子どもたちに、次の問題を提示します。
「イチゴが何個かあります。キウイはイチゴより2個少ない10個です。イチゴは何個ありますか」
問題文を板書している途中で聞こえてきたのは,「『すくない』はできない」「前は「5個多い」だった」「『多い』と『少ない」だから反対になっている」の声です。前回の問題と比較して,その違いを鋭く指摘してきました。
「『すくない』からできない」という声が聞こえてきたので,「この問題はできないね」と子どもたちに投げ返します。すると今度は,次の声が聞こえてきます。
「図を描いたら分かるよ」
「図を描けば,次に式も分かるよ」
そこで,ノートに自分がイメージする図を描かせます。ホワイトボードには,キウイが10個ある図だけを板書させます。1年生にとって,多くの情報を一度に読解するのはハードルが高いからです。
先ずは,丸10個の図が,キウイの数であることを確認します。その後,「次はどうしたらいいのかな」と尋ねます。すると,「2個少ないから」と言いながら,キウイの7個目と8個目の間に線を引きました。「少ない」のですから,2個少ない位置に線を引いたのです。ところが,この行動に対して「そうじゃない」という声があがります。
「少なくしたらダメだよ」
「2月26日は『多い』でひきざんだった。だから今日は,『少ない』でたしざんだよ」
前回の学習から導き出された考えです。一見もっともそうですが・・・。何人かの子どもは,首をひねっています。「少ない」=「たしざん」の論理構成が理解できないからです。
子どもたちの説明が続きます。
「イチゴより2個少ない10個だからたしざんだよ」
「???」
「10+2で12個だよ」
「???」
「2個少なくて10個がキウイでしょ。だから,10個に2個たしたら元にもどるんだよ」
「!!!」
最後の説明で,首をひねっていた子どもたちの顔が笑顔に変わっていきました。しかし,すぐにではありません。この場面はゆっくりと展開しました。1年生の理解には時間がかかります。
今回の問題は,「少ない」と書いてあるにもかかわらず「たしざん」でした。そこで,この逆である「少ない」で「ひきざん」の問題文を考えさせました。
「イチゴが3個あります。1個食べたら少なくなりました。残りは何個でしょう」
この問題文なら,「3−1」のひきざんになります。
「少ない」なのに「ひきざん」「たしざん」,「多い」なのに「たしざん」「ひきざん」の両方の式が導きされることがあることが分かりました。子どもからは,「だから図で確かめたらいいんだ」と声があがります。これこそまさに,本時で培いたい見方です。問題文のキーワードだけで,単純に立式を行うのではなく,問題場面を読解し図に表現していくことが算数学習の第一歩であることに,子どもたちは気付いていきました。