前回の学習では,二等辺三角形は二辺の長さが等しいことを,子どもたちは見つけてきました。この学習を終えた後,K子が私の所へ来て,次のように説明をしました。
「先生,定規で長さを測らなくても,半分に折ったら長さが同じかが分かります」
折って辺の長さが同じであることを確かめるアイディアは,その授業では生まれてきませんでした。そこで,K子のアイディアを次の授業のスタートとして取り上げることにしました。
次のように子どもたちに投げかけます。
「K子ちゃんの発見で,何が分かるのでしょうか」
K子の発見をそのまま伝えるのではなく,半分に折ると何かが発見されたということだけを伝え,何を発見したのかを考えさせました。
「折って重ねたら,辺の長さが同じことが分かる」
K子が発見したことが生まれてきました。ところが,「まだある」と声があがります。他にも半分に折ることで見えてくることがあるようです。一方,「もうないよ」という表情の子どもたちもいます。
「半分に折ると(折り目の)縦線ができます。そこ(底辺と垂線の交点部分)に直角が2個できます」
「半分に折ると,右の幅と左の幅が重なります」
「幅が同じことが分かります」
「他の二等辺三角形も,幅は同じになっています」
幅(角の大きさ)の話題は,前回の学習でも生まれてきました。しかし,そのときに子どもたちが注目したのは,三角形上部の幅の大きさでした.ところが今回は,底辺の左右にできる2つの角の大きさが同じであると考えたのです。しかし,この指摘に対しては半信半疑の表情の子どもたちもいました。ここまでは実際の操作活動は行っていません。頭の中だけで考えているため,半信半疑になるのも当然です。
そこで,二等辺三角形を配布し,子どもたちが発見した「辺の長さ」「直角が2個」「幅(角の大きさ)」についての実験を進めていきます。
三角形を半分に折った子どもたちから,「同じになった」「幅が重なった」と喜びの声が聞こえてきました。
底辺の両サイドの幅が同じになることが確かめられました。また,直角が2個できることも確かめられました。そこで,「幅」は「角の大きさ」ということを教えます。
その後,別の二等辺三角形でも「辺の長さ」「直角」「角の大きさ」が2カ所等しくなるのかを確かめていきます。すると,どの二等辺三角形でも2カ所ずつ同じ大きさになることが確かめられました。
最後に,「頂点」「辺」「角の大きさ」の用語を教えます。すると,子どもからは次の声が聞こえてきました。
「三角形だから,頂点・辺・角が3個あるんだ」
「だったら,四角形は4個ずつあるね」
「五角形は5個ずつあるね」
「でも,円には何もないね。丸いから,辺も頂点もないね」
「円を半分に折ったら,辺ができるよ」
三角形の名称と図形の構成要素の数の間に関係があると子どもたちは考えました。さらにそこから,対象範囲を拡張し多角形・円の場合を考えていくことも出来ました。