2024年6月30日日曜日

明日は福岡!

 福岡に来ています。明日は福岡県内の小中一貫校にお邪魔します。6年生と9年生の授業を参観します。その後,私も授業公開を行います。

中等部に当たる授業を参観するのは久しぶりです。楽しみですねえ!

2024年6月29日土曜日

24㎤になる式

 本日は本校のICT研究会でした。子どもたちに「24㎤になる立体の体積を求める式を読解しよう」と投げかけます。「読解ってなんですか?」と想定外の声があがります。まあ,この意味が分からなければ,問題ができませんからね。

24㎤の体積に取り組む前に,12㎤になる式で練習します。この後に作成するプレゼンのイメージ化を共有する意味もありました。

「3×1×4」の式を提示します。子どもたちは縦3㎝,横1㎝,高さ4㎝の直方体をイメージしました。そこで,私がヒント1の画面を提示します。そこにあったのは,1㎤が3個つながった画像です。想定外の画像に,驚きの声があがります。その後,「L字?」「平ら」「高くなっている」などの声があがります。ヒント1だけでは,立体の状況を確定することはできません。

そこで,ヒント2の画面を提示します。立体を真横から見たものです。L字になっています。これで立体の全体像が見えてきました。

最後に完成した立体の全体像を提示します。

子どもたちには,24㎤になる立体を前記の手順で好きなアプリを自由に選択させ作成させていきました。

活動が始まると,想定以上に時間がかかりました。子どもたちはきれいに立体を並べようとします。さらに,どの向きから写真を撮るのかにもこだわりました。写真を撮影しようとした瞬間に積み上げたブロックにタブレットがぶつかれ崩れ去る・・・なんていう現象も起きました。思い他,画面作成に時間がかかったしまいました。

さて,最後に「3×3×4ー1×1×3×4」という式を作ったM子の式を,全員で読解します。式の前半は,すぐにイメージができました。縦・横3㎝・高さ4㎝の直方体です。問題は,式の後半です。かけ算に3つではなく4つの数字が登場するからです。

この「1×1×3×4」は,さらに前半と後半に分解します。「1×1×3」と「×4」です。前者は,1㎤が3個縦につながった形です。後者は,この立体が4本あるということです。イメージ化できた子どもが,見取り図を作成します。他の子どもたちは手元のブロックで式に合う形を作成します。

M子のプレゼンの最後の全体像の画面では,子どもたちから拍手が起きました。

同じ式でも,様々な見方ができることに気付いた1時間でした。


2024年6月28日金曜日

「−3」の意味は?

前回の学習で疑問として残った「ー3」を取り上げます。
「辺+角ー3のー3は何?」
合同な多角形を作図するために必要な情報数を求めるためには,「辺+角ー3」という式でその数が求められるという考えが生まれてきました。この式で情報数を求めることはできましたが,「ー3」の意味が分かりませんでした。
そこで,三角形と四角形の2つ図形を限定して提示します。三角形は「2本の辺の長さと2つの角度」,四角形は「4本の辺の長さと1つの角度」で作図ができます。
「この図の中に,ー3はあるのかなあ?」
このように尋ねます。しばらくすると「分かった」「あ!」という声があがります。

「情報がない場所だ」
「三角形なら2つの角度ど1本の辺」
「四角形なら3つの角度」

使わない情報という逆転の発想が生まれてきました。子どもたちもこの視点に納得です。五角形でも確かめます。五角形の場合も,作図に使わない情報は3つでした。

「ー3」というのは作図に使わない情報数であることが分かった時間でした。


 

2024年6月26日水曜日

四角形に必要な情報数は?

