2023年6月23日金曜日

思考力成長の境目

 私が新潟で教員をしていたころ,福島の小松信哉先生から,「演繹的思考力は4年生後半から生まれる」とお聞きしたことがあります。そこで,その真偽を当時の勤務校の先生方にもお願いをして実証実験を行いました。その結果,見えてきたことがあります。それは前述の演繹的思考力の境目が4年生後半にあることだけでなく,演繹的思考を子どもたちがしたくなる瞬間があるということでした。

演繹的思考は,理由を考えていく見方・考え方です。一方,低学年からも見られる帰納的思考・類推的思考は,複数の情報から共通点やきまりを見つけたり,それらが当てはまる対象範囲を子ども自らが拡張して実験ししたりしていこうとする見方・考え方です。必ずしも同一線上にあるとは限りませんが,多くの場合,帰納的思考・類推的思考が発揮された延長線上に演繹的思考が発揮されます。簡単に言えば,きまりを見つけた後に,そのきまりが当てはまる理由が分かるということです。理由が分かる,さらにそれを論理的に説明していくことは,前者のそれとくらべるとかなり高度です。前者は,見えたきまりの事実だけをそのまま表現すればよいだけだからです。

では,演繹的思考が子どもがしたくなる瞬間はいつ訪れるのでしょうか。それは子どもたちが帰納・類推の世界を十分に楽しんだ後に訪れるということです。「Aの場面だけなく,Bの場面でもCの場面でもきまりが当てはまる」と子どもたちが場面を拡張してきまり発見を楽しんだ後,その瞬間は訪れるのです。教師が放っておいても,子どもの方から「理由が分かった」と演繹的思考につながる声が生まれてきます。これはかつての勤務校での実証実験で明確になりました。従って,子どもが帰納・類推の世界を十分に楽しんでいない段階で,「理由を説明してください」と教師が問いかけてもうまくいかないことが多々あるのはこのためです。

実は,国語の世界でも論理的思考力の境目は4年生後半にあるそうです。これは先日,本校の国語のカリスマ教師と話をしていて分かったことです。

思考力の境目は,教科の壁を越えて同じような時期に訪れるのですね。この境目を意識した指導が必要ですね。