2024年5月31日金曜日

式への違和感

 子どもたちと「次の計算はもどさない算でできるかな」と問いかけ,計算問題に取り組みました。

「0.8÷1.25」

この問題を板書したと同時に,声があがります。

「できない」

「割る数が割られる数よりも大きいからできない」

「計算はできるけど,こんなお話はないよ」

割る数が割られる数よりも大きい式に対して,違和感を抱いたのです。計算自体は,もどさない算で求めることはできました。しかし,そもそもこの式なるような問題場面はないのではないかと,多くの子どもたちは考えています。これまで彼らが出合ったのは,わる数がわられる数よりも小さい場面が多くを占めていました。だからこそ,今回のような違和感が生まれてきたのです。こんな感覚が自然に生まれてくる子どもたち,素敵ですね。

さて,「0.8÷1.25」の式になる問題場面はあるのでしょうか? 子どもたちに考えさせました。子どもたちは,かなり頭を悩ませていました。

「1.25㎤で0.8㎏入る箱があります。1㎤では何㎏入りますか」

この問題を板書してもらいました。問題を見ても,すぐに式は見えてきません。そこで,4ます関係表で問題場面を整理します。その結果,前述の問題は「0.8÷1.25」の式になることが分かりました。

機械的に式に向き合うのではなく,具体的問題場面をイメージしながら式に向き合える子どもたちに育てていきたいですね。


2024年5月29日水曜日

もどしているのだ算は使える?

子どもたちに次の問題を提示します。

「1.2mで72円のリボンがあります。1mでは何円ですか」

問題を見た子どもから,「難しい気がする」「かけざん」「わりざん」と声があがります。子どもたちがノートに書いた式もバラバラでした。

そこで,「どうしたら 式が分かるの?」と尋ねます。子どもからは「4ます表を使ったらいい」と声があがります。そこで4ます表で式を特定します。その結果,式は「72÷1.2」になることが分かりました。

式が確定すると同時に,子どもたちの声が続きます。

「どうやってやるの」

「まだ習っていないよ」

「もどしているのだ算ならできるよ」

「72÷12にして計算したらいいよ」

「答えは6だね。だから答えを10でわって戻したらいいね」

「5月17日にやったのと同じだね」

「答えは0.6だね」

子どもたちは,小数のかけ算の計算方法をわり算にも適用しようと考えました。手続き通りに進めることで,一気に答えにたどり着くことができました。

ところがです・・・。首をひねっている子どもの姿が見えました。

「なんか変な気がする」

「1.2mで72円なのに,1mで0.6円は安すぎない?」

答えの0.6への違和感が生まれてきたのです。確かめ算で確認します。結果は0.72円なので,明らかに安すぎであることが分かりました。

では,一体どうしたらいいのでしょうか?ここで生まれてきたのが,次の声です。

「両方10倍したらいいんじゃないかな?」

「720÷12=60になって,10倍10倍したから答えの60を100で割る」

小数のかけ算の計算方法を適用した考えです。ところが,答えはまたも0.6です。これでは正しい答えにはなりません。安すぎます。この結果を見た子どもから,次の声が生まれてきます。

「だったら,答えはそのままにしたらいいんじゃない?」

論理的な根拠はこの時点ではありません。確かめ算を行います。その結果,1.2mで72円になりました。ところが,この結果を見た子どもから声があがります。

「答え的には合ってる・・・。でもなんで?」

当然の疑問です。いくつかの説明で,子どもたちが最も納得したのは次の声でした。

「1.2mで72円なら,12mでは720円になる。72÷1.2も720÷12もどちらも1mの値段を求める。同じリボンだから,12mで720円で考えても答えは同じ」

「4÷2を片方だけ倍にするには,わるイメージが違う。でも,両方倍にするとわるイメージが同じになる」

抽象の世界で浮かんだ疑問を,具体の世界に置き換えることで,わられる数・わる数に同じ数をかけても商は変わらないことを納得していくことができました。形式ではなく,論理で計算の手続きを納得していくことが,小数のわり算の導入場面では大切になります。


