2024年12月30日月曜日

鼓童の研修から教職を考える

 故郷に帰省しています。新潟ではローカル放送で佐渡を拠点に活動する世界的和太鼓集団・鼓童の特集を放送していました。鼓童の研修生として入った女性が正式団員に合格するまでのストーリーを追ったものです。

鼓童の正式メンバーになるためには,2年間の研修生活が必要です。テレビも携帯もない廃校を再生した施設で太鼓とじっくりと向き合います。しかし,それを終えても,研修生として合格できるのは3割ほどです。その後は,さらに研修生としての見習い期間があります。番組で取り上げられた研修生は,半年の研修期間がさらに3カ月延長されていました。その後,正式に正式団員として合格します。その間,ひたすら太鼓や自分自身と向き合っていきます。

鼓童は太鼓の音色を届ける集団です。だからこそ,太鼓にじっくりと向き合い,演奏の仕方に悩み続け,練習を続けていくのです。

翻って私たち教師の本業は何でしょうか? もちろん授業です。子どもが「今日の授業は愉しかった」と感じてくれるような授業を届けることです。そのためには,鼓童の団員さんのようにひたむきに授業創りに向き合い必要があります。しかし,働き方改革の名の下で,研究授業を廃止する学校があるそうです。意味のない事務作業や活動を削減することは必要です。しかし,私たちの本業である授業改善に向ける研修を削減することは,本業放棄ではないのでしょうか?

鼓童はお客様から入場料金をいただいて,太鼓の音色を届けています。お金をいただくということは,プロだということです。教師も公立の場合は税金で,私立の場合は授業料という形でお金をいただいています。従って,教師もプロなのです。

3年の研修期間を経て鼓童の正式団員になれた女性と比較して,改めて教師の授業準備に対する姿勢を見直すきっかけとなりました。日本の学校という組織は大丈夫かなあ…。

2024年12月23日月曜日

レポート持参が参加条件

 先日,大阪府吹田市&箕面市の先生方によるジョイントイベントが開催されました。

そのイベントの中で,参加された全ての先生が自分の実践を紹介する時間が設定されていました。4〜5人で1チームを作り,お互いが実践を紹介するのです。紹介の仕方は自由です。タブレットで作成した資料を提案する方,スマホにある板書写真を提示する方,実践されたものを印刷して配る方などさまざまでした。

実践レポートが参加条件に加味されることで,参加された先生方のモチベーションが確実に高まっていることを感じることができました。

単にお客様として一方的に話を聞くのでは無く,自分も発信者になる場面を設定するという今回のスタイルは,参加者意識を一気に高める上でも効果的ですね。是非,他地区のイベントもこの方法を見習ってもらえるとよいのではないでしょうか?

そういえば私が若い頃参加していた教育技術の法則運動も,講座の参加条件の一つがレポート提出でした。レポートを提出すると,俄然やる気がUpした自分がいたなあ・・・。


関西算数授業セミナー申し込み開始

 2025年2月22日(土)開催の関西算数授業セミナーの申し込みが始まりました。

以下のアドレスから,お申し込み下さい。https://www.kokuchpro.com/event/ac461683f8d927a28225ad7da4192917/



2024年12月22日日曜日

関西算数授業セミナーのご案内

 2025年2月22日(土)に大阪府高槻市で関西算数授業セミナーを開催します。テーマは,「子どもが主体的に見方・考え方を働かせる算数授業とは」です。

本セミナーは,関西地区の若手の先生方が中心に企画・運営を進めていきます。4人の若手先生による模擬授業対決があります。ワクワクする企画ですねえ。



2024年12月21日土曜日

2024年最後の対面講座!

 今日は,2024年最後の対面講座です。オンライン講座は来週もあるんですけどね…。

大阪府箕面市と吹田市の先生方によるコラボ研修会です。80名以上の先生方が参集されるようです。今回は先生方のある力を試す問題からチャレンジしてもらいます。さて,どんな問題が出されるのでしょうか?