前回の学習の続きを行いました。
「角の情報があれば,4つの情報で合同な四角形は作図できるだろうか?」

辺の長さ4本の情報だけでは合同図形の作図ができませんでした。しかし,「角度が分かればできるかも」との声があがりました。そこで本時は,角度の情報を与えて実験を行うことにしました。
先ずは「辺3本,角1つ」の情報で実験します。しかし,うまく作図できません。
そこで,「辺2本,角2つ」の情報で実験です。しかし,これでもうまくできません。「右端の長さが分かればできる」と声があがります。そこで,右端の辺の長さが3㎝であることを教えます。すると「できました」の声が次々とあがってきます。つまり,合計5つの情報があれば合同な四角形の作図ができたことになります。
しかし,これは偶然かもしれません。そこで,「辺4本・角1つ」の情報5つのパターンでも実験を行います。結果は,このパターンでも作図ができました。

すると,子どもの中から声があがってきます。
「それなら五角形は7つあればできるね」
「3つ→5つと2つ増えたから,次も2つ増えて7つの情報だね」
「辺の数と角の数をたして,3を引いたらいいんだよ」
「三角形なら3+3−3で3つ。四角形なら4+4−3で5つ。五角形なら5+5−3で7つ」
「おー,すごい!」
「こわーい!」

合同な五角形の作図に必要な情報数7つを導き出す理由が,2つ生まれてきました。中でも後者の式を使った見方には,驚きの声が子どもからあがってきました。

そこで,五角形を実験します。「辺4本・角3つ」の7つの情報で実験です。しばらくすると,「できました」と声があがります。五角形は子どもたちの予想通り,7つの情報で作図できることが分かりました。

すると今度は,「それなら六角形は2つ増えて9つだね」「6+6−3でも9つだね」と声があがります。ここまでの結果をもとに,類推的に場面を拡張する声です。ここで時間となりましたが,最後に子どもから聞こえてきたのが,子どもたちが「こわい」と感じた「6+6−3」の式の中の「−3」の意味でした。「なんで3を引くの?」という疑問が生まれてきました。


 

2024年6月25日火曜日

合同の図形を作図しよう!

「合同な図形を作図しよう」
子どもたちに投げかけます。その後,隠しておいた三角形を一瞬だけ提示します。「もう1回見たい」と声があがりますが,もう見せられないことを伝えます。すると,この条件を聞いた子どもたちが話し始めます。
「辺の長さと角度があればできそう」
「辺の長さだけでできるんじゃない?」
「昨日の勉強で,四角形は長さだけではできなかったよ」
「でも今日は三角形だから,長さだけでもできるかもよ」
「長さと角度でもできるんじゃない」
「角度だけでもできる?」
「いや,角度だけではできないよ」

提示された形が三角形であることは,認識できています。しかし,分かっているのはそれだけです。そこで,辺の長さや角の大きさが分かれば作図できるのではないかという声が生まれてきました。

そこで,先ずは辺の長さ3本の情報だけで作図ができるのかを実験します。結果は,見事合同図形が作図できました。
するとこの結果を見た子どもから,「長さが1本と角度が2つでもできるかも」と声があがります。そこで,この条件でも実験を行います。見事,この条件でも作図はできました。
すると今度は「長さが2本と角度が1つでもできる」と声があがります。この条件でも,作図はできました。
その後,「角3つもできる」と声があがります。しかし,「それは無理だよ」という声もあがります。「無理だ」という子どもたちが説明します。
「角が同じでも,長いのと短いのができる」
「二等辺三角形だとします。下の角度が同じで上の角度も同じだけど,辺の長さが長いのと短いのができます」(例示の図を描きながら説明)
この説明で,子どもたちも納得します。これで,角だけの情報では合同図形の作図ができないことが分かりました。

するとここで,「三角形は3です」と声があがります。この「3」の意味を共有していきます。
「長さ3本の3.長さ1本と角2つで1+2の3。長さ2本と角1つで2+1で3」
「三角形は辺が3本あるから3つの情報なんだ」
「それなら,六角形なら6つできる」
「四角形なら4つできる」
「五角形なら5つでできる」

子どもたちは多角形の辺の本数と合同な作図に必要な情報数が等しくなると考えました。一方,そうはならないという子どももいます。果たして,子どもたちが見出した関係性は正しいのでしょうか。

そこで,「辺が4本」の条件を実験します。4本の長さを教えますが,「それはできないよ」と声があがります。
「だって,昨日の勉強で同じ4本の辺でも,正方形と平行四辺形ができたから,辺だけできないよ」

昨日の学習とつなげることで,辺の情報だけでは作図はできないことが明確になりました。しかし,これだけでは4つの情報で作図ができないことにはなりません。角度の情報があれば4つの情報でも作図ができるかもしれないからです。果たして結果は。この続きは明日に行います。



 

2024年6月24日月曜日

長さだけいいの?