2024年5月27日月曜日

交換・分配法則を図で説明する

子どもたちに,次のように投げかけます。
「縦3.6m,横2.4mの畑の面積は何㎡ですか」
問題自体は簡単です。子どもたちは,3.6×2.4=8.64(㎡)と計算で答えを求めます。
2問目を提示します。「2.4×」まで板書をすると「小数」「答え同じ?」「3.6なら答え同じ」と声があがります。かける数を子どもたちが作り出してきました。かける数が3.6なら答えは同じになるという声が生まれてきました。さらに子どもたちは,答えが同じになる理由を説明してきます。
「3.6と2.4が反対になっただけだから同じ」
「さっきの面積と同じだよ。②を縦2.4m横3.6mと考えたら同じだよ」
「回転しただけで,同じだよ」
①の問題では,意図的に図を提示していません。ところが②の問題で,①と②の図は回転しただけで同じになることを自分たちで作図を行い説明してきました。抽象的な式を具体的な図に置き換えることで,答えが同じになることが一目瞭然になりました。別の形で表すよさを実感できました。

すると,この結果を受けてさらに声があがります。
「それなら体積も同じじゃない」
「縦×横×高さでも同じだよ」
「今の畑の面積が高さ2mなら,2.4×3.6×2になる」
「3.6×2.4×2でも同じだ」
「2.4×2×3.6でも同じだね」
「2×2.4×3.6でも同じ」
「数字が入れ替わっても,見る向きが違うだけで同じ」
面積での説明場面が,体積場面に置き換わっても同じように考えることができるという見方が生まれてきました。3つの式も,見取り図を使うことで式の順序を入れ替えても答えが変わらない理由が一目瞭然になりました。

4問目を提示します。「1×3+0.4×3」の式です。「+があるから難しい」と声があがります。ところがこの声を受けて,「図に書けば簡単」と声があがります。
「1×3は縦1㎝横3㎝の図。0.4×3は縦0.4㎝横3㎝の図。どちらも横は3㎝だから,くっつけると長方形になる。この縦は1+0.4で1.4㎝。横は3㎝で同じだから,式は1.4×3にできる」
「式が短くなった」
小数のかけ算の分配法則も,図を使うことで小数にも活用できることが見えてきました。


 

2024年5月26日日曜日

出雲で公開授業をしました!

 島根県出雲市の学校で,公開授業を行いました。4年生に「平行」の導入場面の授業を行いました。子どもたちが本来持ち合わせている平行の感覚を数学的な言葉で整理していくことができました。垂線に当たる部分の長さへの着目や,上下の辺の関係を「平ら」「坂道」という子どもらしい言葉で表現できる素敵な子どもたちでした!

帰りは久しぶりに出雲大社を訪れました。出雲大社は二礼八拍一礼が正式なお参りのルールだそうです。知りませんでした。通常は二礼四拍一礼に省略しているそうです。

また,鳥居の近くには歌手・竹内まりあさんのご実家がありました。ここからあの素敵な歌の源泉が生まれたのですねえ!

小学校算数「きまり発見」の授業のつくり方 発刊!

明治図書から私の新刊「小学校算数『きまり発見』の授業のつくり方」が発刊されました。昨年度担任した1年生の数学的な考え方をどのように高めていったのかを踏まえ,小学校6年間を通した数学的な考え方のステップを実践ベースで紹介した本です。