会場でお会いできることを楽しみにしています。

2024年12月20日金曜日

20%引き問題

 子どもたちに次の問題を提示しました。

「□円の20%引きは2000円です。□は何円ですか」

問題に取り組んでいる一部の子どもが,次の式を書いていました。

「2000×(1+0.2)」

この式を書いた気持ちを読解します。

「20%引きだから,それをたして考えた」

「引いたからたした」

このように考えたくなる気持ちは分かります。しかしです。

「それは昨日の考えだよ。昨日は,1に0.2をたした」

「でも,今の問題は1から0.2を抜いていく」

「だから,2000円が0.8倍になる」

引く20%をたしていくのか,本当に引いていくのか。問題場面によってその手続きは変わっていきます。今回は図を使うことで,その場面を明確にしていくことができました。

2024年12月19日木曜日

消費税10%は?

子どもたちに,次の問題を提示します。 

「消費税10%を含めて定価693円の筆があります。この時の消費税は何%ですか」

一部の子どもたちが,「693×0.1=69.3(円)」と計算していました。そこで,この式を書いた気持ちを読解します。

「693円の10%だから,0.1倍した」

「でも,それは違うよ」

「もとが違うよ」

「もとの値段に消費税10%の値段がたされた値段が693円だよ」

「図に描くと分かるよ」

子どもたちは図を使って,693円の中に消費税10%の金額が含まれていることを理解していきます。この693円の構造が見えてくると,693円が1倍ではなく,消費税10%を含めた1.1倍であることが見えてきます。

この関係が見えれば,あとは4ます関係表を活用することで立式も見えてきます。

今回はハードルの高い割合問題に取り組みました。ほとんどの問題で子どもたちは,4ます関係表を活用しながら問題に取り組んでいきました。



2024年12月18日水曜日

20%+20%は40%?

子どもたちに次の問題を提示します。
「定価5000円の帽子があります。ユニシロは20%引き,ユニアカは30%引きで売っています。すると相手の店を見て,ユニシロは更に20%引き,ユニアカはさらに10%引きにしました。どちらで買いますか?」
最初に聞こえてきたのは,「どちらも一緒」の声です。そこで,この声の意味を読解していきます。
「ユニシロは20%引きで,更に20%引きだから,合わせて40%引き」
「ユニアカは30%引きで,更に10%引きだから,合わせて40%引き」
「だからどちらも40%引き」
「どちらも一緒」の声の背景を読解することができました。
ところが,「もとが違う」「図を描いたら分かる」などの声が聞こえてきました。

「図にすると,最初の20%はここ(①20%)。さらに20%引きのときのもとの1はここ(青の1)」
「さっきより小さくなる」
「次の20%は,①よりも小さくなる」
「だから40%引きにはならない」
図を使い,最初のもとの大きさの1と,1回目の割引後のもとの大きさの1が変わることが見えてきました。この部分はていねいに共有していきます。
図のイメージから,2回の割引は40%よりも小さくなりそうだということが見えてきました。果たして,本当なのでしょうか。そこで,計算で確かめます。
「ユニアカは最初20%引きだから,5000×0.8=4000円。次は,この4000円から20%引きだから,4000×0.8=3200円」
「40%引きだと考えると,5000×0.6=3000円だから,高くなっている」
値引き後に値引きする場合は,割引の割合をそのままたしてはいけないことが見えてきました。


 

2024年12月15日日曜日

授業伴走企画!

 昨日は授業テラス主催の授業伴走企画をオンラインで行いました。1年生と6年生担任の先生の授業ビデオをもとに,授業構想や授業展開のあり方,子どもの声のキャッチ&レスポンスの仕方などについて学びました。私と授業者とのマンツーマン企画です。一般の校内研修でもここまで細かく指導を行うことはありません。マンツーマンだからこそできる細かい点にまで言及できる点が,この授業伴走企画のよさですね。

年明け,また募集がある予定です。その際は是非ご応募を!

2024年12月13日金曜日

プシパンVSイマザキパン

次の問題を投げかけます。

「プシパンとイマザキパンがあります。プシパンは日曜日は全品2割引,イマザキパンは日曜は400円以上買うと100円引きです。どっちで買いますか?」

問題に出合った子どもから聞こえてきたのは,「もとの値段は」という声と,「?」いっぱいの表情でした。条件不足の問題文なので,このままでは解くことはできません。それが先の声や表情が生まれた要因です。

すると,次の声が聞こえてきました。

「例えば400円だと考える。プシパンは2割引きだから320円。イマザキパンは100円引きだから300円」

400円という具体的なパンの値段が例示されことで,子どもたちも問題場面のイメージができました。そこで,「イマザキパンで買ったら得だね」と子どもたちに投げかけます。多くの子どもは,納得の表情です。ところが,「でも」と声があがります。その続きを聞いていきます。

