3年生の子どもたちに,「じゃんけんアップダウンゲームをしよう」と投げかけます。
2人1組で行うゲームです。最初の持ち点は2.5点からスタートします。ジャンケンをして,パーで勝つと0.3点,チョキだと0.2点,グーだと0.1点の得点がアップダウンします。このゲームを2回戦行います。各回の得点の高い方から低い方の得点の差を求めます。この差が,今回のゲームの得点となります。
このルールを聞いた子どもから,次の声があがります。
「どっちかたくさん勝って,どっちかたくさん負けたらいいんだ」
この声のイメージは,すぐに伝わりました。子どもからは「よーし,1回戦はたくさん勝って,2回戦はたくさん負けよう」などの声が聞こえてきました。
じゃんけんゲームをスタートします。子どもたちは,「1回目はたくさん勝とう」などと意気込んでゲームに臨みます。しかし,相手がある勝負です。なかなか思い通りにはなりません。
2回戦のゲームが終わりました。高い得点から低い得点をひきざんして,自分の得点を求めます。しばらくすると「引き分けだ」という声がたくさん聞こえてきました。2/3以上の子どもたちが引き分けという結果になりました。
そこで,引き分けだった子どもたちの結果を聞いていきます。
O男 1回目:3点 2回目:2点→3−2=1点
H子 1回目:2点 2回目:3点→3−2=1点
この2人の得点は,1回目と2回目が入れ替わる特殊な事例です。そこで,「特別だから引き分けなんだね」と子どもたちに投げ返します。
すると,「違う!僕たちも引き分け」「中途半端だけど引き分け」という声が多数着てきます。そこで,それらの声を板書で明示します。
I男 1回目:2.7点 2回目:2.7点→2.7−2.7=0点
S子 1回目:2.3点 2回目:2.3点→2.3−2.3=0点
やはり引き分けです。しかし,これも1・2回目が同じ得点という特殊な事例です。
I子 1回目:3.1点 2回目:2点→3.1−2=1.1点
Y男 1回目:1.9点 2回目:3点→3−1.9=1.1点
今度は得点がバラバラですが,やはり引き分けです。この他のバラバラの得点の子どもたちも,結果は引き分けとなりました。すると,この結果を見た子どもから,新たな発見の声があがります。
「わかった。同じ得点が行ったり来たりするだけだから,引き分けなんだ」
「同じ点が勝つ・負けるだから,引き分けなんだ」
「だったら,どんな点でも引き分けになるということかな」
「あれ,(各回のゲームの)最後の2人の点数をたすと5点になってる」
「本当だ。私のチームも5点だ」
このゲームは,どんなじゃんけん結果になっても引き分けになるのです。その理由を論理的に説明しつくすことは3年生では難問です。しかし,3年生になりに同じ得点が差し引きされているだけという事実にその原因があるのではないだろうかと推測するところまでは辿り着くことができました。
実は,このゲームを進めながら子どもたちはたくさんの小数の計算練習を行っています。ゲームをしながら,計算練習もできてしまった授業でした!