目次は以下の通りです。

第1章 「きまり発見」の授業とは
1 子どもたちはきまり発見が大好き
2 1年生でもきまりは発見できる
3 きまり発見は「おもしろいこと」
4 きまり発見から学びは深化する
第2章 「きまり発見」の授業づくりのポイント
1 発見するのも,聞いているのも「一部の子ども」と心得る
2 一部の発見をクラス全体に広げる
3 子どもが発する素直な言葉に着目する
4 教師も「おもしろいこと」をおもしろがる
5 偶然性の指摘で一般化を促す
6 演繹の世界に進むことを急がない
7 発展的・統合的に考えることを強いない
第3章 「きまり発見」の授業で働かせたい数学的な考え方
1 帰納的な考え方
2 類推的な考え方
3 発展的な考え方
4 一般化の考え方
5 演繹的な考え方
6 特殊化の考え方
7 関数的な考え方
8 統合的な考え方
第4章 やってみよう!「きまり発見」の授業
1年/大きさくらべ(2)どちらの箱が大きいのかな?
統合
1年/いくつといくつ8個なら7段になる?
統合 帰納 類推 発展
1年/ひきざん(2)ひく数と答えの数の関係は?
帰納 類推 発展
2年/たし算とひき算のひっ算(2)虫食い算は2種類できる!?
帰納 類推
2年/かけ算(1)○の数と式の数の関係にきまりはある?
一般化 類推 特殊化
3年/小数特別だからひき算なの?
帰納 演繹
3年/1けたをかけるかけ算の筆算このきまりはもう限界?
帰納 演繹 類推 発展
3年/2けたをかけるかけ算の筆算もう1問くらい実験をしないと,違うかもしれない!
帰納 発展 演繹
4年/小数いってんはちじゅうなな?いってんはちなな?
演繹 特殊化 統合
4年/垂直・平行と四角形「それぞれ」ってどういう意味?
発展 演繹 統合
4年/式と計算の順じょ-なのにたし算に変わる!?
特殊化 一般化 演繹
4年/面積面積の増え方が2㎠ずつなのはなぜ?
帰納 一般化 演繹
5年/合同な図形本当にどの三角形も180°になるの?
一般化 演繹
5年/合同な図形いくつの情報で合同な図形が作図できる?
帰納 類推 一般化
6年/比例と反比例図をかくのが面倒くさい!
関数 一般化
6年/場合を順序よく整理して長方形でも2倍方式は使えるの?
統合 一般化

 詳細・お求めは,以下のアドレスからお願いします。

https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-374123-3

2024年5月21日火曜日

「筆算いらない」「なんで?」

次の問題を提示します。
「1mの重さが0.8㎏のうまいんだ棒があります。同じ種類の長さの違ううまいんだ棒が4つあります。次の式は,それぞれのうまいんだ棒の重さを求める式です。0.8㎏より軽いのはどれですか」
式を4つ提示します。
0.8×0.9 0.8×3.7 0.8×1.4 0.8×0.08
式を見つめた子どもたちから,声があがってきます。
「筆算はいらないね」
「なんで?」
「暗算もいらないよ」
「なんで?」
筆算(計算)が必要なのかを巡って,子どもの考えにズレが生まれました。子どもたちが説明します。
「0.8×3.7は,1よりも大きい数をかける。だから答えは0.8よりも大きくなる」
答えが大きくなる説明は,イメージしやすいようです。ところが,1よりも小さい数をかけるイメージが,言葉だけではうまく伝わりません。そんなとき,「図にしたら分かる」と声があがります。
板書のような図を描き,1mの位置や0.9mの位置を確認します。線分図の中に,1mや0.9mが位置付くことで,各長さの時の重さの大小関係が見えやすくなりました。図に置き換える発想が,それまで曖昧だった世界をすっきりとさせてくれました。


 

2024年5月20日月曜日

計算いらない!


 子どもたちに「答えはいくつになるかな?」と投げかけます。

1問目は,914×83です。筆算で多くの子は計算しました。答えは75862です。

2問面を提示します。91.4×8.3の式です。この式を見た子どもから,次のような声があがります。

「筆算はいらない」

「前に小数点をつけただけだよ」

子どもたちは,計算しなくても答えが分かると考えています。しかし,この声はまだクラス全体には共有されていません。そこで,この言葉の意味を共有していきいます。

「91.4は914を10でわった」

「8.3は83を10でわった」

「だから,答えは10×10で100でわる」

「答えは小数点が3個左に動いて75.862」

子どもたちは,数字が同じであれば筆算を改めて行う必要はないと考えました。小数の計算を整数の計算に直して計算したときの考え方と「同じ」だとする見方が生まれてきたのです。

この見方を使えば,同じ数字の並びであれば,どんな計算も答えを求めることができます。

その後も同じ数字の並びの問題に取り組んでいきました。授業終盤には,次の声が生まれてきました。

「同じ考えを使えば,他の数の計算でも使える」

「0.914×83を半分にして,0.457÷41.5も計算できるね」

「÷2と÷2をしているから,答えも÷2だね」

「違うよ。÷2÷2だから÷4だね」

10倍,100倍などと同じように計算のきまりを活用したら,変身していく計算が10の倍数でなくても答えを見つけられるという声です。よき見方が生まれてきました。

2024年5月19日日曜日

「磨け,授業力」講座開催!

