子どもたちに,次のように投げかけます。
「AとBの2本のゴムがあります。伸ばすとそれぞれ次のようになりました。何倍に伸びたでしょう」
Aのゴムデータを提示します。4.8mが7.2mへと伸びました。子どもたちはノートに向かって計算を始めます。ところが,しばらくすると「どう計算するの?」という戸惑いの声が聞こえてきました。この声の意味を読解します。
「式が分からないってことだよ」
「7.2÷4.8なのか4.8÷7.2なのか決められないんだよ」
わり算の式になることは見えています。しかし,わられる数・わる数の数値を決められないことが戸惑いの原因でした。
すると「4ます関係表にしたらいいよ」と声があがります。これまでの問題解決で困ったときに使ってきた必殺アイテムです。
子どもたちが4ます関係表をノートに書き,式を見つけていきます。ところがまたしても「まってまって」と,戸惑いの声があがります。戸惑いの原因を尋ねます。
「4.8mと7.2mは分かる。でも,後が分からない」
「3つ目の数字がない」
これまでに子どもたちが取り組んだ問題文には,必ず3つの数字がありました。ところが,この問題場面にはそれは存在しません。すると,次の声があがります。
「7.2mの下が□倍だよ」
3つ目の数字ではなく問われている部分の「□倍」という声があがります。「何倍の伸びたのでしょう」と問われています。そこから「□倍」の声が生まれてきました。この部分が見えると,4.8mの下も見えてきます。
「分かった。1倍だ」
「どういうこと?」
「だって4.8mはそのままってことだから1倍だよ」
もとの長さが4.8mなので,ここが1倍になります。これで4ます関係表が完成しました。これで式が見えてきます・・・。
ところがです。困っている子どもたちが多くいます。「赤ちゃんが入らない」と声があがります。比例関係を表す矢印がうまく入れられないのです。4.8mを7.2mにするための式がすぐに見えてきません。これまではこの部分の式はすぐに見えました。困りました。
すると2人の子どもが,両腕を上下に動かすジェスチャーをしているのが見えました。このジェスチャーの意味を読解します。
「分かった!縦だ」
「縦?」
「縦ならいける」
比例関係を横ではなく,縦で見つけたのです。4.8mを1とみなすためには4.8÷4.8と計算します。同じ比例関係式が4ます関係表の反対側にも位置付きます。これで式が見えてきます。7.2÷4.8と計算すれば,何倍かが分かります。
しかし,4ます関係表に縦方向に式を見出すのは初めての経験です。そこで,この見方が偶然なのかを尋ねます。1/5程の子どもは半信半疑です。
4.5mのテープが6.2mに伸びた場合を考えます。この問題も4ます関係表に整理します。比例関係はやはり縦方向だとすぐに見出すことができました。
4ます関係表の新しい使い方に出合った1時間でした。