「合同な四角形を見つけよう」と投げかけます。この投げかけだけで,子どもたちが動き出します。
「重ねたらいい」
「だからすぐ分かる」
「長さ・面積・角度が同じだね」
前時の合同条件を自然にふり返る声が生まれてきました。

子どもたちに目を閉じさせ,探していく四角形を提示します。元は青の四角形です。探す対象は赤の四角形です。目を開けてしばらくすると,「④が当たりだ」「⑥も当たりだ」と声が聞こえてきます。なかなかよい感覚をもっています。

さて,ここで子どもたちに「今日は重ねてはだめだよ」と比較条件を提示します。すると「できない」と声があがります。しかし,すぐに「定規と分度器で調べたらできる」と声があがりす。合同の条件が長さ・面積・角度ということは分かっていますので,これらを測定したら合同図形を判別できるという声です。

子どもたちに同じ図形を配布します。定規や分度器を使って測定していきます。最終的に④⑥が合同図形であることが分かりました。測定している中で生まれてきたのが,次の声です。
「長さだけ調べたらいいね」

測定は長さだけでいいのでしょうか。そこで,この声を取り上げます。「長さだけでいい」という声も聞こえますが,「角度もいる」という声もします。このとき生まれてきたのが,4本指を使って例示でした。
「正方形を斜めにすると,平行四辺形みたいになる。形が変わる」
具体例が生まれることで,辺の長さが同じなのに,異なる形が生まれることのイメージが伝わりました。つまり,角度も調べないと合同かどうかを判定できないということも分かってきました。ところが,子どもの声はさらに続きます。
「四角形はそうだけど,三角形は角度いらないんじゃない」
「三角形で辺が同じで違う形ってあるのかな」

合同の図形探しを通して,合同の条件を精査していくこともできました。


 

2024年6月21日金曜日

全く同じ形はどれ?

 「全く同じ形を見つけたら当たり」

このように子どもたちに投げかけます。すると,「簡単だよ」「でも,1㎝位違ったら」と声があがります。そこで「1㎝位違ったら」の言葉の意味を読解していきます。

「全て全部いっしょっていうことだよ」

「長さが同じということ」

「重さも同じ」

「『同じ形』の形を探すから,重さは関係ないよ」

「面積も同じ」

「角度も同じだな」

子どもたちは,「長さ」「面積」「角度」の3つの視点が同じであれば,全く同じ形と判断できると考えました。すると「結構難しいね」と声があがります。「簡単」という当初のイメージは飛んでいきました。さらに,「長さ・角・面積が分からないと比べられないね」と難しさの要因に着目した声があがります。ところが「それなら重ねて比べたらすぐ分かるよ」と声があがります。よい比べ方の視点が生まれてきました。

その後,青の三角形と全く同じ形をカードを裏返して探していきます。

1枚目のカードが引かれます。「うーん,違う?」「小さい」などの声が聞こえてきます。すると今度は,目元に定規を当てたり,2本指で間を測定したりしながら,2つの三角形の長さや角の大きさを目測する姿が見えてきました。目測ではありますが,長さと角度に視点を当てたよき調べ方です。子どもたちの目測では,赤の三角形の辺の長さ短く見えるなどの理由で同じではないと考える子どもが多数いました。

最後は,2つの図形を重ねて調べます。結果は,外れです。赤の方が辺の長さが小さいことが分かりました。

3枚目に引かれたのは,もとの三角形とは反対向きの図形でした。すると,この図形を引いた子どもが,カードを回転させます。この行動の意味を読解します。

「裏返しても同じ形なら,当たりでいいんだよ」

「だから,カードを裏返したんだよ」

「裏返した方が比べやすいね」

そこで,カードを裏返した状態で「全く同じ形」かを考えさせます。裏返すと,青の図形と同じに見えてきます。目測でも辺の長さ,角度が同じに見えました。最後に,2つの図形を重ねて調べます。結果は,ぴったり重なります。

その後も同様に当たりを見つけていきます。2枚の図形を重ねることで,長さ・角度・面積の3つの視点で全く同じ図形を見つけることができることが分かりました。このような図形を合同と言いますが,合同の見方をゲームを通して引き出した1時間でした。