「もし1000円買うと,プシパンは800円でイマザキパンは900円だから,プシパンがお得になる」

「真ん中で引き分けになるってこと?」

「500円なら引き分けかな?」

「500円なら,プシパン400円でイマザキパンも400円で引き分けだ」

「500円から上ならプシパン,500円より下ならイマザキパンがお得だ」

「待って,300円だとプシパンは240円になるけど,イマザキパンは400円超えないと100円引きじゃないから300円のままだよ」

「400円より下ならプシパンだね」

400円という例示の数値が生まれてきたことで,子どもたちの発想が一気に広がっていきました。例示ができる力を鍛えることは,問題解決をスムーズに進める上でも大切な見方の一つですね。


2024年12月11日水曜日

割合と百分率

子どもたちに「ペンキ屋が壁に24㎡のペンキを塗りました。これは全体の面積の30%です。塀全体の面積は何㎡ですか」と投げかけます。
問題に取り組み始めてしばらくすると,「分からない」「30%と24㎡?」と戸惑っている声が聞こえてきました。困っている子どもが一定数いました。
そこで,どうしたら問題が解けるか考えさせました。「4ます関係表を作ったらいい」と声があがります。
そこで,4ます関係表の上半分を提示ます。「□㎡」と「24㎡」の数値が記入された表です。「下にはどんな数を入れますか?」と尋ねます。「100%と30%」という声が聞こえてきました。一方,「1倍と0.3倍」という声も聞こえてきます。
そこで,「100%と30%」の声の意味を共有していきます。問題文には「30%」の言葉があります。そこからこれらの数値を入れたのです。意味としても妥当です。ところが,「でも」と声があがります。
「100%と30%にすると,式がここから見えない」
「横にしても縦にしても,式が見えない」
4ます関係表のよさは,代入した2量の数字の関係からすぐに式が見えることにあります。しかし,現在の4ます関係表では頭の中で計算を行わないと,すぐに式は見えてきません。
「だから,百分率を割合に直して入れる」
「1倍と0.3倍にする。これなら式が見える」
「0.3倍を1倍にするには÷0.3とすぐに式が見える」
「もとは1だった。今までの4ます関係表は自分÷自分で1が見えた。割合の数字なら,自分÷自分で式がすぐに見える」

割合の表し方には,0.3倍,30%,3割と3つも表記の仕方があります。しかし,4ます関係表を使って式を見つける場合には割合に戻して考える必要があることが見えてきました。
ここから式は,24÷0.3=80となり80㎡の塀であることが見えてきます。
割合場面を式化するときのポイントが見えた1時間でした。


 

2024年12月10日火曜日

今年最後の算数イベント!

先日の全国算数授業研究会関西大会には,オンラインを含めて多くの先生方にご参会いただきました。授業提案が2本ありました。やはり授業を見て語り合うことができるのが,本研究会のよさですね。ご参会いただいた先生方,ありがとうございました。

さて,今週末は授業テラスで研修会があります。その後もいくつかの研修がありますが,今年最後の私が関わる研修会は以下のものです。ご興味のある方はご参加下さい。

今回はこれまでの他会場での研修会では紹介していない新ネタを披露します。「気づき」の視点を取り入れることで,授業が大きく変化しいった経過とその効果を演習形式で紹介します。お楽しみに!

こちらの会は,箕面市・吹田市の先生でなくても参加できます。「私のブログを見た」と言っていただければ大丈夫です。

会場は箕面市内です。詳細は担当の先生に聞いて下さいね。



2024年12月7日土曜日

明日は全国算数授業研究会算数セミナー!

明日,12月8日(日)は全国算数授業研究会関西ブロック主催の算数セミナーです。関西大学高槻ミューズキャンパスを会場に開催されます。ほぼ定員一杯の参加をいただいています。若干の余裕があるようですので,ご希望の方は以下からお申し込み下さい。

今回はなんと同学年・同単元での授業対決になります。6年「比例・反比例」の授業をビデオを公開します。同じ場面でも,授業者やその思いが異なれば全くことなる授業が展開されるはずです。どんな授業が展開されるのか楽しみですねえ!