 8月10(土)~11日(日)に東京六本木で「磨け,授業力」講座を開催します。主催は授業テラスです。対面とオンラインのハイブリッド開催です。

私だけでなく,各教科のプロフェッショナルの先生方の講座やワークショップがあります。昨年は1000名近い先生方が参加されたようです。ご参加ご希望の方は,以下からお入りください。東京でお会いしましょう!

https://www.nijin.co.jp/migakejugyoryoku-moveaction



2024年5月17日金曜日

もどしているのだ算VSサクランボ&入れ替え算

子どもたちが前回までに取り組んだ「もどしているのだ算」と「サクランボ&入れ替え算」で,いろいろな文章問題に取り組みました。

1問目・2問目では,「結局2つのやり方は同じことをしている」という結論が見えてきました。

3問目は,3.27×1.2の式を計算しました。「もどしているのだ算」で計算するのは簡単でした。また,「サクランボ&入れ替え算」では,「3×108÷100×3×4÷10=9×436÷1000」と式を入れ替えて計算を進めていました。ところがこの式を見た子どもから,声があがります。
「分解しすぎ!」
「こんな式が思いつくなんて不思議」
「暗算が得意な人は,このやり方でいいけど,苦手な人はもどしているのだ算の方がいいよ」

この時間の結論は,自分の暗算能力によって計算方法を選択しようということになりました。



 

2024年5月16日木曜日

右を揃える?

子どもたちに,次のように投げかけます。
「どんな小数の計算も,昨日の方法が使えますか?」
子どもたちが考えやすいと考えたのは,「もどしているのだ算」「サクランボ+入れ替え算」でした。この時点では,「もどしているのだ算」は全員ができると考えました。一方,「サクランボ+入れ替え算」は「できない?」という声も聞こえてきました。
そこで,次の文章問題で実験します。
「1m123円のうまうま棒があります。4.5mなら代金はいくらですか」

式は123×4.5です。「もどしているのだ算」「サクランボ+入れ替え算」いずれの方法でも答えを求めることはできました。しかし,「サクランボ+入れ替え算」は,123と4.5を分解する式が複数生まれてきました。つまり人によって,分け方が異なったのです。これは前回も生まれてきた現象です。そのため「分かりにくい」という声も聞こえてきました。

「もどしているのだ算」で計算しているとき,多くの子どもは筆算をノートに書いていました。そこで,どのように筆算を書いたのかをここで尋ねます。多くの子どもは,123の3と4.5の5が縦に揃うように書きました。一方,123の3の下に4.5の4が縦に揃うように書いた子どももいます。この書き方に対して,「気持ちは分かる」と声があがります。
「123の右端には小数点がある。4.5の小数点と縦に揃うように書いた」
「たしざんやひきざんは位を揃えて計算したから,同じように書いた」

一方,次の声も聞こえてきます。
「今までの筆算は右端を揃えて書いたから,これも右端を揃える」
この声も既習の筆算をもとにしています。ところが,この声を受けて次の声があがってきます。
「だったら123は123の右に0が続くんだから,123.0×4.5としたら右が揃うよ」
123の見えない小数第一位に0を付け足したら,右が自然に揃います。この方法でもよさそうです。だとしたら,どちらの方法もあり・・・?

すると「123.0×4.5を筆算したらいい」と声があがります。そこで,そのまま筆算で計算します。すると答えは「5535.0」となります。位を揃えて計算したはずが,答えが異なってしまいました。

この結果を見た子どもから,今度は次の声があがります。
「123.0×4.5の式だけど,頭の中では本当は10倍10倍して123×45と思って計算している。だから右を揃えて計算する。でも,本当は100でわる答えだから,最後に100でわる」
頭の中では整数に置き換えて計算するから,筆算も整数に置き換えた状態で書くという説明です。これに子どもたちも納得です。

この説明では,かけられる数・かける数とも10倍にする声が生まれてきました。そこで,次の問題場面も,両者が小数になる問題を提示します。この問題では,「もどしているのだ算」は「簡単」と声があがります。一方,「サクランボ+入れ替え算」はここでも多様な式が生まれてきました。「分かりにくい」と声が聞こえてきました。



 

2024年5月15日水曜日

計算方法の一般化

 80×2.5,80×2.1の整数×小数の計算に前回取り組みました。そこでは3つの計算方法が生まれてきました。それらの方法が,他の計算でも使えるのかを考えさせました。
かける数を2つに分解する「サクランボ算」は,80×2.3のようなかける数のきりが悪いとできないのではないかという声があがってきました。