2024年6月20日木曜日

値引きセール

次の問題を子どもに提示します。
「関大スーパーで値引きセールをしています」
条件不足の問題文です。「これでは分からない」「数字がない」と不足の条件を指摘する声があがります。
そこで,具体的場面を提示します。
「おにぎり 150円→200円」
「ハンバーガー 200円→150円」
この場面を見た子どもたちが,話し始めます。
「どっちも50円引いている」
「同じ安さだ」
「違うよ」
「始めの値段が違うから同じでいいの?」

定価が異なる品物を,同じ50円引きしても,安さが同じだと考えることに違和感があるようです。そこで,「より安くなっているのを,どうやって比べたらいいの?」と尋ねます。
ここで生まれてきたのが,「1/3」という分数でした。突然生まれてきた分数に,首をひねる子どももいます。そこで,「1/3」の意味を共有していきます。

「(円を描いて)おにぎりは50円,50円,50円になる(円を3等分する)。引いたのはこの中の50円だから,1/3」
「150円がもとの値段。安くなったのは50円。だから50/150」
「これは1/3と同じ」

分数の分母をもとの値段,分子を値引きした値段と考えることで,分数表記の意味が見えてきました。
この考え方を使って,ハンバーガーも分数表記していきます。ピザ(円)の図を使うことで,値引き分が1/4であることが分かります。

値引きは1/3と1/4なので,1/3のおにぎりの方がより安くなったことが,図と分数で確認することができました。
私の想定とは異なる展開となりましが,子どもの分数を使いたくなるアイディアをもとに納得を引き出すことができました。

 

2024年6月17日月曜日

倍々にはならない?

次の問題を提示します。
「あすかさんは犬を飼っています。次のように成長の様子をメモしました」
その後,「生まれてから10日目−630g」「生まれてから30日目」までを提示します。すると子どもたちが動き出します。
「30日目は630×3になる」
「3倍になるね」
「そんなに大きくなる?」
「人間だったら,5歳の体重が10㎏なら10歳で20㎏。20歳で40㎏。40歳で80㎏・・・となるよ。そんなのあるかな?」
提示されたデータに比例関係を見出そうとした子どもたちですが,現実を考えるとそれはありえないことに気づいていきます。

そんな子どもたちに「生まれたときの体重は何㎏ですか」と尋ねます。この問いかけに対して,式がすぐに見える子どもが多くいました。一方,式に自信がない子どもは4ます関係表を使って確かめていました。そこで,4ます関係表を板書させます。そして,「4ます関係表の□はなんですか?」と尋ねます。
「生まれたときの体重」
「だから1倍」
「基準だから1倍」
基準量を意識した声が生まれてきました。4ます関係表は比例関係を前提にした問題解決のツールです。このツールを使いこなすために必要な見方が「基準」の意識です。その見方が,4ます関係表の□の意味を考えることを通して生まれてきました。
基準が見えることで,式も「630÷1.8」になることが見えてきます。

この見方を活用すれば,「生まれてから30日目の体重が840gで2.4倍になった」という情報でも生まれたときの体重を求めることができます。

30分ほどの授業でしたが,基準意識を明確した学習を進めることができました。


 

2024年6月15日土曜日

鹿児島県大隅地区算数研修会のご案内

 9月14日(土)鹿児島県鹿屋市で算数研修会が開催されます。研修会のテーマは,

「子どもと共に創る算数授業づくりと学級経営」

です。この講座では,算数の授業づくりだけではなく学級経営についても話をします。学級経営と授業づくりは切っても切り離せない関係にあります。授業がうまい先生は学級経営も素敵です。学級経営が素敵な先生は授業もうまいのです。こんな関係を,この研修会では明らかにしていきます。

算数授業は尾﨑学級の授業ビデオをもとに開設をしていきます。

相棒は筑波大学附属小の森本隆史先生です。森本先生も算数授業&学級経営の達人です。2人で鹿児島の研修会を盛り上げていきます。

本研修会は鹿児島県外の先生方も参加できるそうです! 詳細は以下をご覧ください。

申込は以下のアドレスからどうぞ!

