2年生「1万までの数」の一コマです。次のように投げかけます。
「次の数字を漢字で書きましょう」
1問目は「2354」を提示します。これは全員が「二千三百五十四」と書きます。
2問目に「1763」を提示します。この問題の反応は2つに分かれました。そこで,次のように子どもに投げかけます。
「2つの漢字の書き方がありました。自分とは違う書き方の予想はつきますか?」
多くの子どもたちは,「千七百六十三」と漢字を書いていました。彼らからは,「一千七百六十三だと思う」と声があがります。的確にもう一つの書き方を予想しました。
そこで,「1763は,『一千七百六十三』と書くのか,『千七百六十三』と書くのか」を考えさせます。
「一千七百六十三」と書く子どもが主張します。
「ぼくは,いつも『一千七百六十三』と言っています」
「お店でも『一千七百六十三』と言っています」
一方,「千七百六十三」と書く子どもも主張します。
「私は,『千七百六十三』と言っています」
どちらも普段の数字の読み方を根拠にしています。これでは両者の溝は埋まりません。そこで,「じゃあ,どっちでもいいということかな?」と投げかけます。すると,これまでとは違った見方が生まれてきました。
「例えば『163』だったら,これを『一百六十三』とは言わない。これは『百六十三』としか言わない」
百の位迄の数字の読み方と関連付けることで,「一千七百六十三」の読み方の不自然さを指摘する声が生まれてきました。多くの子どもたちも,この声に納得しています。
ところが,この説明に対する反論が生まれてきます。
「でもさあ,一万になると一がつくよ。万とは言わないよ」
先ほどは,位を小さくすることで「一千七百六十三」の読み方の不自然さを指摘してきました。ところが,今度は反対に一万の位に数を大きくした場合の反論が生まれてきたのです。
17633は「一万七千六百三十三」と読み・書きますが,「万七千六百三十三」とは読み・書きません。素晴らしい論理展開です。
さらに,子どもたちは「一」の使い方を仲間分けしてきます。
「一万から上には一がつくんだよ。一万から下には一はつかない」
「万があるかないかで,一がいるかどうかが決まるんだ」
1763の読み方自体は,教師が教えてしまえば一瞬で終わります。しかし,このように展開していくことで,子どもの数に対する論理を豊かに育てていくことができるのです。子どもの中の小さなズレを授業の舞台に載せ,子どもが論理を深めていった1時間でした。