そこで,かける数がきりが悪い数で構成されている60×4.7で実験を行いました。
4.7を2つに分けると,4と0.7です。しかし,60×0.7は計算できません。やはりきりの悪い数では「サクランボ算」はうまくできないようです。

一方「もどしているのだ算」は,60×47を計算し,その答えを10でわります。これは全員が計算できました。「もどしているのだ算」は「最強」の計算方法のようです。
また,「サクランボ+入れ替え算」も計算ができました。60×4.7=10×6×47÷10とサクランボ方式で数を分解します。その後,10÷10×6×47と式を入れ替えると計算ができます。この方法も「最強」と声が聞こえてきました。

ところが,この方法に対して次の声があがります。
「今までは,80×や60×で何十のかけ算だからできたのかもしれない。もし,59×4.7みたいな数になったら,うまくできないかもしれない」
かけられる数が中途半端になると「サクランボ+入れ替え算」は,うまくできないのではないかという声です。よい例示の式が生まれてきました。

そこで,この例示の式で実験を行います。
「もどしているのだ算」は,59×47の答えを10で割ることで,計算ができます。
では,「サクランボ+入れ替え算」はどうなるのでしょうか。この方法については,「えっ」「難しい」と声があがります。59の分解がうまくできないからです。「できた」という子どもに,計算方法を尋ねます。「59×47÷10」と分解していました。この分解を見た子どもから,声があがります。

「それなら『もどしているのだ算』と同じだよ」
「同じ式に×と÷が混じっていると分かりにくいね」
「サクランボの作り方が難しいよ」
「人によってサクランボの作り方が違うかもしれないよ」
「そうすると答えが出た後で,確かめるのが困るね」
これらの声に対して,「確かめ算をしたらいいよ」などの声があがりますが,議論は平行線です。

そこで,さらに別の問題で実験を行います。「24×3.3」を計算します。
「もどしているのだ算」は,24×33の計算結果を10でわるだけです。「絶対に同じになる」と自信満々の声があがります。

一方,「サクランボ+入れ替え算」は,「3×8×1.1×3」「24×33÷10」と異なる式が生まれてきました。先ほど生まれた「人によってサクランボの作り方が違うかもしれないよ」の式が,まさに生まれてきたのです。「答えの確かめで混乱しそう」との声が聞こえてきました。

その後,231×2.3の式でも実験を行います。「もどしているのだ算」は全員が答にたどり着きました。一方,「サクランボ+入れ替え算」はこの問題でも異なる分け方が生まれてきました。
最終的に,多くの子どもは「もどしているのだ算」がわかりやすいと考えました。しかし,一定数の子どもたちは「サクランボ+入れ替え算」がわかりやすいと考えています。果たして,この後はどうなっていくのでしょうか・・・。

 

2024年5月14日火曜日

リボンの長さが小数なのに・・・

次の問題を子どもたちに提示します。

「1m80円のリボンがあります。①のリボンの代金はいくらですか」 

①のリボンを提示します。「160円」という声が多数聞こえてきました。そこで,この気持ちを読解します。

「1mが2個あるから」

「80×2で160円」

①のリボンが1mリボンの2倍に見えていることから生まれた声です。しかし,本当の長さは2.1mです。すると,この結果を見て首をひねっている子どもの姿が見えました。その理由を尋ねます。

「小数のかけ算になりそうで・・・」

「そんなのあるの?」

子どもたちの既習は,小数×整数です。整数×小数は未習です。従って,かける数が小数の立式を行うことに不安を感じたのです。

すると,この声を受けて次の声があがってきました。

「でもさあ,(小数でも)増えるならあるよ」

「小数のたしざんは増えるだけど,あったよ」

子どもたちにとって,かけ算は答えが増えるイメージがあります。このスタンスに立てば,小数のたしざんができたのですから,小数のかけ算もあり得るという考え方です。既習とつなげたよき見方が生まれてきました。

その後,4ます関係表を使って,リボンの長さが2.1mのときの代金を求める式が,80×2.1になることを確認します。既習とつなげることで,小数のかけ算があり得ることを,子どもたちは納得していきました。