R6年度 大隅地区算数部会研修会の申込みについて (google.com)




基準はどっち?

子どもたちに次のように投げかけます。
「赤白青黄のリボンの長さは何mですか」
当然これだけでは,長さは分かりません。「数字を教えてほしい」などの声があがります。

そこで,問題文の続きを提示します。
「青は赤の3.5倍です」
「赤は2mです」
子どもたちがノートに青の長さを求めていきます。ところが,わり算の計算・かけ算の計算をしている姿が見えます。さらに「えっ,えっ」「青が長い?」などの戸惑いの声が生まれてきます。すると,「図を描けば分かるよ」と声があがります。抽象を具体に置き換える見方です。そこで,図を板書します。
「赤が①だとしたら,青が3.5になる」
「赤が基準」
「言葉にしたら,青=赤×3.5になる」

図に置き換えることで,リボンは青が長くなることや「2×3.5」のかけ算の式で求められることが見えてきました。ところがここで,「3.5×2でもいいんじゃない?」と声があがります。答えはどちらも同じになります。すると,この声に対する説明が続きます。
「それは違います。3.5×2にしたら,青は3.5mの赤の2倍という話になる」
「4ます表にしたら分かるよ」
「横に×3.5するから,式は2×3.5」
図・4ます表・問題文・基準にこだわることで,正しい求め方に辿り着きました。

続いて,2問目を提示します。
「黄は赤の0.6倍です」
「黄は1.2mです」
2問目は先ほどよりもハードルが高かったようです。「わかんない」「わり算?かけ算?」という戸惑いの声が聞こえてきました。
困ったときには図や4ます表を使うことを,子どもたちはこれまでの学習で経験しています。最初に生まれてきたのが,図を使うアイディアです。
黄のリボン1.2mを描きます。その下に,赤のリボンを描きます。0.6倍という問題文があるので,1.2mの長さの0.6倍の長さの線を引きます。この図を見た子どもから,「あれ?」「赤の方が長いよ」と声があがります。基準量を赤とみるか青とみるかで,図が異なります。この話し合いで,赤の方が長いことが見えてきました。しかし,この図を見ただけでは式を特定することはできません。

そこで,4ます表を使って考えます。「1.2m」「□m」を書き入れます。その下に倍の数を記入します。ところがここでもズレが生まれます。「1倍」をどちらの下に記入するかについてです。
「1.2mが1倍じゃないよ」
「基準は赤でしょ。だから赤の□mの下が1倍」
「基準は1問目も2問目も変わっていないよ」
「1問目と同じ言葉にしたら,黄=赤×0.6だよ」
「だから式は1.2÷0.6だよ」

基準意識が繰り返し出てきた1時間でした。基準意識は算数学習では低学年から繰り返し活用される大切な見方・考え方です。


 

2024年6月12日水曜日

全国算数授業研究大会へ

今年の夏も,筑波大学附属小学校を会場に「全国算数授業研究大会」が開催されます。

期日は8月5日(月)〜6日(火)の2日間です。今回は10本の公開授業を行います。例年の大会の授業公開数のほぼ倍です。

言葉だけでの議論ではなく,実際の授業を通して授業者の提案内容を議論していくのが本大会の特徴です。実際の授業を通して議論するのですから,言い訳はできません。子どもの素直な反応が授業の善し悪しを語ります。とてもシビアな研究大会です。しかし,シビアだからこそ授業者もそれを斬るパネラーにも本質を見抜く目や本質に導く授業力が問われます。

暑い夏に算数に熱い志をもった先生方が集う全国算数授業研究大会へお越しください。

お申し込みは以下からお願いします。


 

2024年6月10日月曜日

基準量を意識する

次の問題を提示します。
「1m〜10mの青と赤のテープがあります。青のテープの長さは赤のテープの長さの□倍です。赤と青のテープの長さは何mですか」
この問題提示で,子どもたちが次のように声をあげます。
「青は赤より長いね」
「でもそれは,□が1より大きい数のときだけだよ」
「0.7倍なら青の方が赤より小さくなる」
「1倍なら青と赤は同じだね」
具体的な数値を例示しながら,子どもたちは問題場面をイメージ化していきました。
□が2倍の場合を考えます。青が2mなら赤が何mかを考えます。子どもからは「1m」「4m」の2つの声が聞こえてきます。
「青は赤の2倍だから,青は1m」
「赤が4mなら,もし『赤は青の2倍』という問題ならいいんだけど」
基準量を赤にするか青にするかで,見方が変わるという説明が生まれてきました。

