2023年11月27日月曜日

「ちがい」の思い込み

 「あんパンが13個あります。あんパンとメロンパンの違いは」まで,問題文を板書します。この時点で,「違いは何個? このままじゃあできないよ」「式が作れないよ」などの声が聞こえてきました。問題文に不備があることを指摘する声です。鋭い視線で問題文を見る子どもたちです。

問題文の続きを板書します。

「5個です。メロンパンは何個ですか?」

板書を終えると同時に,「8個」という声がたくさん聞こえてきました。そこで,ノートに自分の考えを書かせます。「13−5=8」という式を書く子どもが多数いました。一方,「たすかひくかわからない」「たしざんでも引き算でもできるんじゃない」「『多い』と『少ない』がないから分からない」「式が2個?」などの声も聞こえてきました。

これらの声は,問題文が条件不足であることを指摘するものです。しかし,この声の意味はすぐには理解されません。なぜなら,多くの子どもたちは「13−5=8」という式になることを前提に問題文を見つめているからです。この考えに自信をもっているために,もう一つの式の存在に目が向かないのです。

そこで,「『多い』と『少ない』がないから分からない」の声の意味を読解していきます。

「メロンパンの方が多いなら8個」

「違うよ。あんパンよりもメロンパンの方が5個多いなら13−5だよ」

多くの子どもたちは,この問題文をイメージして「13ー5」と考えていたのです。では「少ない」というキーワードの問題文は存在するのでしょうか。

「あんパンよりもメロンパンの方が5個少ないだよ」

「これなら,13+5だよ」

この問題文で考えれば,「13+5」の式は存在します。「13−5」になるという問題場面の思い込みが,「13+5」の問題場面を排除したと考えられます。

「問題文に,『多い』『少ない』がないから,たしざんが引き算かが決められないんだよ」

「だから,最初の問題がダメなんだよ」

思い込みというものは怖いですねえ。今回の授業では,子どもたちはその思い込みで問題場面に正しく向き合いことができなかったことが見えてきました。