ところでリボンの長さは,2.1mではなく2.5mであったことを伝えます。2.5mに伸びても,考え方は同じです。80×2.5という式を作ることができます。

さて,式はできました。では,どうやって答えを求めたらよいのでしょうか。

子どもからは3つの考え方が生まれてきました。

ア.2.5を2と0.5に分けて計算するサクランボ計算。80×2は計算できます。しかし,80×0.5はできません。しかし,これは80の半分なので40と分かります。

イ.80×2.5を80×25に置き換えて計算します。小数の存在が嫌だからです。整数×整数なら計算ができます。しかし,この答えはもとの式を10倍したものです。従って,この答えを10でわる必要があります。もどしているのだ算です。

ウ.80×2.5を10×8×25÷10と置き換えます。さらにこの式を,10÷10×8×25と変身します。するとこの式は,8×25になります。これなら計算できます。サクランボ&入れ替え計算です。

子どもたちにとっては,もどしているのだ算がわかりやすいという声があがりました。



2024年5月13日月曜日

オナジン登場!

 子どもたちに「○と△の関係を式に表そう」と投げかけます。

①1mの値段80円のリボンを買うときの買う長さ○mと代金△円

子どもたちはこの問題文を見ても,最初は問題場面のイメージがつかめずにいました。そんなときに生まれきたのが「表とか図にしたらいいんじゃないの」というアイディアです。

そこで,問題文に沿って表を作成します。その結果,子どもたちにも問題場面のイメージができてきました。イメージができると,式も見えてきます。

子どもからは,次の2つの式が生まれてきました。

△÷○=80

80×○=△

次に,2つ目の問題を提示します。

②1mの重さが2.15㎏のパイプを買うときの買う長さ○mと重さ△㎏

この問題場面に当てはまる式を考えていたいときです。M子が次のように説明をしました。

「さっきの問題の80×○=△と同じで,これも2.15×○=△という式ができます」

1問目と2問目の立式には考え方の共通点があることに気づいた声です。「オナジン」というキャラクターを貼り,共通点に気づいた見方を褒めました。

するとこの手立てが,3問目でも生きてきます。

③1段15㎝の階段の段数○段と高さ△㎝

この問題でも,「最初の問題と同じで,これも15×○=△とできる」と説明が続きました。

算数では共通する部分を見つけていく見方・考え方が大切になります。よき見方が繰り返し生まれてきました。

本題材は,東洋館出版「板書シリーズ5年上」を参考にしています。



2024年5月11日土曜日

1を見い出す!

子どもたちに「六角形をつないでいくと・・・」と投げかけ,六角形が3つつながった形を提示します。子どもたちは,同じ形を配布したパターンブロックをなぞってノートに同じ形を作図していきます。

作図を終えたある子どもが,図の周辺部を指でなぞる姿が見えました。それと当時に「12」という声が聞こえてきました。そこで,この声の意味を共有していきます。

「周りが12本ある」

「それって5月9日と同じだ。階段も四角が増えて比例した」

前時の学習の比例の見方が生まれてきました。しかし,「まだ次がどうつながるか分からないと決められない」という声も聞こえてきました。

そこで,六角形を追加します。先ほどの図形の右側に3つの六角形を縦に並べます。子どもたちは,周りの長さを数えます。「18本」になることが分かります。それと同時に「6本増えた」「比例」という声も聞こえてきます。

子どもたちの中には「次も6本ずつ増えていく」「だから比例だ」と考える子どもたちがいました。一方,「本当に比例なの?」とその関係性を十分に納得できていない子どももいました。さらに,「もっと次を見ないと分からない」という早急な一般化を疑う声も聞こえてきました。この視点でのアプローチも大切ですね。

その後,六角形をもう1列増やします。周りの辺は「24本」になりました。ここで「きまりがある」「6本ずつ増えている」「比例になっている」と声があがります。ここで比例の意味を再確認します。「片方が2倍・3倍になったら,もう片方も2倍・3倍になる」という関係です。しかし,最初の周りの本数「12本」をもとにすると2倍・3倍の関係は見えません。そのために,「比例なの?」と疑っている子どもたちも何人もいました。

そんなとき,「最初の1個を動かす」という声が聞こえてきました。左端の1個の六角形を切り離すと,その本数が6本であることが見えてきます。「これをもとにしたら,2倍・3倍になる」とそれまで見えなかった比例関係が見えてきます。見えなかった基準量になる1を見出す姿が生まれてきました。この基準量が見えると,比例関係もすぐに見えてきます。

基準量を見出す姿を引き出すことを目的にした比例の授業でした。 


2024年5月9日木曜日

比例はあるかな?