次に,青が4mの場合を考えます。この問題で生まれてきたのが,図を使ったものです。
「赤が基準だから①。青はその2倍だから②になる」
基準となる赤を①という数値と図に置き換えたことで,問題場面のイメージ化が図れました。この図から4ます関係表のような比例関係も見えてきました。

その後,□を0.5倍,2.5倍と変化させていきます。小数倍になっても,基準量は変化しません。2倍と同様に考えることができます。図でも同様のことが見えてきます。
基準量を見つけること,またその大きさを1と置き換えると考えやすくなることが見えた1時間でした。


2024年6月8日土曜日

比例はあるかな?

今日はオープンスクールでした。お受験予定の保護者方が参観に来られる授業公開です。
子どもたちに「比例はあるかな」と言って,1つの正六角形を提示します。これを見ただけで,子どもたちの話がスタートします。
「まだないよ」
「比例は2つはいるよ」
「3ついるよ。だって,もし最初が5で2番目が10だとしたら,+5なのか×2なのか変化が分からない」
「3番目が15なら比例だけれど,20なら比例にはならない。だから3つは知りたい」
比例と判断するための最小情報量の議論が進められました。既習と自然につながったよい意見でした。
次の変化を提示します。1つ目の六角形の周りを囲むように六角形を6個並べていきます。子どもたちは,「辺の数」「面の数」と考えますが,いずれも比例はしていません。比例はないのでしょうか・・・。
しばらくすると「ありました」と声がします。「くっついている所以外のかどっこ」と,その場所を示す声がします。これで「あー,本当だ」「えっ?」と両方の声があがります。さらにしばらくして「出っ張っているところ」と声があがります。この声で,一気にこの言葉の意味が共通理解できました。飛び出している頂点の個数を言っているのです。
出っ張っている頂点は12個です。最初は6個です。2倍の関係です。
しかし,これだけではまだ比例とは決められません。そこで,3周目で実験します。子どもたちはノートにパターンブロックの六角形をなぞって3周目を作図します。しかし,ノートに入りきらない子どもが多数いました。「描けません」「はみ出します」と声があがります。作図の限界です。だからこそ,比例の考えを活用するよさもあるのですけどね。
さて,完成したホワイトボードの図形確認します。出っ張っている頂点数は18個でした。1周目の6個から3倍になっています。これなら比例と断定できそうです。
比例関係が確定できれば,4周目も作図をしなくても計算で求められます。6×4で24個だということがわかります。

参観された保護者の方からは,「私も子どもの頃にこんな楽しい算数授業を受けたかった」とお褒めの言葉をいただきました。子どもの思考が連続していった1時間でした。

 

2024年6月7日金曜日

式が見えない・・・

 子どもたちに,次のように投げかけます。

「AとBの2本のゴムがあります。伸ばすとそれぞれ次のようになりました。何倍に伸びたでしょう」

Aのゴムデータを提示します。4.8mが7.2mへと伸びました。子どもたちはノートに向かって計算を始めます。ところが,しばらくすると「どう計算するの?」という戸惑いの声が聞こえてきました。この声の意味を読解します。

「式が分からないってことだよ」

「7.2÷4.8なのか4.8÷7.2なのか決められないんだよ」

わり算の式になることは見えています。しかし,わられる数・わる数の数値を決められないことが戸惑いの原因でした。

すると「4ます関係表にしたらいいよ」と声があがります。これまでの問題解決で困ったときに使ってきた必殺アイテムです。

子どもたちが4ます関係表をノートに書き,式を見つけていきます。ところがまたしても「まってまって」と,戸惑いの声があがります。戸惑いの原因を尋ねます。

「4.8mと7.2mは分かる。でも,後が分からない」

「3つ目の数字がない」

これまでに子どもたちが取り組んだ問題文には,必ず3つの数字がありました。ところが,この問題場面にはそれは存在しません。すると,次の声があがります。

「7.2mの下が□倍だよ」

3つ目の数字ではなく問われている部分の「□倍」という声があがります。「何倍の伸びたのでしょう」と問われています。そこから「□倍」の声が生まれてきました。この部分が見えると,4.8mの下も見えてきます。

