のノートには8+8の下に7+9の式がかかれていました。7と9では7が小さい数です。そこで,その7を6と1に分解し10を作っていました。小さい数を分解するという前時までの学習に当てはまるように,8+8の式を変身したのです。すばらしい視点です。
T男の式を板書し,次のように投げかけます。
「8+8の式なのに,7+9に変身した気持ちは分かるかな」
子どもたちが説明します。
「8から1ひくと7。8に1をたして9」
「8から1をひいて7にしたから,8に1をたさないとだめなんだよ。だから8+1で9にした」
「1をひいたから1をたさないと答えが変わってしまうよ」
「1をひいて1をたせば,ちょうどよくなる」
1年生なりに,T男の式変形のきまりを説明することができました。8+8の計算を行うだけなら,7+9に変身する必要はありません。しかし,T男の見方は「計算の工夫」などの単元で学習する見方につながるものです。例えば,99+99は(100+100)−2と考えれば暗算でも計算ができます。このような学習につながる見方がT男の見方なのです。1年生でも,式変形につながる見方ができたことに驚きました。
目の前の学習内容とは直結していないけれども,価値ある見方が子どもから生まれることがあります。それらの見方をキャッチし授業の舞台に載せていくことも教師の大切な役目です。