 前回の階段問題を続きです。段数を13段,25段に伸ばした場合の周りの長さを考えました。子どもたちは,いずれも4×13,4×25という4の段のかけ算を使って計算で求めました。この段数まで来ると,図を描いて調べるのはかなり大変な作業になります。

その後,この考え方が「比例」であることを説明します。

「比例」の用語を学んだ子どもたちに,「比例するものはあるかな」と尋ねます。子どもからの声を,一つ一つ確認していきます。

①正方形の1辺の長さと周りの長さ→比例

②ノートのサイズと周りの長さ→比例ではない

③ぼくと兄の年齢→比例ではない

④看板の枚数と重さ→比例

⑤双子の年齢→比例

⑥身長と体重→比例ではない

この他にも,「私とおばあちゃんの年齢」との声も聞こえました。「1歳の時におばあちゃんが60歳。比例したら,2歳になったらおばあちゃんは120歳?」となりありえない状況が発生します。これも比例ではありません。

このように考えると,比例になる場面はあまり多くはないようですね。


2024年5月8日水曜日

階段と演繹

比例学習の1時間目に入りました。教科書にもある階段と周りの長さの関係を取り上げました。

階段を2段積んだ時点で,「きまりがある」「次は16㎝?」「12㎝じゃない?」「まだ次を見ないと分からないよ」と声が続きます。2つの情報から,きまりを見つけ出そうとする姿が育ってきました。さらに,少ない情報数で一般化することへの危惧を示す声があがってきたのも素晴らしい視点です。

その後,子どもたちは,「4㎝ずつ増える」「1段の長さが2倍・3倍になる」の2つの決まりを見つけていきます。この学習では,きまり発見の声と同時に演繹的な声もあがってきます。「どうして4㎝ずつ増えていくのか」という声です。この部分は,きまりを発見したばかりの子どもたちにはハードルが高い内容です。今回の授業でも,階段が3段になった時点でそれが生まれてきました。演繹の声を早い段階で授業の中心にしてしまうと,多くの子どもが混沌としてしまいます。

授業の最後には,10段になったら何㎝になるのかを問いました。ジャンプした階段数です。この段数になると,全員が4×10という倍の考え方を使いました。「かけ算は楽」「早く計算できる」と声があがりました。

比例の見方を引き出した1時間目でした。 


2024年5月7日火曜日

式を読解する

ホワイトボードにある立体を提示し,「体積を求めよう」と投げかけます。

多くの子どもたちは,縦に3分割する方法,細長い直方体が9個分という方法で求めました。

飛び出している7番の直方体を5番の上に移動し階段状に変形する子どもがいました。この階段を2つ合わせると直方体ができます。最後にこの体積を半分にします。この方法は1週間前に学習した方法です。既習を活用するよきアイディアです。いずれも式が4本,2本必要です。

最後に,30×30×30という式を提示します。これは1本の式です。式を見た子どもからは,「なんで?」という声が聞こえてきます。もとの立体には,30が2個はあっても3個はないからです。

そこで,この式の意味を読解していきます。飛び出している1番を5番の上に移動します。そうすると欠けていた穴が埋まります。これで直方体に立体が変身し,高さが30㎝になります。これだと1本の式で求められます。ここでも「№14と同じだ」と既習の求め方との共通点に気がつく声が聞こえてきました。ここまで25分の授業でした。


2024年5月2日木曜日

今夏の全国算数授業研究大会は8月5~6日開催!

 筑波大学附属小を会場に開催される全国算数授業研究大会は,8月5日(月)6日(火)の2日間開催されます。今大会では,合計10本の公開授業が行われます。

今夏の大会テーマは,本質に導く授業力 ―多様な学びが求められる今、教師の役割を問うー」です。大会テーマの算数の「本質」とは,「単元で最もポイントとなる内容の数学的な見方・考え方」です。この本質を引き出し培う授業力を発揮するために必要な教師の役割を,全10本の公開授業を通して議論をしていきます。

本研究大会は,事前申し込み制です。申し込み開始まで,もう少しお待ちください。詳細は,以下のアドレスからお願いします。

https://zensanken.jimdofree.com/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A4%A7%E4%BC%9A/