「分かった。1倍だ」

「どういうこと?」

「だって4.8mはそのままってことだから1倍だよ」

もとの長さが4.8mなので,ここが1倍になります。これで4ます関係表が完成しました。これで式が見えてきます・・・。

ところがです。困っている子どもたちが多くいます。「赤ちゃんが入らない」と声があがります。比例関係を表す矢印がうまく入れられないのです。4.8mを7.2mにするための式がすぐに見えてきません。これまではこの部分の式はすぐに見えました。困りました。

すると2人の子どもが,両腕を上下に動かすジェスチャーをしているのが見えました。このジェスチャーの意味を読解します。

「分かった!縦だ」

「縦?」

「縦ならいける」

比例関係を横ではなく,縦で見つけたのです。4.8mを1とみなすためには4.8÷4.8と計算します。同じ比例関係式が4ます関係表の反対側にも位置付きます。これで式が見えてきます。7.2÷4.8と計算すれば,何倍かが分かります。

しかし,4ます関係表に縦方向に式を見出すのは初めての経験です。そこで,この見方が偶然なのかを尋ねます。1/5程の子どもは半信半疑です。

4.5mのテープが6.2mに伸びた場合を考えます。この問題も4ます関係表に整理します。比例関係はやはり縦方向だとすぐに見出すことができました。

4ます関係表の新しい使い方に出合った1時間でした。



あまりが変!

次の問題を子どもたちに提示します。
「1.9mのテープを0.3mずつ切っていきます。0.3mのテープは何本できて,何mあまりますか」
式は1.9÷0.3とすぐに見えてきます。小数のままでは計算ができないので,19÷3として計算します。
計算の結果,答えは「6本できて1mあまる」となります。ところが,「違う」「おかしい」と声があがります。一方,その声の意味が理解できず,首をひねっている子どももいます。わりざんの答えは,整数値に直して計算してもそのままでいいと学習しているからです。
「違う」という子どもたちが説明します。
「確かめ算をしたら,0.3×6+1=2.8だから1.9にならない」
確かに1.9にはなりません。しかし,この説明では十分に納得ができない表情の子どももいます。説明が続きます。
「あまりが1mだとしたら,まだ0.3mはまだあるよ」
あまりの1mの中に0.3mがまだあるという説明で子どもたちも納得です。さらに声が続きます。
「だから,あまりはもどしているのだ算にするんだよ」
「あまりはもとの小数点にもどして0.1m」
「これならもう0.3mには分けられない」
「確かめ算をすると,0.3×6+0.1=1.9だから合ってる」
この説明で子どもたちも納得です。
しかし,まだ取り組んだ問題は1問です。そこで,「あまりだけもどしているだ算をするのは,この問題だけのたまたまじゃないの?」と投げかけます。この投げかけに2割ほどの子どもは「そうかもしれない」と考えました。
そこで「2.3mのテープを0.5mずつ切ります。何本できて何mあまりますか」の問題で実験します。結果は,この問題でもあまりだけは「もどしているのだ算」にすることが見えてきました。
解き方が本当に一般化できるのかどうかは,複数の問題で検証することが大切です。科学の世界ではこれが常識ですからね。


 

2024年6月6日木曜日

高知を訪問!

 昨日は高知の小学校を訪問しました。17学級の算数授業を参観し,その後は,私が3年生に「三角形」の授業を行いました。とてもかわいい子どもたちでした。「ジェスチャーの女神」と私が名付けた女の子は,授業後に「私がジェスチャーしたら,先生は絶対に指してくれるよね」とうれしそうに言いに来てくれました。子どもの素直さ・かわいさは日本中同じですね!