お申し込みは以下からお願いします。

https://www.kokuchpro.com/event/ac9b9abd94e814e343b9268f64e27c11/

2024年12月6日金曜日

分数と4ます関係表を使い分ける

 割合の問題に取り組みました。子どもたちの半数弱は問題場面を分数に置き換えて問題解決を進めました。半分強の子どもたちは4ます関係表に問題場面を置き換えて問題解決を進めました。

分数を支持する子どもは「分母と分子の2つしか数字がないから簡単」と考えています。一方,4ます関係表を支持する子どもは「数字4カ所と赤ちゃんで式が見つかるから簡単」「もとの1が分かりやすい」と考えています。

子どもによって,解決のアイテムを使い分けているようです。

今日は20分のショートバージョンの算数でした。


2024年12月5日木曜日

歩合

プロ野球選手のヒットの割合を題材に,歩合の用語を学習しました。
その後は,パターンブロック掴み取りを行いました。赤のブロックをつかみ出した割合を歩合で表しました。
今回の問題場面を子どもたちは,どのようにして乗り越えていったのでしょうか。分数を使う子どもが半分,4ます関係表を使う子どもが半分でした。
「式が見つけやすい」が4ます関係表を支持する主な理由でした。「数字が2つで簡単」が分数を支持する理由でした。それぞれのよさを見極めながら,子どもたちは問題解決を進めているようです。






 

2024年12月4日水曜日

私の授業をある視点から分析する

 盛岡での公開授業に,京都から始発の飛行機で駆けつけてくれた授業テラスのメンバーがいました。授業後,彼からこんな言葉を聞きました。

「今日は尾﨑先生が子どもたちを,何回褒めるのかを数えていました。38回までは数えられたのですが,その後は止めました・・・」

子どもを褒める・価値づけるという視点から授業を参観するのもよい学び方ですね。それにしたも褒め回数を数えられていたとは・・・。びっくりです!

投票率を考える

 前回の衆議院議員選挙の投票率を考えました。比較したのは島根県と東京都です。投票率は70%と54%です。分数で考える子どもが6割,4ます関係表で考える子どもが4割ほどでした。

ところで,定員の差を比較すると,島根2人に対して東京は30人です。15倍の差があります。では,投票率の差も同様の差があるのでしょうか。こちらは投票者数で比較すると,約12.6倍の差になります。このデータを使って東京の衆議院議員の定数を見直すと24人でいいことになります。東京の定員が30人では,真面目に投票に行っている島根県民が可哀想だだいう考えもあります。

割合→投票率→政治へと思考の枠を広げていった時間でした。時間の関係で25分授業でしたけど・・・。



2024年12月3日火曜日

ストーリーの原点

 ストーリーのある授業を構成することが大切です。そのためには,授業のデザイン力が大切です。

しかし,このデザイン力と同じくらいに大切な力があります。それは子どもの動きや呟きをキャッチしていく子ども観察力です。これは医師の診断力に相当する力です。

先日の盛岡市での6年生への授業をじっくりと振り返りました。私の想定を超える発見が,想定外の場面で生まれてきた授業でしたが,その要因を分析してみました。

その結果,ある男の子の指の動きをキャッチし,それを授業の舞台へと載せたことが結果として大きな発見へとつながったことが見えてきました。

ある男の子の指の動きに気づくことができなければ,きっと想定を超える発見は生まれてはこなかったと考えられます。さらに,その動きを授業の舞台に載せたことで,授業展開は次の段階へとステップアップしていきました。そのことが,結果として新たな発見の連続へとつながっていったのです。

いかに子ども一人一人の動きに目を配り,その動きの意味を分析し,授業の舞台に載せるか否かを瞬時に判断することが大切だということが見えてきました。瞬間的な判断の時間帯がズレてしまったら,おそらく同じような展開にはなりません。その意味でも,これらの一連の思考活動と判断を瞬時に行う高度な力も大切になりますね。


2024年12月2日月曜日

全体と部分は分数がフィットする?


 くじびき問題を子どもたちに提示しました。前時までの学習をもとに,問題場面を分数に表す子どもが2/3ほどいました。4ます関係表を使っている子どもは,1/3ほどでした。子どもたちにとって,全体と部分で構成されて問題場面を置き換えるには,分数で考える方がイメージ化がしやすいようですね。