2024年5月29日水曜日

もどしているのだ算は使える?

子どもたちに次の問題を提示します。

「1.2mで72円のリボンがあります。1mでは何円ですか」

問題を見た子どもから,「難しい気がする」「かけざん」「わりざん」と声があがります。子どもたちがノートに書いた式もバラバラでした。

そこで,「どうしたら 式が分かるの?」と尋ねます。子どもからは「4ます表を使ったらいい」と声があがります。そこで4ます表で式を特定します。その結果,式は「72÷1.2」になることが分かりました。

式が確定すると同時に,子どもたちの声が続きます。

「どうやってやるの」

「まだ習っていないよ」

「もどしているのだ算ならできるよ」

「72÷12にして計算したらいいよ」

「答えは6だね。だから答えを10でわって戻したらいいね」

「5月17日にやったのと同じだね」

「答えは0.6だね」

子どもたちは,小数のかけ算の計算方法をわり算にも適用しようと考えました。手続き通りに進めることで,一気に答えにたどり着くことができました。

ところがです・・・。首をひねっている子どもの姿が見えました。

「なんか変な気がする」

「1.2mで72円なのに,1mで0.6円は安すぎない?」

答えの0.6への違和感が生まれてきたのです。確かめ算で確認します。結果は0.72円なので,明らかに安すぎであることが分かりました。

では,一体どうしたらいいのでしょうか?ここで生まれてきたのが,次の声です。

「両方10倍したらいいんじゃないかな?」

「720÷12=60になって,10倍10倍したから答えの60を100で割る」

小数のかけ算の計算方法を適用した考えです。ところが,答えはまたも0.6です。これでは正しい答えにはなりません。安すぎます。この結果を見た子どもから,次の声が生まれてきます。

「だったら,答えはそのままにしたらいいんじゃない?」

論理的な根拠はこの時点ではありません。確かめ算を行います。その結果,1.2mで72円になりました。ところが,この結果を見た子どもから声があがります。

「答え的には合ってる・・・。でもなんで?」

当然の疑問です。いくつかの説明で,子どもたちが最も納得したのは次の声でした。

「1.2mで72円なら,12mでは720円になる。72÷1.2も720÷12もどちらも1mの値段を求める。同じリボンだから,12mで720円で考えても答えは同じ」

「4÷2を片方だけ倍にするには,わるイメージが違う。でも,両方倍にするとわるイメージが同じになる」

抽象の世界で浮かんだ疑問を,具体の世界に置き換えることで,わられる数・わる数に同じ数をかけても商は変わらないことを納得していくことができました。形式ではなく,論理で計算の手続きを納得していくことが,小数のわり算の導入場面では大切になります。