2024年6月4日火曜日

上から2桁・・・

子どもたちに次の問題を提示します。

「1.8mで1.2㎏のソースかつ棒があります。1mでは何㎏ですか」

4ます関係表を使って,式を求めます。1.2÷1.8という式が見えてきます。この後,子どもたちはこの計算を進めます。

計算が始まってしばらくすと,「割れない」「同じ答えが続く」「割り切れない」と声があがります。答えが「0.666・・・」となり小数点以下に6が永遠に続くのです。

この結果を見た子どもから,次の声があがります。

「それなら四捨五入したらいいよ」

「約になるね」

「でも,何の位で四捨五入するの?」

概数で表すアイディアが生まれてきました。しかし,概数の範囲を確定しないと四捨五入はできません。子どもからは2種類の声が生まれてきました。

最初の声は「四捨五入して小数第二位まで求める」でした。この視点だと「約0.67」になります。

もう一つの視点が「上から2桁の概数にする」でした。ところが,この視点では考えにズレが生まれました。「0.7」と「0.67」です。

一の位の0をスタートにしたら0.7,小数第一位をスタートにしたら0.67と概数が変わってしまいます。果たして,どちらの考え方がよいのでしょうか。

子どもたちの話し合いは,一の位の0を意味があるものと捉えるのか否かで判断が分かれました。話し合いは二転三転しましたが,子どもたちが納得したのは次の説明でした。

「もし1.67という数があるとしたら,この一の位の1は1個あるということだから意味がある。でも,0.67の0はそもそもないものだから意味はない。だから小数第一位の6から数える」

「1.67を10倍すると16.7になる。最初の一の位の1には意味があるから,10倍しても残る。でも,0.67を10倍すると6.7になる。最初の一の位の0は消えた。最初の0には意味がないから消えた。だから,0.67を数え始めるのは小数第一位の6から」

この説明に子どもたちも大いに納得しました。形式的に,一の位が0の場合の「上から2桁」のスタートの位置を教えることは簡単です。しかし,それでは論理的思考は育ちません。このような学習過程が大切ですね。

 


2024年6月3日月曜日

きまりがあります!

次のように子どもたちに投げかけます。

「商が割られる数より大きくなる式を引いたら当たりゲームをしよう」

この問題文では,状況がうまくイメージできない子どももいます。

「6÷2=3だから外れ」

「6÷0.2=30だから当たり」

具体的な式が子どもから生まれてきました。具体例があることで,問題場面のイメージ化ができました。この段階で「きまりがあります」という声が聞こえてきました。しかし,この段階ではまだその声は取り上げませんでした。

実際のゲームを始めます。代表の子どもがカードを引きます。引かれたのは「2.2÷0.11」でした。カードを見た子どもからは,「よし!」「1より小さい」などの声が聞こえてきました。勝利を確信した声やきまりに気づいた声です。しかし,式を見てもすぐに当たりかどうかが分からない子どももいます。そこで,実際に計算をして答えを確かめます。

答えは「20」です。割られる数の「2.2」よりも大きくなりました。当たりです。この結果から,きまりに気づく声が生まれてきました。

「きまりがあるよ」

「わる数が1よりも小さいと,商は大きくなるんだよ」

「似ているのをかけ算でもやったね。5月21日にやった小数のかけ算は,1より小さい数をかけると,積も小さくなるでその勉強と似ている」

「でも,それって反対の関係になっている」

「かけ算は増えるけど,わり算は減るでしょ。だから反対になるんだよ」

割る数が1よりも小さいと,商が割られる数よりも大きくなるきまりに気づく声が生まれてきました。さらにこの声をきっかけに,類似の学習を小数のかけ算でも取り組んだことなどが想起されてきました。既習がつながるよき学びの姿が生まれてきました。

しかし,このきまりに完全な自信を持っている子どもはこの時点では7割ほどです。実験した事例がまだ1事例だからです。 

そこで,相手チームのカードを引きます。「3.136÷0.64」が引かれました。先ほどのきまり通りなら,当たりのカードです。喜んでいる子どもたちですが,実際に計算を行い商を確かめます。

結果は「4.9」です。わられる数よりも大きくなったので当たりのカードです。やはり,子どもたちが見つけたきまりは正しかったようです。

その後もゲームを続けます。カードのわる数の大きさによって,「やったー」「終わったー」などの悲喜こもごもの声が聞こえてきました。

本実践は東洋館出版社「板書シリーズ」を参考にしています。