2020年1月11日土曜日

答えは5か5.0か

3年生の小数の計算場面の1コマです。子どもたちに,計算問題に取り組ませます。

① 0.6+5.2=5.8
② 1.5+3.8=5.3

ここまでは順調です。3問目は「3.6+1.4」です。計算自体はすぐに子どもたちも終わりました。そこで,答えを尋ねます。「5.0」と答えが発表されます。すると,それに対して「えっ?」という声があがります。ズレを感じた声です。ズレを感じた子どもが,「5だよ」と声をあげます。この声で,教室が一斉に賑やかになりました。

「答えは5だよ」
「違うよ。絶対に5.0だよ」
「5でいいんだよ」
「どっちでもいいんじゃないのかな」

様々な声が飛び交います。そこで,子どもたちの考えの根拠(論理)を聞いていきます。まずは,5.0と考える子どもたちの論理です。

「5.0だよ。だって,小数のたしざんをしているんだから答えも小数で書かなきゃだめだよ」
「筆算で計算すると繰り上がって1.0になるでしょ。この0を消したら繰り上がりがあったことがわからなくなる」

続いて5と考える子どもたちの論理です。

「だって,5にした方がコンパクトになる」
「5.0の0には意味がないでしょ。だから0はいらない」
「整数の5をわざわざ05とは書かないから,小数第一位の0はいらない」
「もし,23−21の式だったとします。小数だから5.0にしなきゃいけないなら,この答えも,十の位の計算なんだから02と書かなければいけなくなる」(T男)
「そうだよ。これが1010−1009なら0001になって,答えが長くなってめんどうになる」

T男の考えは高度な論理的思考力から生まれたものです。一旦,5.0でよいとしたらという立場で考えたのです。その立場で23−21を計算すると,これまでの既習学習との矛盾点が生まれることを指摘してきたのです。

しかし,5.0と考える子どもも,「整数と小数は違う」と主張してきます。さらに話し合いは続いていきます。

「3.6mと1.4mを合わせた長さは何mですかという問題なら,5mと答えるでしょ。5.0mとは答えないはず。だから5でいいんだよ」
「3.6+1.4を形で考えると,答えの小数第一位の部屋には形が消えてしまいます。形が消えたんだから,0はなくてもいいんだよ」

長さに置き換える考え方や,数字を形という具体物に置き換える考え方が生まれてきました。さらに,話し合いは続きます。

「もし,小数第一位じゃなくて,もっと小数が続いていくとします。そうすると,5.000000000と書いたら0が多すぎてめんどうになる」

3年生で学習する小数の範囲は小数第一位までです。しかし,もしこの範囲がもっと拡張したら,5.0の考え方ではかなり不便になると考えたのです。場面を拡張して考えていくことは,算数ではとても大切な考え方です。

答えが5か5.0か。もちろん,どちらの答え方も間違いではありません。しかし,子どもたちはどちらの答え方の方がよりよいのかとい視点で,1時間熱中して話し合いを続けました。子どもがお互いの論理をぶつけながら高め合っていくすばらしい姿が見えた1時間でした。