2025年9月25日木曜日

体力低下は本当ですか?

「今の子どもは昔の子どもよりも体力が落ちていると言われているけど,本当ですか?」
このように尋ねます。
「昔は外で遊んだから,昔の方が体力がある」
「今の方がお母さんに外に出ろと言われるから,今の方が体力がある」

様々な予想が生まれます。
予想にズレが生まれます。そこで,50m走の実際のデータで比べます。今の子ども,15年前の子どもの順に,50m走のデータを提示します。途中から,子どもたちはいろいろなことに気づきはじめます。

「今は7秒台がいるけど,昔はいない」
「昔は遅い人があまりいない」
「人数が今と昔は違う」
「だったら平均で比べたらいい」

今は8人,15年前は15人です。人数が違うため,平均で比べようと考えたのです。計算の結果,今は9.1875秒,昔は8.9秒です。結果は,昔が速いということになります。この結果に残念そうな子どもたちです。「仕方ないかあ・・・」という表情の子どもがいました。
そこで,「では今の子どもの体力が低いということでいいですね?」と投げかけます。すると「でも」という声が聞こえてきました。

「でも,一番速いのは今で7.5秒,昔は8秒だから今が速いよ」
「一番遅い記録も,今は11秒で,昔は11.2秒。だから,今が速いよ」
「でもさあ,8秒台の人を見ると,今は8人で少なくて,昔は15人で多い」

データを見つめる様々な視点が生まれてきました。視点を変えたら,今の子どもが速いと判断することもできます。

さて,それぞれのデータは当初はバラバラに貼っていました。その状況から,「カードを並べた方が分かりやすい」と声があがります。

子どもたちはカードをどんな風に並べようと思っていたのでしょうか。多くの子どもは,速い順にカードを積み上げることを考えました。しかし,それでけではすぐに「8秒台が15人で多い」ということを読み取ることが難しいことが見えてきました。

すると,両手を平行に動かした後,その上に手をさらに左右に動かすジェスチャーをする子どもの姿が見えました。このジェスチャーの意味を読解します。

「定規の目盛りみたいに,線を入れていってその上に印をつける」

数字の並びを横向きにして,そこに同じ秒数を分類していくイメージです。これがドットプロットの原型になりました。この原型で,ノートに作図をしてみます。

横向きの図を見た子どもからは,次の声があがります。
「さっきよりも分かりやすい」
「昔は8〜9秒に集まっている」
「今のは9〜10秒に集まっている」

データの○印の散らばり具合いに違いがあることも見えてきました。

定規の目盛りをヒントに,新たなデータの表現方法が生まれてきた1時間でした。