子どもたちに「同じ形ではどれかな?」と投げかけます。
最初に右の二等辺三角形を提示します。この二等辺三角形と同じ形を見つける学習です。この形をよーく見せた上で,この形を隠します。
「全然違う」
「角っとしている所が4個ある。さっきのは,角っとしている所は3個でしょ」
「真っすぐな線の数も違うよ。最初のは3本で,今のは4本でしょ。だから,今のは四角」
「そうだよ。最初のは三角なんだよ」
「三角」「四角」という言葉は,日常生活で子どもたちが使い慣れています。それらの言葉を,角と辺の数の視点で整理する言葉が生まれてきました。この場面で「角っとしいる所」は「角」,真っすぐな線は「直線」と言葉を置き換えることを教えます。
次に,右の図形を提示します。この図形も,「違う」と声があがります。
「これも違うよ。直線が4本で,角が4個でしょ」
学習したばかりの「直線」「角」の言葉を使って,最初の形と異なることを説明することができました。
今度は,左の形を提示します。三角形です。ところが,これに対しても「違う」と声があがります。子どもたちが,違うと考える理由を説明してきます。
「右下の角が,四角みたいにかくっとなっている」
右下の角の大きさが,最初の形と異なることを「かくっと」という子どもらしい言葉で表現してきました。しかし,この「かくっと」という言葉は曖昧です。そこで,「『かくっと』ってどういうこと?」と子どもたちに投げ返します。
ここでまたまた子どもらしい反応が生まれてきました。多くの子どもたちが,手や腕を使って「かくっと」を表現したのです。左手を縦方向,右手を横方向に向けて「かくっと」を表現する子どもがいました。また,両腕を2方向に向けて「ウルトラマンのビームみたいな形」と説明する子どももいました。まだ,角度は知りません。ジェスチャーで必死に表現していく2年生の姿は微笑ましいですね。「英語のLの形だよ」という説明も生まれてきました。
これらの直角に対する表現をきっかけに,子どもたちはすでに提示された図形も見直します。
「さっっきの四角(長方形)にも,ウルトラマンのビームがある」
「この四角には,ウルトラマンのビームが4個あるね」
長方形の概念への気付きが生まれてきました。
今度は,右の形を提示します。最初の形に似ています。しかし,これに対しても「違う」と声があがります。
「最初のは囲まれている。でも,今のは切れているよ」
「もし,最初の三角の中に水を入れたとします。これは水はこぼれません。でも,今の形は隙間があるから水がこぼれるよ」
最後に,最初と同じ三角形を提示します。「そうそう,それだよ」と今度は満足の声が聞こえてきました。
「三角形」「四角形」「頂点」「直角」の用語を,合わせて指導を行います。
「三角形と四角形」学習で大切な図形の構成要素に対する教科書4時間分の概念が,1時間の授業で一気に生まれてきました。子どもたちが本来持っている概念を引き出し,クラス全員で共有していくことで,指導計画の時間概念を超えた展開ができました。